道路構造物ジャーナルNET

④海中基礎の防食あれこれ

現場力=技術力(技術者とは何だ?)

株式会社日本インシーク
技術本部 技師長

角 和夫

公開日:2020.01.01

2.関西国際空港連絡橋 鋼製橋脚の防食

(1)腐食環境
 関空連絡橋の防食設計を行うにあたり、昭和60年度に架橋地点近傍(泉南・樽井)において飛来塩分量の調査を実施。12月以降の冬季においては日当たり200mg/m2と沖縄の観測値を大幅に上回ることが判明した。
 
(2)防錆・防食工法の選定
 過去の施工例や本四公団の基準、アクアラインの計画案および港湾施設の基準等を参考に防食工法を選定した。特に、水中部、干満帯・飛沫帯部の防錆・防食工法について紹介する。

(3)海中部の防食
 一般的な防食工法であるタールエポキシ樹脂塗料による塗装とアルミ陽極を用いた流電陽極方式による電気防食とした。陽極の耐用年数は30年と設定。

(4)干満帯・飛沫帯の防食
  干満帯・飛沫帯(T.P.-2m~T.P.+5m)の防食は、船舶衝突に対する防護も兼ねて以下の通りとしている。

  ・耐用年数; 100年
  ・防食構造; 3重防食による複合防食
  ・仕様;
     第一層  超厚膜型エポキシ樹脂塗装(1,000μm)(耐用年数30年)
     第二層  犠牲鋼板(t=28㎜)(耐用年数60年)(飛沫帯で孔食0.5mm/年)
     第三層  (鉄筋)コンクリート(t=500㎜)(耐用年数10年)


(左)図-7 鋼製橋脚防食構造  /(右)図-8 鋼製橋脚鳥観図


写真-5 鋼製橋脚防食構造 

3.東京湾アクアライン 鋼製橋脚の防食

 アクアラインの鋼製橋脚では、干満帯・飛沫帯の防食工法として「チタンクラッド鋼板」が採用されている。チタンクラッド鋼板は、鋼板(t=4mm)とチタン板t=1mm)との間に銅を挟んで一体圧着している。図-9参照。


図-9 チタンクラッド鋼板による防食

4.東京国際空港 D滑走路ジャケット

 D滑走路の桟橋部ジャケットの防食は非常に特徴的なものとなっている。仕様を以下に示す。

  ・仕様(図-10参照)
   鋼桁下面、側面 ⇒チタンカバープレート(海水による浸食から守る)
   ジャケットレグ(鋼管)のスプラッシュゾーン ⇒耐海水性ステンレス鋼ライニング
   海水中のジャケット ⇒電気防食
   鋼桁内面(床版下面とチタンカバー間2.5m) ⇒除湿器


図-10 チタンクラッド鋼板による防食(SCOPE NET VOL.58 2010 SPECIALより引用)

5.最後に

 大鳴門橋多柱基礎の防食工法は平成15年度の橋梁維持課長時代に考案した。関空時代は土木研究センターに委託し、結成された委員会により各種防食工法が検討され「3重防食」が採用された。その後、地公体を含む色々な機関や韓国仁川空港理事長などが視察に来られ対応した。丁度、東京湾アクアラインの構造検討が行われていた頃である。関空、アクアラインと防食構造には一長一短あるが、今どちらかを選べと言われれば間違いなくノーメンテナンスの実現性が高いチタンクラッド鋼板である。検討当時(約33年ほど前)はチタンの単価が非常に高かったこと、防錆・防食の他に船舶衝突も想定する必要があったこと、チタンの溶接が難しいこと(東京湾は圧着工法)、等から3重防食が選定された。
 では、大鳴門橋ではどうか。16年前を反省してみる。大鳴門橋の防食の条件は、①既設の鋼管の防錆・防食であり、水中施工が必須、②台風時等には流木等がかなりの流速で衝突することから保護が必須、③鋼管の周長が21mにも達し、施工性が極端に悪い、ことから現工法が最適であったと考える。
 さらに付け加えておくとチタンカバープレートの製作、溶接をプロの技で仕上げてくれた会社がある。小倉にある「株式会社山一製作所」。チタンの溶接はTig溶接が一般的だが、失敗をするとチタン板が燃えてしまう。技術の高さに圧倒された(写真-6に当時記念品に頂いたチタンのマグカップを示す)。16年程経過するが良い艶が出てきた。
 最後に、鋼構造物の干満帯・飛沫帯の防食は非常に重要である。点検や補修もしづらいことからなるべくノーメンテナンスを実現する工法の採用が重要である。
(2020年1月1日掲載、次回は2月1日に掲載予定です)

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