道路構造物ジャーナルNET

第51回 敵を知り、己を知る

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市
建設技術統括監

植野 芳彦

公開日:2020.02.16

1.はじめに 

 前回、「帰る。帰る。」と書いたら、「帰る感満載だ!」と多くの方から叱られた。しかし、これは、実は戦略の一つなのだ。まず、皆さんに考えてもらいたいのは、ここに単身赴任で6年いるということである。
 これが若い時の6年ならばまだしもである。それは置いておいて、職員たちに、もうすぐいなくなるということを知らせたい。有限であるという危機感である。最初は3年であった。物ごとは「期限付きだ!」ということが重要である。その間に、どうするか? 従うか従わないか? は本人たちの判断であるので、私がどうすることもできない。

2.戦略

「もう帰る」という戦略! これは、「有限だ! 時間がない!」ということを暗に言っている。いつまでものんびりやっていれば、時間が無くなる。特に、私のような怠け者は、時間があると思えばぎりぎりまで先送りしてしまう。学生の時の一夜漬けが良い例であり(一夜漬けさえもしなかった)、社会に出ても、期限ぎりぎりまでなかなかやれない。この原稿も、書く気さえ起きれば、あっという間に書けてしまうのに、なかなか気が乗らなくなってきた。どうも、怠け者の気質は治らない。
 インフラの老朽化対応は、まさに、いつ終わるかわからない長期戦を覚悟しなければならない。さらに、野放しにしておくと、敵の数は増え続けるのである。敵の数が多ければ多いほどこちらは不利になる。できれば、減らす方策が必要であるのだがどうもこの辺が、皆さんわからないようである。


老朽化する構造物は増え続ける

 皆さん、老朽化の本当の問題をわかっているのだろうか? 本来は、我々に与えられた時間は少ないのだ。戦略上、非常にまずい。そもそもが辛い戦いである。
 戦略の基本の一つに、「戦いは長引けば負ける」というものがある。特に限られた資源をもってして、戦わなければならない場合は、長期戦は不利になってくるのである。しかしそれをやらなければならない。だから期限を切る必要がある。長期になり疲れてしまわないように。細かく時間を分け、疲弊しないようにしていく方策が必要である。
 さらに、アメリカの例を見てもわかるように、特定財源を復活させ、解決しようとしても、いまだに落橋などが起きている。それに比べ、我が国ではそういった手が打てずにいるにもかかわらず、全数一律に守ろうという無謀と言うべき戦略をとっている。
 戦略でまず大切なことは、「最悪の事態を想定すること」である。最悪の状態が予測できれば、それに対応する手段を考えておけばよい。しかし、これも危ういというのが、最近の感想である。ということは、結局、インフラの老朽化という敵には、我々は負けてしまいかねない。
 最近、よく聞かれる話題は、「地方自治体の状況がよくわからない」「職員の教育をどうしたらよいのか?」「新技術の採用をどうしたらよいか?」という3点である。つまり、地方自治体の本当のところは、皆さん見えていない。さらに、戦力が不足している。武器もない。これでは勝ち目はない。その勝ち目のない戦いをしなければならないのが私たちなのである。
 マネジメントや戦略とは、一言でいうと「何とかすること」だと考える。どうしたら、何とかなるのかを考えて実行することである。しかしそこには、さらに条件が付いている。限られた資源で実行しなければならない。これまでのやり方では、対応は困難である。

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