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⑤アルカリ骨材反応(3)

次世代の技術者へ

土木学会コンクリート委員会顧問
(JR東日本コンサルタンツ株式会社)
石橋 忠良 氏

 前回、アルカリ骨材反応を生じさせないための対策について話をしたが、今回は、これらのアルカリ骨材反応の生じた構造物の安全性はどうなっているのかについての話をします。


1.コンクリートの強度が半分程度になると、鉄筋コンクリート構造物の強度はどうなりますか

 無筋コンクリートは、割れてしまうと強度は低下するが、ここでは鉄筋コンクリートなど鋼材で補強された構造の話をします。

 鉄筋コンクリートは、曲げ耐力とせん断耐力、ねじり耐力、疲労耐力などについてそれぞれ安全性を確認することが必要となります。アルカリ骨材反応の生じている変状構造物からコンクリートコアを取って、圧縮試験をすると、初期から比べると半分程度にまで低下した値となっていることもあります。鉄筋などの拘束が無くなるなどの影響もあると思われますが。

 しかし曲げ耐力は、桁高を極端に小さくした構造物でない限り、コンクリート強度が半分になってもほとんど変わらないことをご存知ですか。皆さんの扱っている鉄筋コンクリートの構造物で、計算してみてください。経済的な設計をしている構造物は、コンクリートの応力度を余らしても、鋼材を少なくするほうが合理的なのです。コンクリート強度は、荷重によって決まっているのではなく、耐久性の最小水セメント比の制限で決まっていることがほとんどです。そのため強度が半分になっても曲げ耐力はほとんど変わりません。



表-1 土木学会コンクリートライブラリー118より


 表-1はスパン10mのスラブ桁の設計の例です。鉄道用の例ですが、曲げモーメント、せん断、ねじりのうち、曲げモーメントにて構造物の安全性が決まっています。安全率を1になるようにコンクリート強度を逆算すると、曲げ耐力に必要なコンクリート強度は7N/mm2となります。永久荷重時にコンクリートの曲げ圧縮応力度を0.4f‘ck以下とすることから定まる強度は13N/mm2です。

 実際の設計基準強度は27N/mm2となっています。実際の構造物のコンクリート強度が約半分になっても、耐荷力上は十分安全なのです。これはコンクリートの応力度が余っても、鋼材を少なくするほうが構造物として経済的だからです。

 コンクリートの設計基準強度は、かつてはこれほど大きくはありませんでした。生コンを使うことが標準となり、生コンの注文を強度とスランプで行うからです。耐久性から定まる水セメント比とスランプを満足する生コンの呼び強度を選ぶと、24あるいは27N/mm2となってしまいます。設計基準強度と、生コンの呼び強度を変えるのは混乱するので、設計基準強度を生コンの呼び強度に合わせるようになってきたのです。生コンの値段は、強度とスランプの組み合わせで決められているからです。

 

 材料を研究している研究者と現場に行くと、コンクリートがいろいろな原因で劣化しているのを見ると、大変だと言われることが多いのですが、構造物の設計から見るとコンクリートの劣化が鋼材腐食に影響していなければ、耐荷力の心配はあまりありません。構造物の耐荷力としては、コンクリート強度がかなり低下しても、構造物の曲げ耐荷力はあまり低下しません。しかし鋼材が腐食で断面減少すると、その減少分だけ曲げ耐荷力は落ちます。鉄筋コンクリートの曲げの強度は、鋼材が死命を制しているのです。