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既設巻き立て鋼板を活用して鋼製ブラケット設置

横浜市 第三和泉原橋の補強・補修工事を進める

公開日:2018.10.18

 横浜市は、泉区にある東海道新幹線を跨ぐ第三和泉原橋の補強・補修を東海旅客鉄道株式会社(以下、JR東海)への委託工事として進めている。事業期間は2015年度から2019年度(予定)。同工事は、側径間のゲルバー部の受桁の損傷に対する抜本的な対策、および桁と床版の補強・補修などを実施するものである。

ゲルバー部受桁のき裂損傷が進行
 き裂は鈍角部に集中して発生

 1963年に竣工した同橋は橋長38.62m、有効幅員6.5mで、主径間がRCラーメン橋(18.81m)、側径間がRC単純ゲルバーT桁橋(8.5m×2)であるが、2006年度に実施した詳細点検でゲルバー部の受桁にき裂損傷が発見された。


施工前の第三和泉原橋

 損傷が発生した原因は、同橋が斜角45度となっており、側径間の荷重が鈍角部に偏っているためと考えられる。建設時の設計では荷重を四等分していたことから、偏荷重を受ける鈍角部のゲルバー部で進行性のき裂が集中して発生することになった。
 1995年度に沓座拡幅とPC鋼線設置の落橋防止工を行っており、落橋する危険はないが、市は対策の検討をして、JR東海と工事に向けた協議を進めていた。


亀裂発生の原因/亀裂の進展状況

鋼製ブラケットで側径間を支持
 耐震補強工時に設置された巻き立て鋼板を活用

 ゲルバー部の補強方法は、き裂の入っている受桁部分を切断撤去して、既設RC橋脚に新たに取り付ける鋼製ブラケットで側径間を支持する構造とした。このような「張出支持工法」では既設RC橋脚にアンカー定着をするのが一般的であるが、本橋は橋脚部材の斜角が45度であること、断面形状が1410mm×850mmと小さく配筋が密であることから、既設構造物への影響を考慮して、アンカー定着しない構造とすることにした。
 アンカー定着によらず鋼製ブラケットを設置するために、1995年度にRC橋脚の耐震補強として実施された巻き立て鋼板を活用する方法が取られた。巻き立て鋼板はRC橋脚のじん性を向上させ、脆性破壊を防止する目的で施工されているが、鋼板の継手がフルペネ溶接となっており、上方からの軸力に対応可能な構造だった。また、板厚がt=9mmと薄いが部材断面が小さいことと、鋼板がRC橋脚にビス留めされていることから、検討した結果、座屈の恐れはないと判断された。しかし、巻き立て鋼板は本来軸力を伝達させる目的で施工されていないため、二重の安全対策として、既設巻き立て鋼板を期待せず、補剛材H鋼のみでも橋梁本体の軸力に耐えられる構造とした。これらにより、レベルⅡ地震動にも対応可能なものとなっている。


桁受梁部補強構造詳細図

対策概要図

 なお、当初補強工法として、ゲルバー部の一体化や側径間の直下に新たな支柱を設置して荷重を負担する構造も検討したが、一体化では既設構造物に与える影響が大きいこと、支柱設置では線路内での作業が増えるとともに工期が長くなり工費がかさむことにより採用を見送った。


補修・補強一般図

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