道路構造物ジャーナルNET

シリーズ「コンクリート構造物の品質確保物語」①寺小屋から全国へ 

それはコンクリートよろず研究会から始まった「コンクリート構造物の品質確保とコンクリートよろず研究会」

徳山工業高等専門学校 
副校長 
土木建築工学科 教授 

田村 隆弘

公開日:2015.09.16

18回目を最後に休会
 今なお復活の要望が寄せられている

6.研究会の発展と休会
 平成16年に講習会を開くまで発注者側からの会員はいなかったが、この講習会に山口県土木建築部の二宮純審議監(当時は、主査)が参加して、配布したアンケートに熱心に質問を寄せられた。二宮氏からは「今後、山口宇部線でコンクリート構造物の試験施工を考えており応援してほしい。」という相談を受け、もちろん全面的な協力を約束した。
 この講習会以降、会への参加希望者がいっそう増え、会員数は70人を超える大所帯になった。建設会社や生コン会社、設計事務所、コンサルタント、セメントメーカーや化学混和剤メーカーなど多方面の関係者が集っており、中でもセメントや生コン製造関係者がこれほど多く加入を希望するとは予想もしていなかった。発注者は施工会社とはつきあいがあっても、セメントや生コン製造関係者とは面識がないのが常である。ましてセメントや生コン製造の世界で今、何が起きているのか知らない。この会によって、地方においても生コン製造者、セメントメーカー、骨材メーカー、混和剤メーカー、施工者、コンサルタント、発注者、そして、学がコンクリートを中心に繋がったことを強く感じた。
 研究会は約3年間の活動の後、第1回から数えると18回目の研究会を最後に休会になった。会員登録者数は73名で、1回あたりの平均会議参加者数は21.2名、1回の最大参加者は44名であった(図2)。休会となった理由として、参加者数が増えたにも関わらず運営体制を整えることが出来なかったことが挙げられる。私自身が多忙となってしまったこともあって、大勢の参加者にはご期待に大変申し訳ないことをしたが、今なお復活の要望が寄せられている。


図2 よろず研究会参加者数

そして大がかりな試験施工へ
 システム運用前後でひび割れ発生確率が改善

7.山口県の「コンクリート構造物のひび割れ抑制対策に関わる試験施工」
 講習会の後、山口県の二宮氏のリクエストもあって、コンクリートよろず研究会として山口県が行おうとする「コンクリートのひび割れ対策をテーマとした試験施工」を支援することとなった。
 山口県が主体となって実施した大掛かりな試験施工は、二宮氏が担当した自動車専用道路関連のコンクリート構造物に多数のひび割れが発生し、施工者からの要望で実施される運びとなった。(山口県の試験施工やひび割れ抑制対策に関する情報は、末尾に挙げた山口県のホームページ他、関係業界紙、論文等で公表しているので参考にされたい。)
 ボックスカルバート頂版に軸方向に走るひび割れや橋台たて壁を貫通する温度ひび割れがなぜ発生するのか、防ぐことはできないのか、各種メーカーの提案する対策工法の効果は、といったことは、実は多くの工事関係者が疑問を持っているにもかかわらず、その答えについてはよくわかっていなかった、というのが実態であった。
 平成17年の試験施工(写真14,15)の後、その成果を基に平成18年には試行施工を行ったところで、実はこの取組みがPDCAサイクルを形成する一つのシステムとなっていることに気付いた(図3)。蓄えられたデータを分析すると、このシステム形成以前に建設した構造物とシステム運用後の構造物では明らかにひび割れ発生確率が改善されていた。試験施工によってこれまで疑問に思っていたひび割れの原因が理解できたり、ひび割れ対策の効果が明らかになったりしたことは工事関係者のモチベーションを高めることにも繋がっていった。建設現場では、ひび割れ対策を意識した工事が行われるようになり、県が工事関係団体と共同で開催する講習会には大勢の参加者が聴講に集まった(写真16)。


図3 ひび割れ抑制システム

写真14 山口県が試験施工を行った総延長248m(19ブロックから成る)ボックスカルバート。
この他にも橋台や橋脚で試験施工を行った。


写真15 ひび割れ抑制した構造物
(25m幅の橋台たて壁に発生するひび割れの幅を補強鉄筋による対策により0.06mm未満に制御した)


写真16 山口県の研修会(600人以上が参加)

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