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塗膜剥離剤+2種ケレンで既設塗膜を除去

阪神高速 尼崎末広出入口付近の鋼桁3万4千m2超を塗替え

公開日:2019.09.13

 阪神高速道路は現在、5号湾岸線尼崎末広出入口付近及び鳴尾浜の鋼桁約34,000㎡の塗り替えを行っている。同橋は1994年に供用されて以降25年が経過しており、今回が初めての塗り替えだ。既設塗膜からは鉛(含有量:最大1.5mg/kg、最小0.015mg/kg)が検出されており、塗膜剥離剤(バイオハクリX-WB)+2種ケレンにより塗膜除去と素地調整を行っている。その現場を取材した。(井手迫瑞樹)

施工対象
 対象部位は全て鋼床版箱桁で本線部(海S-16、S-17、S-18、S-36)が275m(幅員287.3~42.2m)、末広(神戸)入路部が鋼床版箱桁で217.8m(幅員7m)が対象。塗り替え面積は本線部が28,714.4㎡、末広入路部が5,312.5㎡の合計34,026.9㎡となっている。既設塗膜は「対象個所において、上、中塗りが2~3割程度剥がれており、下塗りが露出した状態にあった」(阪神高速道路)。一方、下部工でも鋼製橋脚を採用しているが橋脚部分の塗装劣化は殆どなかった。

既設塗膜の内容と除去およびケレン手法

 既設塗膜の標準膜厚は、一般部が220μmで特殊部が255μm。6層構成(右表)となっている。阪神高速は、現在塗膜除去および素地調整は、塗膜剥離剤を用いて既設塗膜を除去した後に、バキュームタイプのディスクサンダーを用いて2種相当のケレンを行う手法を採用している。ここでは2種類の塗膜剥離剤を試験し、剥離剤の浸透性と剥離面積、剥離後に掻き落とした塗膜片の乾燥の早さ(乾燥が早いほど後始末がしやすい)を評価して『バイオハクリX-WB』を採用した。なお、塗膜剥離材の塗布回数は事前の塗膜剥離試験結果から2回としている。塗布後の養生間隔は一般部で1回目48時間、2回目72時間の養生間隔をとった。また、狭隘部や添接部についてはパワーツールを用いて塗膜の除去を行っている。


剥離剤の塗布状況(阪神高速道路提供)

施工フロー
 施工は基本的に1径間ごとに行っている。塗膜剥離剤を用いて1~2か月かけて既設塗膜を剥離して掻き落とした後に、素地調整および下塗り1層目(有機ジンクリッチペイント)までを一括で施工し、その後。2層目以降を施工していく。塗り替え塗装は一般部で5層250μm、ボルト接合部および支承部で370μmとしている(表)。塗装手法は基本的に吹付で行い、各層の養生期間は状況に応じて1日から最長10日間程度の間隔をあけている。足場は防水防炎シートで完全防護するとともに、既設塗膜の掻き落としの際は、専用のシートを用意して、その上に既設塗膜片を落とし、シートを包んで一緒に処分する手法を採用している。


既設塗膜の掻き落とし状況(阪神高速道路提供)

 施工に要する人員は最大で40人程度。塗膜剥離班が1班7~8人、塗装班が2班15人程度で、掻き落とし時にはさらに15人程度が加わって作業を行っている。


素地調整状況(阪神高速道路提供)

塗替え施工状況(井手迫瑞樹撮影)

安全対策
 安全対策としては使い捨ての化学防護服・防護手袋。シューズカバー・保護メガネ・全面体呼吸用保護具の着用を徹底する。加えて桁内での夏季における作業は高温多湿で非常にハードであるため、水分や塩分の補給を適宜行わせる。また、各作業場所において熱中症指数(WBGT)を計測し、所定の休憩(10時、昼食時、15時)以外にも各自判断で休憩を取らせるとともに、作業従事者一人一人を把握するために出入り口に確認札を付け、作業者の健康上の安全に留意している。

 元請は鉄電塗装
(2019年9月5日掲載、文:井手迫瑞樹)

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