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アースコート防錆-塗装システム 高耐久性とコスト削減を実現

鳥取県市町村の橋梁損傷傾向と長期防食性を確保する錆転換型防食塗装

 鳥取県建設技術センターでは、管理技術者が不足している県内の市町村に対して橋梁補修アドバイス業務を行っている。その業務のなかでセンターが把握している市町村管理の橋梁の損傷傾向と対策をまとめた。あわせて、塩害地域では鋼橋の塗装塗替えで錆転換型防食塗装が採用されているが、そのうちのひとつであるアースコート防錆-塗装システムの特徴と施工事例を紹介する。

 

8市町185橋で橋梁補修のアドバイスを行う

橋梁補修アドバイス業務

 鳥取県建設技術センターは、技術者育成のための研修事業、コンクリートや土質材料などの品質管理のための試験事業、県や市町村が公共工事を効率的に発注するための技術支援事業などを行っている。その一環である橋梁補修アドバイス業務は、平成25年度に八頭町と三朝町の2町から開始され、平成29年度までに鳥取市や倉吉市など8市町に拡がり185橋の実績がある。



橋梁補修アドバイス業務の概要


 業務内容は、橋梁補修業務をコンサルタントに委託発注する前の現地確認、コンサルタントの報告書の内容確認、積算補助業務、施工中のアドバイスや指導などの現場技術業務である。例えば、コンサルタントの詳細設計が国土交通省やNEXCO基準でなされ、市町村にとってはグレードが高すぎるものとなっていても、市町村の担当者では照査できない場合があるため、そのアドバイス業務である。

 

損傷傾向と対策

 鳥取県では海岸から4km程度を塩害注意区域としており、沿岸部の橋梁は塩害による損傷が多くなっている。ただ、国から県、県から市町村への移管時に対策がされているため、市町村管理の橋梁では塩害による大きな損傷は少なく、架け替えが必要な橋梁も少ない。また、町村道の雪氷対策は除雪のみのため、凍結防止剤による塩害はほとんど発生していないが、凍結防止剤を散布する県道との接続部に塩害が発生している箇所がある。

 鋼橋の主桁には塗装劣化が見られ、塗替えの必要な橋梁が相当数存在している。原因は経年劣化がほとんどであるが、一部に塩害劣化があると考えられる。塗替塗装において、コンサルタントからRc-Ⅰ、Rc-Ⅲでの塗替えを提案された時でも、飛来塩分が多く再劣化の起こりやすい地域の場合は、錆転換型防食塗装の採用を検討することもある。飛来塩分が多いと表面上は損傷していないように見えても、塩分を含んだ錆となっている場合があり、それを残してしまうと腐食が進み、早期再劣化につながるためだ。

 塗替塗装を行っても、施工後5年前後で再劣化が見られる場合があり、現場によっては施工後半年から1年で再劣化しているところもある。とくに塩の影響を受ける沿岸部は再劣化が早い傾向があり、ボルトや目板の周囲、下フランジに再劣化が起きやすい。

ケレンは市町村管理橋梁では1種ケレンはなく3種ケレンが多くなっている。PCBなど有害物質を含有する既存塗膜の処理については、県レベルでは対策を行っているが、市町村レベルでは対策が進んでおらず課題になっている。塗装塗替え時に有害物質の含有試験を実施しているが、含有が明らかになった場合にケレンを含めて施工が問題になり、対応しなければならなくなる。

 コンクリートでは、PC桁でASRによる橋軸方向のひび割れが一部の橋梁で見られ、RC桁では施工不良によるものと考えられるジャンカ、漏水、遊離石灰、腐食鉄筋露出、ひび割れが生じている。床版については、乾燥収縮による橋軸直角方向のひび割れ、床版厚が薄いことなどによる格子状のひび割れも散見されているほか、橋面防水の損傷や未施工による漏水や遊離石灰析出が見られている。下部工はASRや乾燥収縮によるひび割れ、伸縮装置の損傷によるひび割れが見られている。



損傷状況とその原因


 補修方法は、下部工などのひび割れ全般に対しては樹脂注入による補修が一般的になっている。床版の場合、漏水箇所や遊離石灰析出箇所がある場合は橋面防水を検討することとし、0.2mm以上のひび割れに対しては樹脂注入を行っており、ASRの場合は亜硝酸リチウム+表面含浸工を推奨しているが、乾燥収縮などで表面含浸工を行う場合には0.3mm以上を注入対象としている。

 補修工事では、設計時に計画した補修工法の変更や計画になかった補修などが必要となることが多い。そのため、鳥取県建設技術センターでは、適切な工法・工費で施工できるように現場でアドバイスや指導を行っている。


2種、3種ケレン程度で高品質な素地状態を形成

 過去5年で 268橋 約113,000㎡の施工実績

アースコート防錆-塗装システムの特徴

 1種ケレンと有機ジンクリッチペイントという従来の重防食塗装によらなくても高い防錆効果と長期防食性を確保できるのが、錆転換型防食塗装「アースコート防錆-塗装システム(NETIS KK-110056-A)」だ。NETISに掲載されて5年目も終わる時期となり、国土交通省の直轄工事でも活用評価され、現在、技術ランクVへの昇格に向けてNETISの評価会にて事後評価の審議中である。

同システムでは、防錆前処理剤で赤錆を錆転換し、鋼材露出面に腐食因子と反応しにくい良質な防錆被膜を形成することによって、2種、3種ケレン程度で1種ケレン相当の高品質な素地状態を形成することができる。また、耐候性に優れた特殊変性エポキシ樹脂に鉄キレート材とオリジナルの防錆添加剤を配合した防錆塗料は、耐食性に優れ、従来工法Rc-Ⅰによる塗装相当の防錆効果を発揮する。


塩水噴霧試験での比較


 同システムにより工期短縮とコスト削減が図れることも特徴となっている。下塗りの防錆前処理剤と防錆塗料は速乾性があるため、下塗り作業は最短1日で完了する。中塗りと上塗りを加えた工期では最短3日となり、Rc-Ⅰでの塗替えの最短工期5日よりも最大2日の短縮が可能だ。



工期の比較


 施工コストでは、1種ケレンが不要となることからブラストにかかる費用のほか、仮設足場設置費用や産業廃棄物処理費を縮減できる。特に昨今の鉛等有害物質含有塗膜の除去対策を必要とする場合のRc-Ⅰ塗装工事では、はく離剤工法とブラストの組合せによって素地調整に係る費用負担が膨らんでいる。アースコート防錆-塗装システムでは、はく離剤による塗膜除去後にブラストを必要とせず、ディスクサンダーによる素地調整程度で塗装ができ、素地調整費が大幅に縮減できる。そのため、素地調整費を含めた塗装面積1,000㎡規模でRc-Ⅰとのコスト比較をすると施工コストが約43%削減され、期待耐久年数が35年となっているので、ライフサイクルコスト(LCC)の削減も実現できる。60年でのLCCでは、RC-Ⅲと比較して54%、Rc-Ⅰでは52%の削減となる(はく離剤工法併用の場合)
 沖縄県などの重塩害地域のように鉄防食の厳しい条件化で施工した案件もあり、施工後1314年が経過しているが、アースコート防錆-塗装システムは安定した防食性を維持している。その高い防錆効果と長期防食性の特性が注目され、一般環境部をはじめ沿岸部や重塩害地域などの条件が厳しいところでも同システムが採用されるケースが年々、多くなっている。現在までの5年間で、鳥取県の上地橋や浜坂橋などを含め、全国268橋 約113,000㎡の施工実績がある。