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橋脚と地下通路とのクリアランスが300mmしかない現場で採用

兵庫県 名月陸橋耐震補強にピア-リフレ(曲げ補強タイプ)を初適用

 兵庫県西宮土木事務所が所管する名月陸橋耐震補修工事の橋脚補強工事で、地下通路内に近接している橋脚(P7、P8)にRC橋脚の圧入鋼板巻立による耐震補強工法「ピア-リフレ工法」を採用している。こうした箇所においては、通常開削によるRC巻立てを行っていたが、現場の橋脚と地下道通路とのクリアランスが約300mmしかなく、地下道通路を一時的にせよ取り壊して耐震補強した後に復旧する案とピア-リフレ工法を比較した結果、経済比較および周辺環境への影響がより少ないピア‐リフレ工法を採用したもの。同現場ではさらに耐震性能的に曲げ補強を必要とすることから、既存フーチングに削孔し、巻立補強部と繋げて曲げ強度を向上させるタイプのピア-リフレ工法を採用している。その現場を取材した。(井手迫瑞樹)


橋脚補強一般図

 同橋は、上り線が1974年、下り線が79年に供用されたPC・鋼混合橋である。下部工は逆T式橋台、張出し式橋脚で、上部工はJR神戸線より南側が単純PCポステンT桁×4連、JR跨線橋部2径間単純鋼合成I桁橋×2連、JR神戸線より北側が単純PCポステンT桁×5連という構造になっている。2013年から耐震・補修工事に着手しており、13年度にJRより南線側の工区、14、15年度に跨線部、16年度からJR線より北の工区をそれぞれ施工している。

 耐震照査は平成24年道示に基づき実施した。その結果、橋脚の耐震補強、落橋防止構造の追加、支承補強として水平力を分担する構造を追加することが必要となり、RC巻立て補強、RC突起、アンカーバー構造の追加等を行っている。


 橋脚補強の中で大きな課題となったのが、今回ピア-リフレ工法で耐震補強を行うP7とP8である。同陸橋は尼崎市内を南北に貫く産業道路上に位置しており、24時間交通量が35,000台を数える重交通路線である。住宅街からJR尼崎駅や尼崎駅近くにある都市公園へ向かう自転車・歩行者の通行も多く、その多くが、その直下にある地下道通路を使う。下り線側のP7、P8はその地下道通路に極めて近接しており、通常のRC巻立て補強のような開削による施工ができない状況だ。


現場は横断地下道に極めて近く隣接している/8ロットに分割して施工した


実際の対象橋脚、すぐ横は地下道

 そのため採用したのがピア-リフレ工法だ。同工法は、補強鋼板を圧入し、鋼板と既設橋脚との隙間でフーチングをウォータージェット(WJ)で削孔し、軸方向鉄筋をアンカーで定着させた後、コンクリートを充填させることによって、耐震性能の向上を図るものだ。補強鋼板圧入にはWJを用いる。鋼板圧入長はP7で4,596mmに達するがこれを5ロットに分けて施工した。なお、補強鋼板そのものの設置高は8,300mmで8ロットに分けて施工した。補強鋼板(SM400A)の厚さは第1ロットのみ16mmでその他は12mmを使用している。またロット高は第一ロットが1,500mmで第2~第7ロットが800mm、最終ロットが1,845mmとなっている。


 この鋼板圧入には2カ月程度かかっている。鋼板は1ロットに付きL字とその隙間を埋める部分合計4部材に分けて現場に搬入し、橋脚上部で溶接して(橋脚を囲む)四角いリング状にした上で吊り下ろし、WJとジャッキ反力を利用した併用工法で圧入していく方法を繰り返していった。現場地盤に石が少なくない量詰まっており、そうした石を含んだ汚泥を確実に処理するため、「WJによるオーバーフローを待つのではなく、バキュームで吸い込む方式を採用」(元請の香山組)し、その上で鋼板を圧入した。その後WJで既存フーチングに補強部とフーチングを繋げるためのアンカー筋を挿入する穿孔を1週間かけて施工し、アンカー筋および鉄筋(D51、SD345)を設置後、鋼板と既設橋脚との間へのコンクリート充填、最終ロットの施工を行い、完成となる。準備工から足場組立、吊り下ろし用の天井クレーン設置、圧入用の反力用鋼板の設置など事前工事と合計すると「4カ月程度を要した」(同)。


工程図①


反力鋼板取り付け/補強鋼板の組み立て/同完了状況


補強鋼板の溶接状況/補強鋼板の圧入状況


圧入時のバキュームによる吸い込み/形状保持材を取り外し


工程図②、③


補強鋼板の組立完了状況/同溶接状況


クリアランスの洗浄を目視とモニターで確認


WJにより既存フーチングに補強部とフーチングを繋げるためのアンカー筋を挿入する穿孔を施工


コンクリート打設と鉄筋組み立てを繰り返していく


工程図④、⑤


工程図⑥、⑦


施工完了状況


 橋梁補修に際しては、吊り足場の架け払い作業がJRとの近接施工協議の対象となるため、列車見張員を配置した。また、補強施工時に地下通路内に足場を設置する必要があるため、一部通行止めを行っている。通行止めの告知は1か月前から予告看板を設置して周知し、開始後10日間は混乱を防ぐために24時間体制で交通誘導員を配置した。施工時の騒音対策のため住宅側には防音シートを配置して施工している。


 同橋は上下部本体工や壁高欄、地覆のコンクリート部分に浮きや剥離、伸縮装置や舗装にも各種の劣化が生じていることから、これらについてもひび割れ注入工(210m)や断面修復工(0.6㎥)剥落防止工(280㎡)、伸縮装置撤去および埋設ジョイント設置(72.5m)、床版防水(1,690㎡)、および舗装打替(1,880㎡)などを行う予定だ。

 補修設計は近代設計。元請は香山組など。下請はオリエンタル白石など。