道路構造物ジャーナルNET

⑪後を引く施工不良と設計上の配慮不足

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市
建設技術管理監

植野 芳彦

公開日:2016.10.20

 民間と行政の双方を経験し、何が見えるか?書いてほしいとの話があった。執筆を引き受けたのは良いが全く書く内容に困った。しかし、これから大きく変化する、社会情勢の中で特に、何が今問題なのか?我々は何をするべきなのかを考える一助になればと思い書くことにする。技術的内容よりも、一般論に近いものとなる。書くに当たっては、批判も罵声も大いに結構である。さまざまな考えの方が居て当然であり、私の考えが間違っているかもしれない。大いに批判していただきたい。

1.はじめに

 8月31日に東京で行われた、土木研究所CAESARの講演会に出席してきた。500席満席で、皆さんの関心の高さに感銘した。講演中に演台から会場を見渡すと、懐かしい顔もたくさん見えて、うれしく思えた。その後の意見交換会においては、たくさんの方と話ができたが、みなさん、本連載を読んでいるとのことで、ありがとうございます。また、最近、さまざまな方が、この連載を読んでいるとのことで、励ましの言葉をいただいた。
 しかし、なぜかマスコミ、専門誌関係の方が居なかったのは、不思議だった。(本ジャーナルも含めて。)先日、土木研究所とRAIMSと富山市で、実橋を使った、現場での実験を行った。最近、富山市は、あまりよろしく無いことで、全国的に有名になってしまった。毎日のようにTVカメラが入ってきている。たまには、前向きのニュースを提供しようと、TV局などに声をかけて、現場に来ていただいた。しかし、取材はしてもらったが、ニュースの時間としては極々短く、本来の目的などは、あまり伝えられなかったのが残念である。こういった問題には、マスコミも興味が無いのであろう。たしかに、非常に伝えにくい。
 しかし、やはり、最近感じているのは、おそらく各自治体では同じような課題を持って悩んでいるのではないだろうか?これは、お互いに協力し、相談し改善していかねばならないと感じている。

2.NETIS

 ここでも何度か書き、日頃から声を上げて言っているのだが、NETISに関して、勘違いをしている方々が多い。「新技術活用情報」であり、「認証」ではないのである。「登録」なのだ。民間業者が、「認証された技術」と言う言い方をし、役所の人間がその言葉のとおり勘違いしている。危ういとしか言いようが無い。性能の保証も、耐久性の保障もされていない。
 最近の業者さんを見ていると、公共事業の仕組みすらわかっていないのではないか?と疑りたくなる。きちんと教育を受けていない方々が、上層部に座ってしまっているのではないだろうか? さまざまな面で、勝手に解釈しているのだ。基本的に、わが国では設計の基準は厳格に示されており、いわゆる「仕様設計」である。まだ、性能設計にはなっていない。さらに、積算体系もきっちり決められており、これにそぐわないものは使いにくいという問題点がある。これを業者さんが理解していない。かつて、基準類も積算体系も担当していたことがあるので、その手間と労力は筆舌に現しがたい。これを理解していない、業者が自分たちのマニュアルに「この技術の設計基準は、積算は・・・」とやるのだが、笑ってしまう。どれだけの労力をかけたのか?どこで、認められたものなのか? 設計の基準化にも積算の体系化にも、かなりの実績とその分析が必要であることが理解されていない。「設計例」的であり、「見積り」レベルだということが理解されていない。勉強不足、常識が無いとしか言えない。そもそも、その技術のリスクは誰が担保するのか?
 税金を使っている以上、やはり明確な根拠がいる。そのために会計検査も実施されている。会計検査で指摘され、その説明も明確に出来ないようなものは使いづらい。というか、使ってはいけないと考えている。問題を解決してくれれば、使っても良いが、そのためになにをするかも、営業であるし、企業戦略である。

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