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樽峠トンネル、地すべり対策工などの難工事を経て3月10日に開通

NEXCO中日本東京支社 中部横断道 新清水JCT~富沢IC間を公開

公開日:2019.02.28

 中日本高速道路(NEXCO中日本)東京支社は26日、同社が施工し、3月10日午後4時30分に開通する中部横断道 新清水JCT~富沢IC間(延長20.7km)の現場を報道陣に公開した。
 中部横断道は、新東名高速新清水JCTと上信越道佐久小諸JCTを結ぶ延長約132kmの高速自動車国道で、山梨県内の双葉JCT~長坂JCT(仮称)間は中央道と重複している。延長74.3kmの新清水JCT~双葉JCT間では、六郷IC~双葉JCT間(延長25.3km/NEXCO中日本施工)が供用済みで、新直轄方式区間の富沢IC~六郷IC間は下部温泉早川IC~六郷IC間(延長8.4km)が3月10日に同時開通、富沢IC~下部温泉早川IC間(延長19.9km)が今年度開通予定だ。


中部横断道路線図(国土交通省・当サイト掲載済み)

 新清水JCT~富沢IC間の構造物延長は、トンネルが11.6km(56%)、土工が5.4km(26.1%)、橋梁が3.7km(17.9%)で、トンネルは8本、橋梁は13橋(+ランプ部7橋)ある。橋梁では、両河内橋(橋長460m)と長瀞川橋(橋長322m)の2橋で、死荷重を減らすために上部工に波型鋼板ウェブを採用した。
「(同区間は)山岳部で、山梨県内では静岡県境側から約4%の下り勾配が5km続いて、標高差も約200mとなっている。トンネル部も約6割を占めており、難しい工事だった」(NEXCO中日本東京支社南アルプス工事事務所)が、「開通にともない、甲府市中心部から静岡市中心部までの所要時間が約2時間となり、30分短縮される」(同)ほか、物流・観光面での効果や災害時の代替ルートとして期待されている。
 当日は、富沢ICやワイヤーロープ設置状況、トンネル避難坑、地すべり対策、静岡県と山梨県の県境にある樽峠トンネル、新清水JCTが報道陣に公開された。

 富沢ICでは富沢IC~六郷IC間が無料区間となるため、本線料金所を設置。標識板背面には落下防止用ワイヤーが付けられ、二重の安全対策が図られていた。


富沢本線料金所

富沢IC標識板と背面の落下防止用ワイヤー

 新清水JCT~双葉JCT間は暫定2車線区間となる。対向車線へ車両が誤って逸脱することを防止するために、同区間の6箇所(静岡県側2箇所、山梨県側2箇所)にワイヤーロープ形式の中央分離帯を採用。ドライバーへの逸脱注意喚起では、凸型のレーンマークや舗装面をランブルストリップスにする対策も行っている。


ワイヤーロープ形式の中央分離帯/舗装に施されたレーンマークとランブルストリップス

 森山トンネル(延長1,734m)では、緊急時に使用する避難坑を公開。本線トンネル上には約350m間隔で非常口があり、連絡坑で避難坑と接続されており、2箇所に1箇所は緊急車両などが通行できるようになっている。非常口の扉は防食のためステンレス製とした。森山トンネルのほか樽峠トンネルにも避難坑がある。


本線非常口/非常口から避難坑を望む

避難坑/樽峠トンネルの避難坑口(右側)

 石合トンネル北坑口上は、大雨や地震で地すべりの可能性がある地盤だったため、地すべり対策工を実施。坑口上と周辺部に、φ500mmの鋼管杭(抑止杭)139本を直線上に最大45mの根入れで打設し、その上にコンクリートを打設した。坑口脇は、209本のグラウンドアンカーを打ち、補強している。


石合トンネル北坑口上の地すべり対策工。写真上部が抑止杭工施工箇所

 現場は急斜面で、本線下のヤードから本線までの標高差が約60m、さらに打設地点まで40~50mあった。「標高差約100mの資機材搬入が大変だった。そのため、モノレールを2本設置して搬入を行っていった」(同)という。鋼管杭は門型クレーンを設置して3日に1本のペースで施工したが、鉛直方向に打設するための架台の設置を急斜面上で行うという困難な作業も発生した。地すべり対策工には、約1年半かかっている。


地すべり対策工箇所から見た福士川第二橋。橋脚高は約60mで急斜面になっている

 森山トンネルの前後にある福士川第一橋と福士川第二橋、さらに中河内橋、湯沢川橋、長瀞川橋のトンネル間にある5橋には、道路下に路面を温める設備=ロードヒーティングが設置された。積雪・凍結による通行止めや車両の滞留を防ぐためだ。

 新清水JCT~富沢IC間で最長となる延長4,999mの樽峠トンネルも難工事となった。工事は県境を境に2工区とし、NATM工法で山梨県側2,372m(南アルプス工事事務所)は2011年6月に掘削が開始された。静岡県側2,627m(清水工事事務所)は2013年8月に掘削が開始されたが、砂岩や砂岩・泥岩互層などの非常に複雑な断層形状となっていて、掘削困難な施工箇所(押出性地山区間)が出現した。同区間では掘削面の崩壊やインバート部の変状が発生したため、支保パターンのランクアップをした。具体的には、吹付けコンクリートおよび鋼アーチ支保工をインバート部に早期に配置し、リング構造を形成する全断面早期閉合工法を採用している。さらに、補助工法としてAGF工法(フォアパイリング工法)を採用。φ100mm程度の鋼管を切羽前方地山に打設して、注入材により地山を補強・改良していった。掘削前には施工の安全性を確保するために、切羽前方の地山性状を確認する前方探査を実施している。トンネル本坑貫通は、2017年10月だった。
 トンネル内設備として樽峠トンネルと森山トンネルで、トンネル中間部付近に紫色のアクセント照明を配置。単調さから発生する漫然運転の防止を図っている。紫色にしたのは、中部横断道のイメージカラーが同色であったからだという。また、全トンネルにおいて監査路ではなく監視員通路とすることで、安全な点検を行えるように配慮した。


県境部に配置されたアクセント照明

監視員通路

 新東名高速と接続する清水JCTは切土面が多く、切土量は約110万m3となった。


新清水JCT。中部横断道から新東名高速および清水連絡路方面(写真上方)

新東名高速(写真上方)から中部横断道に向かうランプ
(2019年2月28日掲載 文・撮影:大柴功治)

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