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第53回『コロナ後には新たな建設の時代が来る。一緒に取り組みましょう』

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市
政策参与
植野 芳彦 氏

1.はじめに 

 1回休みました。復活します! 4月1日付けで富山市から、「政策参与」の委嘱を受けました。引き続き富山市のインフラに関し助言をしてまいります。と言いたいところが、新型コロナウイルスのおかげで、予定が大幅にくるってしまい。プーになってしまった。まあ、私がいなくなることを期待していた方々にはよかったかもしれません。

 この役職、非常勤で、自由な身分である。このほかにも仕事を持つことが許されている。まあ、コロナ騒ぎで世の中停滞してしまってますが、喪が明ければ建設分野は、真っ先に動き出さなければならない分野である。何かありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。


2.コロナウイルス

 これを書いている現在は新型コロナウイルスの件で日々、人々が自粛生活を行っており、ストレスが溜まっている。ウイルスの恐怖と自由な生活ができないという、停滞ムードである。医療機関の方々、はじめ多くの方が大変な思いもしている。医療関係者の方々に感謝したい。また、それぞれの立場立場で対応されている方々もご苦労様です(私はプー!)。

 今回明確になったのは、我々は危機管理の時代に突入したわけである。「非常時」なのである。歴史から見て、我が国は危機管理や、非常時の対応がうまくいかない。それは第二次世界大戦の敗戦で、本来学習されているはずなのだが、どうも古い考えで動いている方々が多い。権威や権力、威信などどうでもよいと思うのだが、なかなか人によっては難しいようだ。

 インフラのメンテナンスはよく、医療に例えられるが、同様の危機感が本当は我々にもある。こちらも、本来かなり深刻な問題であるが、一般の方々はまず何も感じていない。専門家と言われる方々においてもかなりの温度差と、「この人は本当に理解しているのだろうか?」と疑いたくなる方々が多い。ウイルスは見えない。老朽化も見えないが、老朽化が見えないのには理由があると私は感じている。そもそも、皆さん土木に興味がない。日ごろ使っているインフラに対して興味がないのである。まちづくりや、デザイン、景観には興味があるがハード面には興味がない、かかわりたくないという風潮が強いのではないか?大学などで、講義を頼まれると、試しに何を将来やりたいか聞いてみる。すると、ほとんどが、デザイン、景観、まちづくり......環境、マネジメントである。わたしだって、街づくりや景観をやりたかった。

 今回の件において、「地域医療」のキャパシティから、医療崩壊が大きな不安要素になっている。何でも限界が存在することが、今回実証されたと感じる。つまり、これまで、当たり前だったことが限られた資源の問題から、限界に達してしまう。「ヒト・モノ・カネ」の問題である。まさに、老朽化問題も同様である。「医療崩壊」ということが言われだしているが、老朽化問題は現実的にはすでに崩壊していると言ってもよいのではないだろうか?まずは予算が圧倒的に足りていない。しかしこれは技術者の責任ではない。そして、設備、道具などの資材や防護設備などの「モノ」の不足。そして、最大の不足が「ヒト」の問題である。ヒトも「数と質」の問題がある。


 第1ステージが終了し、全国で、ほぼ1割の橋梁にⅢ評価がなされていた。つまり、全国では約7万橋の橋梁に対し早急に補修などを対処しなければならないこととなっている。富山市の場合も、ほぼ同様で2,200橋のうち、ほぼ大まかに200橋がⅢであった。よくこれも、「正確に言え」という方もいるが、そんなことは意味がない。今回の、新型コロナウイルスでも、日々の発症の数値データばかりを皆気にしている。PCR検査が十分でない中では、実際の数値はあてにはならないと思うがいかがなものだろうか? この富山の約200橋のⅢであるが、では実際に1年間で予算をかけて対処できる橋の数は? というと、現在の状況で、15橋程度しか対処できないのである。このペースで、現在のⅢを治していくだけで13年以上がかかる。高度成長期の1970年代にかけられた橋は、その時の寿命50年を超えてくる。するとどうなるのか?そうならないように、「予防保全」ということが言われてきたわけであるが、もう遅い。まずは、圧倒的に予算が不足しているのである。とりあえずは「カネ」の圧倒的不足である。

鋼橋の損傷状況

 次に、「モノ」であるが、有効な補修材料や方法がないのが現実である。新型コロナウイルスでも治療薬が確認されていない。検査体制もできていない。これと同じ戦いを、老朽化でもしているのだが、皆さんこれが、よくわかっていないようである。私は30歳ぐらいの時に肺炎になったことがある。ものすごく苦しかった。息ができないのである。それで抗生物質の投与でよくなったが、何種類か投与された。先生曰く「肺炎菌に合った、薬が投与できればすぐによくなるのだが......」である。ここでも、私論であるが、原因究明ばかりに時間を割くと、死んでしまうかもしれない。わからないがやってみるというのも立派な治療法であると思う。まあ、これを無駄だという意見もあるだろう。

 

 今、老朽化問題を見ていると、まず点検の精度に疑問があり、診断の判断にも課題がある。よく「このひび割れは●●と推測され、✖✖で対処すれば......」ということで、ひび割れ損傷図を一生懸命書き、0.2mmのひび割れを気にして、対処法としては、「水の侵入を止めるために、ひび割れ注入、防水層......」ということを打ち合わせで語る。しかし、すぐそこにある、20mmはおかしいだろうと思う。それが、どう全体に作用しているのか?致命傷ではないのか? なぜそうなったのか? を課題として詳細調査の必要はないのか?そして、どうゆう補修の可能性があるのか? 現実的にできるのか?そもそも、補修材料のほとんどは、日本では開発できていない。また、評価もできていないのであることを、わかっているのか?NETISでどこまで保証しているのか? 「上を向いて歩こう! 見上げれば損傷が!」コンクリート片が落ちてくるかもしれない。

「上を向いて歩こう! 見上げれば損傷が!」コンクリート片が落ちてくるかもしれない