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シリーズ「コンクリート構造物の品質確保物語」⑬

南三陸国道で行われる受発注者の協働思考  「コミュニケーションツール」を使って より良い構造物の実現を目指す

横浜国立大学
大学院 都市イノベーション研究院
准教授 
細田 暁 氏

 今回からは4回に分けて、東北復興道路の現場で従事している官民の技術者に焦点を当てて、取り分けコンクリート構造物の品質をどのように確保しつつ、橋梁やトンネルを作っているかについて聞くインタビューを掲載する。第1回は国土交通省東北地方整備局南三陸国道事務所で建設監督官を務める手間本康一氏に聞いた内容をまとめた。(聞き手•細田暁横浜国立大学准教授、編集・井手迫瑞樹)


1監督官につき最大で15本の工事を担当

 コンクリート打込みの立ち会いは8割以上

 ――まず、手間本監督官の普段のお仕事の内容から教えてください。 

 手間本 監督官にもよりますが、多い人で15本程度工事を持っている人もいます。但し、私は10本も無いくらいです。現場の監督官としては、施工状況の確認や把握のほか、施工者さんの相談を受けて、難しい判断をしたり、というようなことがメインです。

 ――今、南三陸のこの事務所には手間本さんクラスの監督官は何人おられるのですか。

 手間本 5人です。

 ――5人の主任監督官で南三陸国道事務所の復興道路の工事の全てを見ているということですか。

 手間本 そうです。


南三陸国道事務所の一室でインタビューは行われた。(左が手間本氏、右が細田准教授)


 ――南三陸国道の工事総額はどの程度ですか。

 手間本 平成28年度は補正予算も含めて、約631億円です。

 ――手間本さんが担当されている構造物はどのようなものがありますか。

 手間本 トンネルは今年担当外になりまして、今は橋梁を5つ担当しています。後は殆ど改良工事です。

――現場にはどれくらい出られているのですか。例えば1週間のお忙しい中で、現場にはどれくらい行かれるのですか。

手間本 段階の確認や、立ち会わなければいけない頻度は目安が決められていますが、私のサポートをしてくれている現場技術員さんがいますので、その人たちと手分けしながらです。私が全部行くと回らないので、私はコンクリートの打込みの時と、出来型の確認をメインで担当して、それ以外は現場技術員さんに見てもらうようにしています。

 ――打込みの時は毎回必ず行くようにされているのですか。

 手間本 出来る限り行くようにしています。実績としては8割ぐらいです。

 ――では、コンクリート打込みの施工状況把握もされているのですね。

 手間本 しています。


目視評価のためにも施工状況を把握

 その方が不具合時の原因推測がし易い

 ――その後の目視評価もされていますか。

 手間本 しています。但し目視評価(左写真)だけでは、出来上がりの結果を見ているだけですので、打込み時点での施工状況を把握し、しっかり頭に入れるようにしています。頭に入っていた方が目視評価した時に原因の推測がし易いですね。

 ――品質確保でいくつかのツールを私たちが活用していますけど、いわゆる施工状況把握チェックシートと、表層目視評価のツールについて、東北地方整備局の道路工事課にいたことから関わっておられました

 手間本 東北地方整備局の道路工事課時代には、「施工状況把握チェックシート」や「表層目視評価」など、主に品質確保・耐久性確保のツールを試行的に導入することに携わりました。南三国の監督官としては、そのツールを実際に使用し品質確保・耐久性確保を図ることになります。

 現場で実際に使用して思うことは、それだけが品質確保・耐久性確保の金科玉条ではないということです。ツールを画一的に用いることだけに固執するのではなく、状況に応じて技術者としての的確な判断があってこそ、品質確保・耐久性確保が図られるものと思います。私の現場では、これらのツールは施工者とのコミュニケーションに用いる意味合いが強くなっています。


合否判定ではなくコミュニケーションツール

 施工状況把握チェックシートや表層目視評価の使い方

 ――具体的に、どのようなコミュニケーションをされているのか、心がけておられるようなことも含めて少し教えていただけますか。

 手間本 施工状況把握チェックシート(左表)の方がコミュニケーションツールとしての意味合いが強いと思います。簡単にチェックできるように項目が簡略化されていますから。

 例えば(コンクリートの吐出面から打込面の高さで)筒先1.5㍍や、(バイブレーターの)横流しをしないとか、(バイブレーターを)10㌢入れる、とかありますけども、構造物の規模や物によって出来ないものもあります。出来ないから目くじらを立てて×とするのではなくて、「基本」を私も施工者も共通理解していれば、その中で実際に施工する時に一緒に見て、これはもう少し横流しをしない方が良いのかな、というような相談もし易くなります。 

 ――なるほど。チェックシートなので、いわゆるとか×がつきやすいというか、本来はつけるためのシートですよね。事前にできないことが分かっている時に施工者は相談してくるものですか。

 手間本 出来ないとはあまり言わないです。施工をしてみて、難しければ次善の対応をする、という所でしょうか。例えばボックスカルバートは、橋脚よりもかなり鉄筋量が多く、側壁の打込み時には下が全然見えない場合もあります。5㍍ぐらいの大きいボックスの側壁だと、当然ですけど見えない部分が4㍍ぐらいあります。鉄筋が125㍉ピッチで入っていると、層厚で50㌢打設したかどうかすら光を当てても見えないこともあります。

 これを施工状況把握チェックシートに基づけば、確認できないから×とするのではなくて、次にこれを見えるためにどうするか、ということを模索するようになります。前向きに使うことに意味があります。例えば、次回打込み時に、型枠の一部分を明かり取り用の透明型枠に変えてみれば、より効果的に層圧管理できるんじゃないかというような相談をするために使うわけです。

 ――そういうコミュニケーションというのは大体の現場でできますか。

 手間本 施工状況把握チェックシートの意味を監督官がわかっていれば出来ます。

 ――チェックシートは現場技術員も使うんですね。

 手間本 使います。施工者さんも使います。

 ――現場技術員とはコンサルの方ですか。

手間本 いわゆる設計を主としているコンサルタントではないです。工事監督支援として南三陸国道事務所と契約している、現場技術専門の人です。

 ――施工状況把握チェックシートを、PPPの方は使いますか?

 手間本 PPPも使っています。

 ――手間本さんの管轄下、すなわち橋梁が5つ程度と改良工事、その範疇の中で、発注者側で施工状況把握チェックシートを使う人の数は。

 手間本 私も含めて3人です。

 ――そうすると、南三陸国道事務所には全体で監督官が5人、現場技術員がそれぞれの配下に2、3人おられて、15〜20名程の方がチェックシートでチェックされるわけですが、そこへの浸透具合を、把握されている範囲でどういう風に見られていますか。

 手間本 他の方への浸透具合はあまりよくわからないというのが正直なところですけれども、私に限って言いますと、最初に山口県の施工状況把握チェックシートを見た時には、あの中身が分かりませんでした。コンクリート標準示方書に書いてある当たり前のことなのでしょうが、それすらわかりませんでした。

 ――きちんと理解して頂ければすごく良いツールなのですが。

 手間本 意味がわからないで使ってしまうと、○×をつけることだけに特化してしまいかねません。

 ――目視評価法については、十数分の研修動画を作成しました。それを見ると目視評価法の哲学が分かるようになっています。そうした研修ツールが(施工状況把握チェックシートにも)あった方が良いのでしょうか。

 手間本 (哲学の理解を助けるツールとして)あった方が良いと思います。

 ――分かりました。施工状況把握についても開発します。

 手間本 目視評価はPPPもやってくれるのですよ。私とPPPと、現場技術員と、現場に行って、一緒に見ています。

 ――先ほどの施工状況把握みたいに、みんなが上手く使いこなしているかという課題も含めて、目視評価法の方はいかがですか。

 手間本 目視評価法は浸透しています。結局は私もPPPも現場技術員も(構造物を)全部見ますが、何回も見て行けば当然見慣れてくるし、そうした目を意識されるのか、点数も良くなってきます。例えば、今はもう沈みひび割れみたいなものはほぼ見たことがないですし、下部工の梁の部分とか、型枠が動いてしまうと、豆板や汚れのようになるのですが、これは型枠が動いたんだね、というような話をします。その上で次に動かないためにどうするか方策を考えるわけです。