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現場を巡る詳細

劣化した床版をグリッドメタル+接着塗布型PCMによって補強

栃木県日光土木事務所所管 国道120号乳の木橋の補修補強

 栃木県日光土木事務所は、所管する国道120号乳の木橋について大規模な補修補強を進められている。補修・補強工の内容は、ゲルバーを伴う鋼桁の補強を行い、その後、劣化したRC床版の下からの補強を施すものあり、今後は上面からの増厚補強も検討されている。今回の補強工事は、鋼桁の当て板補強や防錆処理の塗装、ゲルバーの連結、劣化したRC床版の下面からの補強である。RC床版の当初の補強法は、上下両面に炭素繊維シートを接着補強法が計画を考えていたが、工費の縮減効果を図るために展張タイプのグリッドメタル(JFEシビル製)を配置した接着剤塗布型ポリマーセメントモルタル(PCM)吹きつけによる下面増厚補強法を選択した。接着剤には鹿島道路㈱の高耐久型エポキシ系接着(KSボンド)、PCMには、住友大阪セメント製のリフレモルセットSP(材齢24時間で圧縮強度24N/mm2)を用いた。この工法はボックスカルバートでの施工実績はあるが、RC床版の下面増厚補強法として採用されたのは初めて。(井手迫瑞樹)。


補修一般図

 現場は、神君徳川家康が眠る日光東照宮から中禅寺湖へ向かう国道120号に架けられている橋梁である。同路線は別名『日光ロマンチック街道』と称されており、とくに春秋の観光シーズンには交通量多い路線である。記者が取材した9月末は残念ながら紅葉は未だ見られなかったが、そのシーズンは見事な光景が見られることであろうことは想像に難くない。しかし、写真のような山道であり、冬季は多量の凍結防止剤を散布する。そのため橋梁に与える条件は厳しく、これらを克服する条件が必要となる。

 同橋は1964年8月に供用された橋長82.7mの鋼3径間鈑桁橋(主桁間隔は2.95ⅿ)である。同橋は昭和31年鋼道路橋設計示方書、同製作示方書、昭和32年溶接鋼道路橋示方書、昭和34年鋼道路橋の合成桁設計示方書に基づいて架設されている。支間長は25+32+25m、幅員は7.7m(地覆補修後は8.0m)であるが、実際には中央部は両側にゲルバーを有する吊桁であり、中央部の桁は22mとなっている。また両端の桁は非合成鈑桁であるが、中央部の吊桁は合成鈑桁である。勾配は横断こそ2%程度であるものの、縦断はA1→A2に6%もの上り勾配がついており、12月下旬~4月上旬にかけての凍結防止剤散布時期には多量の塩分を含んだ水が橋梁に影響を与えている。地覆は凍害や凍結・融解、塩害の複合劣化の影響による劣化が著しい。鋼桁の劣化した個所やゲルバーおよび端部からの漏水の影響によって鋼桁全般的に塗装劣化や腐食が進行していた。

地覆も損傷していた

 RC床版は厚さが170mmと薄く、しかも広範囲にひび割れが発生し、部分的に2方向ひび割れや、漏水・遊離石灰が発生するなどの損傷を受け、早期の補強対策が必要であったと考えられる。現在では、RC床版の損傷の顕在化に対応するために主桁間の中央に増桁補強が施され、床版支間は1.475mである。(増桁補強は塗装履歴板より昭和56年と考えられる)

建設時床版厚は170mmだった

鋼桁の連結・補強

 ゲルバーを有する鋼桁ということで、まずは耐震性能と吊桁対策に目が行くところだ。

しかし、上部工の支持条件は、橋軸方向に対してA1固定、P1~A2可動、ヒンジ部が固定(ピン支承)であり、ゲルバー部の連続化によってヒンジ部が連結されても耐震性は変化しない。また、橋軸直角方向に対しては全て固定であり、これもゲルバーを連続化しても変わらない。従って耐震的には問題ない構造といえる。

 ではなぜ桁補強したのか、同橋では既に薄層な床版を補強するため縦桁を入れているが、この死荷重増分の対応は考慮されていなかった。加えて、今回上下両面に床版増厚するため、さらに死荷重は増える。これに対応するため水平補剛材や下フランジ下面への補強材などを設置した。また、今回ゲルバーは写真のように連結するが、その吊桁のウエブには水平補剛材を新たに配置している。これは桁を連続化することによってウエブの下半分側に圧縮力がかかり未補強では座屈してしまう可能性があり、その補強として設置したものだ。また、桁端部は、腐食によりフランジが断面欠損しており、当て板により補強する。補強鋼材の全数量は18tに及んだ。部材は1部材350㎏以下にサイズを抑制し、それを上側からユニックで吊って足場内に入れ、添接によって設置した。

例えば吊桁補修図


ゲルバーの連結

桁の補強


鋼桁の塗装

 塗装は1981年12月に塗装塗替えして以来、40年弱もの間塗り替えが行われていない。腐食も進んでいることから今回は全面積2,105㎡を塗り替える。劣化した塗膜はバイオハクリX-WBによって湿潤化したのちに剥離除去し、腐食が生じている端部や摩擦接合が必要な補強材添接部はブリストルブラスターを使って1種ケレン相当の素地調整を行い塗装または添接を行った。他の一般部は、塗膜除去後、エポガードを塗布し、中塗り・上塗りを施して塗り替えた。

塗膜剥離剤による既設塗膜の除去/エポガードを塗布した

塗装施工状況