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上り線施工時の一時的な活荷重の増加が床版の急速な劣化を招く

東日本高速道路 東北道迫川橋(下り線) 予想外の床版取替工事現場ルポ

公開日:2019.07.24

床版の撤去
 施工に際して、上り線は路肩も用いて車線規制するが、2018年に施工した三迫川橋の床版取替工事の際に(車線規制した土工部の)路肩舗装にポットホールが生じて、補修を行う必要が生じたため、事前に路肩の舗装改良範囲を広げ、その発生を防いでいる。


渡り舗装の施工(NEXCO東日本提供、以下注釈なきは同)

床版取替工事概要

 床版の撤去・設置はA1、A2側に220tオールテーレンクレーンを配置して、架け違い部のP3橋脚から両端へ開いていく形で施工した。同橋の最外側は高欄ではなくガードレールを設置しており、その撤去は規制を始めた後、先行して行った。高欄の先行切断がなかっただけでも施工上の負担は大分軽減されている。


橋面切削/ワイヤーソーによる切断

 既設床版の橋軸直角方向の切断は2.2m間隔で施工した。これはクレーンを配置する前にコンクリートカッターにより事前に施工している。橋軸方向は中間桁の中心で2分割に切断する(6,050mmと5,620mm)が、これはクレーンを配置した後にそのつど施工した。撤去重量はそれぞれ約9.6tと8.8t。
 撤去時において難しいのが床版剥離作業だ。下り線の床版は劣化が激しい。強引に剥がすと吊り上げ時にコンクリートの剥落、最悪の場合には割れを生じ、作業員や対向車線に被害をもたらす危険性がある。そのため専用の剥離装置に装備する油圧ジャッキの数を従来の2列4基配置から4列8基配置に倍増し、慎重に剥離作業を行った。その後220tクレーンで既設床版を吊り上げ、上り線と逆側に旋回させ、トラックに積み込んで撤去した。撤去数量は192枚に及んだ。


コア削孔/床版の切断

伸縮装置の切断/油圧ジャッキの数を従来の2列4基配置から4列8基配置に倍増し、慎重に剥離作業を行った
(右写真のみ井手迫瑞樹撮影)


床版の撤去、積み込み(左写真のみ井手迫瑞樹撮影)

 撤去後は、主桁上フランジのケレンと錆止め材の塗布(60μm)に入る。そうした作業で効果を発揮したのが「セフテージ」と呼ばれるアルミ合金製簡易足場板だ。1枚当たり長さ4,000mm×幅400mmの板を連結金具で継手し、フランジ間にはめて(写真)、足場として使うもの。作業時の落下を防止でき、なおかつ作業効率を上げることを可能とした。セフテージはずらすような形で手軽に移動させることができるため、足場設置作業も簡素化することができていた。


桁間にセフテージを配置しているため、安全に作業できていた(井手迫瑞樹撮影)

上フランジの防錆処理完了状況

PC床版の架設・間詰コンクリートの打設
 ケレン及び塗布作業が完了した後、新設PC床版を架設する。1日当たり片方で7枚設置する。設置するパネルの寸法(標準板)は橋軸方向1,860mm×橋軸直角方向11,400mmで床版厚は220mm、重量は13.2t(端部は寸法が多少変わるため15.0t)で、総計96枚(1,265t)を架設する。設置後、主桁ずれ止め用のスタッドジベルを溶植し、間詰鉄筋を挿入する。


PCaPC床版の架設/設置されたPCaPC床版(右:井手迫瑞樹撮影)

 床版設置の翌日、無収縮モルタルを打設し、床版と上フランジを一体化させるが、その時に使っているのが塩ビアングル枠と呼ばれる型枠だ。


塩ビアングル枠の設置状況(左のみ井手迫瑞樹撮影)

 同型枠はノロ止めと、型枠を合わせたような機能を有している型枠で、L型形状となっており、1面をフランジ側面に、1面をPC床版下面に合わせてインサートで固定することで、全面に渡って型枠を通すことを可能としている。型枠には特殊な止水膨張テープを貼り付けており、ノロの漏出を止める。川上・川下の間詰コンクリート部には木製の型枠を作り、同所からの溢出によりモルタルの充填を確認する。従来のソールスポンジによるノロ止めでは、添接部でボルトとの取り合いが邪魔をし、標準部と同様の位置にスポンジを通すことが困難であり、打設後の充填確認も難しかった。同型枠では溢出後、所定の養生時間を経て脱型するだけですぐに確認できる。また型枠は何度も転用できるため、廃材がなく環境にも優しい型枠材といえる。


濃い灰色のテープが止水膨張テープ/木製の型枠を作り、同所からの溢出によりモルタルの充填を確認する
(井手迫瑞樹撮影)

 床版間の継手はループ継手を使っており、間詰幅は340mmに達する。間詰厚は床版部と同じく220mm。同現場では当初アゴありの床版で発注されていたが、現在の設計要領に合わせてアゴなしの床版に変更したため、吊り型枠を用いた。間詰コンクリート及び端部の現場打コンクリートの打設はクレーンなどの段取りを考慮して、全パネル設置後にまとめて施工した。
 雨天時には仮設屋根を用いて施工し、工期のずれが出ないように努めている。


ループ継手/吊型枠(左写真は井手迫瑞樹撮影)

場所打ち床版部(左側未配筋、井手迫瑞樹撮影)/同配筋完了状況

間詰コンクリートの打設状況

同養生状況

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