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中国道有野川橋 スピンジェットノズル+桁下面からの低圧樹脂注入

NEXCO西日本 全て桁下から施工可能な増厚床版部剥離補修システムを初採用

 西日本高速道路関西支社が所管している中国自動車道有野川橋の神戸電鉄三田線跨線部床版補修工事にスピンジェットノズル+桁下面からの低圧樹脂注入によるひび割れ補修工法「増厚床版部剥離補修システム」(以降、増厚補修システム)が採用された。全て桁下から施工でき、短時間で床版に生じている水平ひび割れを確実に補修できる工法だ。ひび割れ部に生じるノロを水により洗浄した上で水中硬化型エポキシ樹脂を低圧注入して接着することから、従来の非洗浄の樹脂注入補修に比べて、「補修効果を飛躍的に向上できる」(NEXCO西日本)。 同社では「今後、交通規制の制約を受ける重交通路線や鉄道や道路などの重要交差部、1車線ランプなどにおいて、床版内部や上面増厚界面にひび割れが生じた床版に対して、将来の床版取替など抜本的対策までの安全性を確保できる工法として採用を考えていきたい」、と話している。その現場を取材した。(井手迫瑞樹)


有野川橋 凍結防止剤散布や防水未設置が影響

 増厚も水平ひび割れや増厚部の界面剥離を確認

 有野川橋は、橋長208.7mの鋼3+3径間連続7主鈑桁+鋼単純非合成桁橋。1974年6月に4車線供用され、90年3月末に上下1車線ずつ拡幅された。幅員は17.25mで、主桁間隔は当初供用部が3m、拡幅供用部が2.3mとなっており、当初供用部の床版支間の長さが際立つ。


当初供用時一般図

拡幅時一般図

 1日当たり断面交通量は新名神開通前で約8万7千台、開通後もなお約6万8千台(大型車混入率は約23%)が通る。設計示方書は当初供用が昭和39年鋼道路橋設計示方書・鋼道路橋製作示方書解説、拡幅部が昭和55年道示となっている。設計床版厚は220mmだが、2011年2月に同橋の床版全面積上面(6600㎡)を10mm切削し、50mm増厚しており、全厚は260mmとなっている。床版防水はこの時初めて施工(G1)した。施工の際、舗装や増厚のシーム位置は縦断方向施工目地において100mm位置をずらしており、菅野川橋のような補修は行っていない。しかし、通過交通台数が多いこと、凍結防止剤の散布量が年100t/kmと非常に多いことや、床版防水の設置が遅かったことから、増厚にも関わらず、床版下面にひび割れや剥離、鉄筋露出などの損傷が散見された。

増厚補強時の図面

 さらにSingle I 工法を用いて床版内部を詳細調査した結果、内部の上側鉄筋に沿ったひび割れや上面増厚コンクリートの界面剥離を確認することができた。増厚コンクリートの剥離は、当時の基準では新旧界面に接着剤を塗布していなかったため、剥離が生じたものと考えられる(現在のNEXCO基準では額縁状にエポキシ樹脂系接着剤を塗布する)。

Single I 工法による調査。水平ひび割れや界面剥離の状況がわかる

 こうした損傷が生じている場合、本来は床版取替を選択するものであるが、有野川橋のような重交通かつ重要交差物が直下にある橋梁では計画~実施に非常に時間がかかる(九州道向佐野橋では10年以上かかった)。そのため、次善策として増厚補修システムを採用したもの。


有野川橋跨線部