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180N /mm2の強度を有する超高強度コンクリート 床版と桁の総重量を約4割削減

阪神高速 信濃橋入口で日本初となるワッフル型UFC床版を架設

公開日:2019.08.30

 阪神高速道路は、7月17日22時~18日未明にかけて、1号環状線信濃橋入口(閉鎖中)のNP5~NP4間の国道172号(本町通)を跨ぐ橋長37mの単純合成鈑桁部において、道路橋では国内初となるワッフル型UFC床版の架設現場を報道陣に公開した。同床版は2方向にリブがあるワッフル形状のプレキャスト床版で、180N/mm2の強度を有する超高強度コンクリートを採用し、形状をワッフル型とすることにより、鋼床版並みに軽量化を図ることができるのが特徴だ。今回の現場でも軽量なため、主桁の数を3本から2本に減らすことができており、床版と鋼桁を合わせた重量で約4割削減することができている。1枚当たり幅5.75m、長さ2.45m、厚さ150mm、重さ3.6tのUFC床版パネルを公開前日に6枚、公開日に9枚、合計15枚設置した。


架設位置図(阪神高速道路提供)

架設対象箇所(同)

 ワッフル型UFC床版は、超高強度繊維補強コンクリートであるUFC(Ultra High Strength Fiber Reinforced Concrete)を使用し、橋軸および橋軸直角方向に配置されたPC鋼材によりプレストレスを導入した床版だ。2方向にリブがあるワッフル型形状であるため、玉出入口で使用した平板状のUFC床版と比べてもさらに重量をおよそ半減させている。架設も60tクレーンで桁下から吊り上げ、スムーズに施工することができた。


床版と鋼桁合わせた重量を約4割削減






ワッフル型UFC床版の架設(井手迫瑞樹撮影)

 設置手法は通常のプレキャストPC床版とほぼ同じ。床版パネルを全数配置し終えた時点で、上フランジ上のスタッドや、床版パネルのシーム(幅50mm)中央、横リブ上に配置した孔あき鋼板ジベルに現場打ちの間詰サクセムを打設し、桁と一体化する。パネル間接合部にはPC鋼棒(φ17mm)を配置して軸力を導入することにより、接合部上面の引張応力の発生に対応させる。


間詰部(井手迫瑞樹撮影)/スタッド部および間詰部の施工

 今回の床版厚さは150mmとした。これでも従来のRC床版標準厚さ(210mm)に比べれば相当に薄いが、「たわみ制限値を確保するためのもので、本来の長期耐久性という観点からはもう少し薄くすることも可能」(鹿島建設)ということだ。一方で、製作したプレキャストパネルの上面はフラットになっており、NEXCOその他のプレキャストPC床版で見られるような地覆一体型ではない。その代わりに砕石を埋め込み、後打ち地覆コンクリートとの付着性能を高める工夫を行っている。これはUFCにはセルフレベリング性(自己水平性)が高いという特徴があるためだ。床版の平滑性を保つという点では良い方向に働くが、地覆などを一体成型するという意味ではこれが難しい方に働くのだ。構造的な止水性(床版地覆の打継面が低く、損傷が起きた場合そこから漏水が生じてしまう。床版・地覆の一体成型はそれが起きにくいために広く採用されている)という点では課題とも言え、「地覆と一体化したパネルの作成も検討していきたい」(同社)としている。


砕石を埋め込み、後打ち地覆コンクリートとの付着性能を高める工夫を行っている
(左は井手迫瑞樹撮影、右は阪神高速道路提供)

 軽量かつ高耐久であり、作業性も良いことから、床版取替を伴う大規模更新現場や新設現場へも鋼床版と同等の重量でありながら耐久性の高い材料として使うことができそうだ。
同現場の施工者は鹿島建設。UFC床版の製作は富士ピー・エス三重工場。(井手迫瑞樹)
(2019年8月30日掲載)

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