HOME現場を巡る一覧NEXCO東日本新潟支社 北陸道万蔵川橋でP2柱頭部の鉛直PC鋼棒が破断 対策工が有効に機能し影響は軽微

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今後は該当箇所の点検、グラウト再充填など恒久的な対策が必要

NEXCO東日本新潟支社 北陸道万蔵川橋でP2柱頭部の鉛直PC鋼棒が破断 対策工が有効に機能し影響は軽微

 東日本高速道路新潟支社が所管する北陸自動車道の万蔵川橋(上越市柿崎区の万蔵川渡河部、橋長206.7m、PC3径間連続π型ラーメン箱桁橋)のP2付近で今年7月ごろ、柱頭部の鉛直PC鋼棒が破断する損傷が発生した。PC鋼棒は鉛直PC鋼棒突出対策工(後述)で予防保全的な補修を施しており、これが有効に作用し、舗装への影響は範囲が直径600mm、盛り上がりが最大約2cm程度で済んだ。同橋は1982年12月に開通した橋梁でP1~P2間(35m)を場所打ち、A1~P1、P2~A2間各85mを張出し架設工法(同橋ではディビダーク工法)で架設した。下部工はA1が箱式橋台、P1、P2が中空断面橋脚、A2が逆T式橋台をそれぞれ採用している。P2柱頭部は箱桁ウエブと橋脚支点上の2枚の隔壁に囲まれた箱のような構造になっており、震度法レベルの地震時に発生する柱頭部の局部的な鉛直方向の作用に対して、1枚の隔壁に2列に8本の計16本、1柱頭部では合計32本の鉛直PC鋼棒が配置されている。今回損傷したPC鋼棒は、P2橋脚上のA1側に位置している隔壁の2列のPC鋼棒の最外側に位置している(図4)。この橋梁では平成12年にも同橋脚で鉛直PC鋼棒1本の破断が生じている。現場を取材した。(井手迫瑞樹)


図1 万蔵川橋一般図(側面図)(NEXCO東日本新潟支社提供、以下同)

万蔵川橋

図2 橋脚、橋台付近横断図

図3 破断した鉛直PC鋼棒があるP2位置/図4 破断した鉛直PC鋼棒の詳細位置


 損傷したPC鋼棒の長さは、14.135mで8mと6m余りのPC鋼棒を中間でカップラーにより1本に繋げた構造だ。鋼棒の直径は32mm、鋼製シースの直径は38mmとグラウトの隙間は極めて狭く、損傷の要因としてはグラウト充填不良と水の侵入による腐食破断が考えられる。NEXCO東日本新潟支社ではそうした想定の下、PC鋼棒のプレストレスは開放されたと考え、盛り上がったPC鋼棒の先端を舗装内に埋め込み、塗布系防水工を設置した上で舗装をかけて応急補修している。課題は今後だ。


PC鋼棒が破断し、盛り上がった状況(舗装・防水層を撤去した状況)
 
該当部に乳剤を塗布し、不陸修正後、防水層を施工し、

表層を施工する応急処置を行った

 まず、想定ではPC鋼棒が下側定着付近で破断した想定で補修を検討している。しかし実際はPC鋼棒が長く、隔壁が1mと厚く、PC鋼棒までの被り厚も375mmと深いため、既存の非破壊検査では調べることができず、実際の破断状況は現状において確認できていない。同様にグラウトの充填状況も調査できていない。既往の知見を考慮すれば破断と判断するのが妥当であるが、同橋の他の鉛直PC鋼棒の健全性を調査するためには、「適切な非破壊ないし微破壊検査方法を求める必要がある」(同支社)。具体的な非破壊検査の方法としては広帯域超音波法(グラウト充填確認)や漏洩磁束法(鋼棒破断の有無確認)など、微破壊検査の方法としては小口径コアドリルなどでシースに孔明けしてマイクロスコープで見る手法が考えられる。なお、壁厚が厚くなく非破壊検査で調査可能なPC鋼棒については平成12年当時にグラウト未充填箇所の再充填を行っている。万蔵川橋P2のピア高は38m、柱頭部高さは7mと高い。ラーメン形式であるため検査路も設置しておらず、現状では隔壁の外側からの調査は足場を設置するか、大型橋梁点検車、特殊高所技術などを用いた調査を行う必要がある。

 今回の損傷により32本中2本のPC鋼棒を欠いた状態になった万蔵川橋P2について、補強は必要ないのだろうか。同支社では「直ちに補強が必要なレベルではない」としている。この橋梁の柱頭部の鉛直PC鋼棒は、耐震的な性能を期待して配置されているが、当時は周囲に配置している鉄筋を加味しないものとして設計されており、この鉄筋を加味した場合、補強が不要と考えられるためだ。

 旧JHに勤務経験のある橋梁技術者への取材では、補修補強については「破断したPC鋼棒を抜いて大規模な補強を施すよりは、防錆も兼ねてグラウトを充填して鉄筋代わりとして使ったほうがよい。カップラー付近で不具合がない限りは、仮に全部破断したとしても、破断位置が同じ箇所に集中することはありえないため、補強鉄筋代わりとしては有効に機能する」と話している。


 一方で、特に柱頭部付近のウエブには張り出しと構造部材を兼ねた鉛直PC鋼棒が挿入されている場合があり、斜め45度に入っているPC鋼棒も多い。こうした鋼棒については、グラウト充填の余裕が鋼棒外径+3mmほどしかなく、充填が困難で、最終的に最上部などに未充填の空気溜りができやすい。旧JHなどでは、鉛直PC鋼棒の上を鉄板とアラミドナイロンシートで封をして上部への突出を防止する鉛直PC鋼棒突出対策工をシースへのグラウト再充填までのつなぎとして施工しており、新潟支社では同対策工については全ての鉛直PC鋼棒で対策を終えている。


 但し、恒久的な対策としてのグラウト再充填については既存の調査方法では調査できない箇所が有り、全ての橋梁で対策できていないのが実情だ。同支社では柱頭部などの「鉛直PC鋼棒のグラウト充填状況や鋼棒の健全度をできれば非破壊で点検・解析し、順番を定めて対策していくことを考えていければ」と話している。同形式の橋梁は他のPC道路橋でもあり、旧JH以外の橋梁でも点検や対策が必要になる可能性がある。(2018年11月21日掲載)