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シリーズ「コンクリート構造物の品質確保物語」㉛

過酷環境下で供用されるコンクリート構造物の耐久設計の難しさ

横浜国立大学
大学院 都市イノベーション研究院
教授
細田 暁 氏

1. はじめに

 前回「東北地方におけるRC床版の耐久性確保の手引き(案)(2019年試行版)」の特徴について説明した。今回以降は、筆者を含め、この手引きの策定に関わったメンバーにより、手引きの具体的な内容や、東北地方で今後も課題であり続けると思われる十分な凍害抵抗性の確保について、解説していきたい。

 今回は、耐久設計の難しさについて、筆者の体感してきたことを踏まえて論じたい。特に、東北地方のRC床版のように、過酷環境下で供用されるコンクリート構造物の耐久設計の難しさについて、現時点で筆者が考えることを述べる。

 まず、手引きのタイトルにも含まれている「耐久性確保」とは何か。RC床版の耐久性確保とは、目標とする期間において、RC床版に生じ得る各種の劣化が目標とする水準を超えないようにするためのあらゆる行為の総称、と考える。あらゆる行為を総動員しなければ、RC床版のように過酷な環境で供用される部材の耐久性確保を達成することはできない、というのが筆者の認識である。耐久設計とは、そのような困難な耐久性確保の行為の中の極めて重要な要素である。


2. 供用される環境を想定することの難しさ

 「想定外」という言葉がよく取りざたされるように、設計における前提条件を適切に想定することは容易でなない。そして、実際の作用が設計における想定を超える場合や、施工時の品質が所要の品質を備えていない場合に、構造物の劣化はいとも簡単に発生してし得る。

 本稿の対象は、場所打ちRC床版である。過去に施工された場所打ちRC床版に土砂化等による劣化が多発しているため、何らかの改善が必要であることは言うまでもない。近年は防水工がなされているために、水の悪影響はかなり低減されている、という考え方もあろう。しかし、筆者らは、現在の国交省の標準的な仕様であるシート防水が必ずしも十分に機能していない、すなわち防水機能が完全ではないという前提でRC床版の耐久性確保に取り組む必要性を訴えている。防水機能が完全でないと考える理由は、現実の施工時に完全な防水機能が確保できないことが少なくないことと、アスファルト舗装の切削オーバーレイの際に床版上面をはつるため、その後の防水機能の確保は容易でないことである(写真1)。防水工が劣化を抑制する効果を有することを否定するものではないが、防水工に依存し過ぎたRC床版の耐久設計を行うべきではない、というのが筆者らの見解である。


 防水工の防水機能が完全ではない、という前提に立てば、RC床版の耐久設計の考え方は根底から変わらざるを得ない。床版上面は凍結抑制剤を含む水にさらされる、と考えて耐久設計を行わなければならない。場合によっては床版を貫通するひび割れや、床版上面の微細ひび割れが存在する状態で、床版上面が凍結抑制剤を含む水にさらされる状況を想定しなければならない。
 手引き(案)は100年間の供用期間において耐久性を確保できることを目指して策定したが、真に100年間の耐久性が発揮されることは全く容易なことではないと考えており、これは策定に携わったメンバー一同が共有する認識である。