道路構造物ジャーナルNET

㊻「第2ステージ」の在り方

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市
建設技術統括監

植野 芳彦

公開日:2019.09.16

3.民間等との連携の重要性

 第2ステージでは、一部ドローンが認められたということであるが、これは、良いことである。ドローンのように、民間の先進技術を維持管理の現場に導入することは、今後重要なことである。しかし、ドローンはカメラを運ぶ技術であるということを認識する必要がある。富山市においては、ドローンは、あまり使用していない。ドローンを使うなら、本当のドローンの専門家にやってもらわないと、また手抜きや見逃しが起きる。
 モニタリングシステムの活用や、3Dレーザースキャナーなど、現在、民間企業等と共同で様々な実証試験を行っている。点検や監視のための新技術、補修補強のための新材料新工法などに関しては今後も「実証」が重要要素である。このためのフィールドを提供し、共に確認を実施していくことがマネジメントの基本だと考えている。


 ここで、述べたいことは、橋梁等の構造物の点検や補修において、「大変だ」と嘆くのではなく「工夫して取り組むこと」が重要である。世の中では、様々な新技術・新工法が報告されているが、筆者が考えるに「実装のための実証」が必要である。公共事業に新技術・新工法を採用していくためには、それなりの効果の保証が必要である。税金を投入し実施するので、安易な気持ちで採用することは、発注者として控えなければならない。そのためには判断材料となる、実際の現場での実証があることが重要と成るので、富山市では、現場を実証フィールドとして提供している。実証にて効果が得られれば、富山市としても積極採用を行っている。現在、10数グループ(大学や研究機関、ゼネコン、コンサル 等)と協定を締結し実証試験を実施している。しかし、やってはいるもののその価値に気づいているものは少ないのではないか?「〇〇市の現場での実績がある」ということが2番手からは重要なのだ。机上ではなく、実際にやったところである。論文の共著や学会での発表もしてもらって構わない。「富山市での実績」ということを堂々と述べてもらって構わない。そこに、価値がある。研究室や大学、コンサルのアドバイスでやったというのとは価値が違ってくるはずである。
 業者の中には、「NETIS」に登録済ということで、自信満々に提案される方もいる。努力は認めるが、内容の保証と責任の所在が不明確な場合が多いので、それだけでは採用は難しいと考えている。個人的には、公共事業に導入するには、「技術審査証明」程度の認証は必要であると考える。しかし、これには時間と労力が相当かかることから、公的な場所での実証ということが重要であるのではないだろうか?

 かつて、「技術審査証明」や「公募型技術評価」などの担当をしたことがある。民間側は、これを取得するのは大変である。お金もかかるし厳しい審査を受けなければならない。それだからこそ信頼できるのである。NETISはそうではない。この違いがあることも知らないようでは新技術を語る資格はない。しかし、意外に知らない者が多い。民間で勝手に採用するのと、公共事業で採用するという、重みの違いがあることも認識が必要である。かつて、技術審査証明や技術評価制度を担当した時には結構大変であった。提案企業の愚痴も聞きながらまとめていったが、途中であきらめて、取り下げる企業もあった。
 ここで、危険なのは、新技術を使えば、課題が解決するか?というとそうではない。点検系の技術は、そのあとの技術的判断(診断)が重要であるし、補修系の技術は何をどう使い、どういう結果になって、その後何年かは安心できるか?ということをきちんと技術者が判断することが重要である。
 この辺をいかに確認し評価していくのかということが、第2ステージにおける課題ではないだろうか? 点検も行いながら、次の補修の評価を行わなければならないということである。

4.実装のための実証の重要性

 今後、診断結果がⅢのものは、速やかに手を入れなければならない。ここで問題だと感じているのが、コンサルに補修設計を委託し、上がってきた材料・工法で実施しているわけだが、その有効性である。再劣化までの期間が問題。補修を行ったから、それで終わりだとは、まったく思っていない。補修の新たな履歴が始まっただけで、今後どういうサイクルで補修が必要なのか?が重要である。再劣化の期間が短いと、財政的にかなり厳しい状況に陥る。どんなに短くても5年間は再劣化がないようなもの以上が必要である。その評価をどうするか?

 ここで、職員やコンサルはどこまでその材料や工法を理解し、判断して使っているのか?ということである。5年たった、補修したものもそれなりの数になってきたと思うので、この辺で各材料や、補修後の再劣化状況の評価をすべきであろう。
そして、これが系統だって、公平にできるのは役所と大学だけである。地域性もあるだろう。施工条件もあるだろうが。さらに、施工性や使用性などの付加要素の判定もしていくべきである。私が危険視するのは、役所はコンサルに頼りすぎているという点である。頼るのは構わないが、責任はだれがとるのか?まで考えているか?これまでどおりの、うやむやが通じればよいが。いつも言うが、日本のコンサルの最大の欠点は現場を知らないことである。これを言うと反論もあるが、私が感じるところで、現場の勉強経験が足りない。わからないことも、平気で言う。

 先日も、こちらであったが、「設計瑕疵」というものを問えばどうなるだろうか?大体、設計・施工の瑕疵責任期間は10年ぐらいが一般的である。これを、補修に適用すると、世の中騒然となるかもしれない。だから、わからないことを言うなというのである。どこまで補償できるのか? 役所の人間は、コンサルが言うことをすべて信じるなということ。
 ここ富山市では、私の言うことは聞かないがコンサルの言うことは信じてしまう。私は信頼がないのだろう。コンサルさんは大したものである。だから、もはやいる必要を感じない。しかし、技術者として考えたときにどうなのか? 担当者が、自分の意志で判断したものならば、それだけの価値がある。誤った判断でも攻めるつもりはない。きちんと考えて判断しているのか? というところが重要になってくる。みな真面目に対応しているのだと思うが、経験の少ない者、何も考えない者は、虚偽の話でも信じてしまう。その技術の担保が、実験室レベルなのか? 現場レベルなのかも重要ある。

 だますつもりがなくても、わからないことはわからないという必要がある。「よくわかりませんが、現状ではこれが……」「実際にやったことはないのですが……」というのが正解値である。

 補修材料や補修・工法は難しいのである。作ったこともないやつが、補修はできない。補修材料の根本はどこで開発されたものなのか?これがわかっていますか? 意外と、日本製ではなく海外。
 まだ、第2ステージなので、いろいろ試せる時期である、この時期に第1ステージの反省も行い、様々な手法や、材料・工法を試していくことは許されると思う。ただし、将来を見据えてである。今後、今のままの状況では、膨大な補修費が発生していくことも考えなければ。直接の補修費+再劣化のための再補修(これの繰り返し)である。これが長寿命化の盲点。どこまで生かすのか?それを見極められる技術力が必要なのだ。

5.まとめ

 これを言うと、怒られるかもしれないがあえて警鐘を鳴らす。現在の点検は、ひび割れを気にしすぎている。これによって、補修もひび割れ補修が中心となっていて、おそらく、これを続けていると膨大な費用が必要になるだろう。しかも、このひび割れ補修、材料も工法も数種類あるが、効果と耐久性の評価がなされていないで実施されている場合が多い。水の侵入を防止するという意味合いからは、まあよいであろう。しかし、数年で再劣化する可能性がある。水を止めるという行為も、本来相当困難なはずであるが、お分かりか?

 最近、講演を頼まれ話す前によく「また、コンサルの悪口、出ますか?」と聞かれる。これは、期待と批判の両方ととれるが、世の中でコンサルに対する苦情もよく聞く。どっち側の人間と、交流を持っているかで、伝わってくる事柄は、違ってくるものだと考えている。やはり、日本のコンサルは現場を知らないから、様々な問題を抱えている。だから、ダメだと、一概には言えない。ただ、さまざまな、事象は現場で起きているのである。コンサルさんももっと現場に行けばよいのだ。ぜひ頑張ってほしい。

 我々は実務家であり、学者でも政治家でも評論家でもない、真実を伝えることが、世の中の役に立つことだと考える。ここで、私が、もっと利口であれば、保身のために、ものごとを隠したり、口を閉じているのだろうが、それでは面白くない。“裏”をとるということも、これまで、だいぶ、様々な場面で、裏切られたり騙されたりしているので、必要なことだと考えている。人間、信頼しあうのが一番なのだが、その気がなくても結果的にそうなってしまう場合がある。しかし、コンサルの補修設計はそういう次元ではない。どこまで知見があるのか?実際にやったのか?が重要なのであり。世の中にはきちんとやっている方々もいるのである。しかし、口先だけでごまかそうという輩も多く、そういう輩は、いつかぼろを出す。わかったときは逃げているので注意が必要だ。だから、その場その場できちんと対応していくことが重要なのだ。構造物に不都合が起きるとき、コンサルさんだけが悪いわけではない。施工も悪い場合もある。管理が悪い場合もある。コンサルさんは、設計という上流の部分を担当しているので責任も重い。施工業者が、きちんと管理していない場合も多い。これは、今までそれで通用してきたからなのだろう。

 第2ステージは、手抜きのステージではなく、確認と評価のステージである。第3ステージに向けての。維持管理は、ブラックホールみたいなものなのかもしれない。入り込んだら永遠に逃れられない。我々は、そこに踏み入れたばかりなのである。脱出するには、それなりの方策が必要である。
 世の中では、様々な役割分担や考え方があるので、生き方の問題であるのだが、わたしは、自分でやってみたことしか信じない。自分の失敗は宝だと思っている。ここでの取り組みも、人生も終盤である。納得のいくことをやっていきたい。
 残り6ヶ月半・・・・!!
(次回は2019年10月中旬に掲載予定です)

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