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静岡国道 有害物質を含む塗膜の除去量を20~40分の1に削減

東名巴川高架橋と大沢大橋 塗膜剥離剤と循環式ブラスト採用

公開日:2020.10.01

 国土交通省中部地方整備局静岡国道事務所は、国道1号静清BPの東名巴川高架橋と国道139号富士宮道路の大沢大橋の塗替え工事で、鉛およびPCBまたは鉛を多く含有する既設塗膜があることから、塗膜剥離剤および循環式ブラストを用いた既設塗膜除去および素地調整を行っている。塗膜剥離から養生、素地調整に至る手間を減らせること、産業廃棄物量を通常の高炉スラグを用いた1種ケレンに比べて、東名巴川高架橋で20分の1、大沢大橋で40分の1に削減できることが特徴だ。両現場を取材した。(井手迫瑞樹)

3径間連続鋼床版箱桁の外面16,655㎡を塗替え
 鉛やクロムを含む既設塗膜

 東名巴川高架橋は、その名の通り静岡市清水区鳥坂付近の東名高速と巴川を跨ぐ箇所に架かる橋梁である。今回はそのうちの巴川を跨ぐ付近(P116~P119)の延長254mの3径間連続鋼床版箱桁の外面16,655㎡を塗り替えている。塗膜劣化が進んでいるため、1997年3月に供用以来初の塗替えを行うものだ。塗膜厚は250μmであるが、鉛を27000㎎/kg、クロム化合物を1100㎎/kg含んでいるため1種ケレンは従来のブラスト工法でなく、主に循環式エコクリーンブラストを採用した。循環式エコクリーンブラストは、破砕しにくい鋼製あるいはステンレス製の研削材を繰り返し用いることで研削材の量を劇的に減らせる。加えて、塗膜かすや研削材の改修時に、塗膜かすだけ選り分ける機能を有しており、廃棄物量を大きく減らすことができることが特徴だ。

東名巴川高架橋の平面図(静岡国道事務所提供)

各工区側面図(静岡国道事務所提供)

 現場は変断面の箱桁であり、通常の足場では補強が必要であることから、足場にはクイックデッキを採用している。また、ブラスト機材は桁下に据え付け、ノズルまで70~100m程度の距離が離れていたが、施工能力に影響はなかった。

足場はクイックデッキを採用し、ブラスト機材は桁下に据え付けた(井手迫瑞樹撮影、以下注釈なきは同)
 施工はまず塗膜処理用のブラスト3日分行った後、その分の素地調整用の仕上げブラストを行い、4時間以内にミストコートを塗布していくということを繰り返す。ブラスト施工は1班(4ノズル)ないし、2班(8ノズル)で行い、循環式エコクリーンブラストを施工した現場(ランプ橋部および鳥坂東の2工区)では、1日当たり110~120㎡(1班体制時)、220~240㎡(2班体制時)を施工していった。

ブラストの施工とエコクリーンスーツ

ブラスト後の素地状況

 10週程度かけてミストコートまで施工した後、目粗しを施して6週間程度かけて弱溶剤系重防食(フッ素樹脂トップコート)による塗替え塗装を施していった。

ミストコートおよび塗装状況写真(静岡国道事務所提供)

塗装状況写真②(静岡国道事務所提供)

粉塵対策や作業員の安全確保にも配慮
 エコクリーンスーツやクリーンルーム

 安全面では、粉塵防護として板張り防護とシート張りに加え、ブラスト用養生シートをシート防護2層目として設置している。また、外部へ粉塵を出さないために作業員の防護服に付着した粉塵を除去するため、クリーンルーム(右写真)を設けている。作業員はクリーンルーム内で防護服の着脱を行い、エアシャワーにより粉塵を落とした後にクリーンルームより退出している。
 作業員の安全を確保の面では、場内にプッシュブル型換気装置を設置し、定期的な空気の入れ替えを行っている。火災事故を未然に防ぐため送風機など場内に置くものは全て防爆型とした。また、作業員は主にエコクリーンスーツを着用している。同スーツは全身を専用の使い捨て化学防護服で覆い、吸気口からその中に外部の新鮮な空気を送り込み、陽圧によりブラスト時の鉛などの有害物質を含んだ空気が入らないようにしている。加えてスーツ内部に送られる空気は23~25°に保たれており、夏場でも快適な温度環境で施工できる。ブラストの打ち手は、さらにこのスーツの上にナイロンヤッケを着用し、ブラストの研削材によるスーツの破損を防いでいる。標準の防塵マスクも着用しているが、これは「万が一スーツ内部への空気の供給が止まった時のバックアップとして装備している」(元請のヤマダインフラテクノス)ものだ。

作業員の国籍に合わせた言語表示
 2種類のロープライトで移動や避難をし易く

 同現場の一部では、危険表示や脱出経路の分かりやすさ、通路空間の確保についても意を砕いている。言語表示は日本語の他、現場にいる作業員の国籍に応じて併記(ここではベトナム語)している。また、昇降口には緑色のロープライト、脱出経路には赤色のロープライトを設置することで日常の移動や、有事の避難をし易いように配慮した。両張り出し部の足場幅は1,800mmを確保し、避難時に移動しやすくしており、脱出用ロープも複数個所に配置し逃げやすくしていた。

ロープライト

作業員の国籍に応じた言語で表示/
両張り出し部の足場幅は1,800mmを確保し、避難時に移動しやすくした

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