道路構造物ジャーナルNET

⑦【番外編】髙木氏のメッセージを受けて~今僕にできること~

若手・中堅インハウスエンジニアの本音 ~マネジメントしつつ専門的知見を得ていくために~

愛知県東三河建設事務所
道路整備課(事業第三グループ)

宮川 洋一

公開日:2019.08.01

地方自治体における技術職員の役割

 私自身が地方自治体の技術職員であることもあり、これまでの投稿のたびにもこのテーマについて持論を述べておりました。私たちは一般の市民・県民の方々から、将来に向けてインフラ資産を任された、土木構造物に関する専門家です。
 経験のある先輩職員が次々と退職されたあと、先輩たちの整備された、数多くの既設橋梁については、多年代にわたる設計基準や仕様、様々な形式、架設条件、供用条件など多岐にわたっています。これらについてもメンテナンスや更新が必要となります。個々の橋梁について、メンテナンスをして使い続けることができるのか、部分的に更新するのか、はたまた架けかえが必要なのか、数多くの様々な判断をしていかなくてはなりません。
 将来のあるべき姿を見据えながら、現在の状態や、機能、耐荷、耐久性、文化的価値なども含め、的確に評価できなくてはなりません。
 新たな課題を解決するため、新しい技術や工法などについては、メリット、デメリットなどをしっかり理解した上で、少しずつでもチャレンジして試していかなくてはいけないところがあると思います。地道な試行錯誤の積み上げでしか、進めることはできないとも思っています。
 また近年、異常気象などによる災害が頻発しております。令和の時代に入っても、いつかどこかで、発生するかもしれません。
 私たちはこれまでに経験したことのない時代に入っていると言っても過言ではありません。これまでどおりのやり方ではたちゆかなくなってしまうことも、併せて認識しながら、手持ちの駒を総動員して対応していかねばなりません。
 偉大な先人や髙木さんには教わらなくてはならないことが、まだまだたくさんあります。

道路構造物ジャーナルNETの連載執筆について

 井手迫さんには申し訳ないのですが、これまでの髙木氏や富山市の植野氏の連載執筆間隔は負担が多かったのではないかと推察しております。かといって私自身、髙木さんや植野さんの替わりができるはずもありませんし、現在の状態では通常業務を抱えた上で今以上の執筆間隔はなかなか困難です。
 道路構造物ジャーナルNETの執筆は、私自身がそうであるように、他の大先輩の足下にも及ばない私が、おそれ多くも、経験したことのある範疇に限り、業界の同志に対して、発信することができるとてつもないチャンスであることに間違いありません。この点からしますと、執筆をチャレンジしてみたいという人は少なからずおられると思います。
 たまたま仕事を通じて井手迫さんと知り合い、執筆を依頼されたことは、私にとってとても幸運でありました。
 引き続き、私の周りの名古屋高速道路公社や名古屋市、愛知県職員などへ執筆の働きかけを行っていきたいと考えております。

「あいち橋の会」

 私は今、かつて橋梁を経験した職員の仲間とともに「あいち橋の会」という組織を立ち上げ、運用しようとしています。


「あいち橋の会」ロゴマーク

 先にも述べましたが、現在、愛知県の現場最前線で橋梁を担当する職員は、近年の人員削減で人手も少なく、新設橋梁の設計・施工の経験も少ないうえ、維持管理の時代の到来により、過去からの数多くの橋梁についても、設計基準やタイプも多岐にわたるなか、その補修や補強について、適切な判断を迫られている状況にあります。自らの担当する管内橋梁以外にも、他課の橋梁、管内市町の橋梁についての技術相談も対応することになっていますが、必ずしもこのようできているとは言えない状況にあります。(このあたりは第一回目の投稿に詳しく書きました)
 判断や対応を早急に迫られる案件も少なからずあり、国やJH、公団、公社などのノウハウや策定される基準を待っている訳にもいきません。さらに市町村においては、県から古い橋梁を管理移管されるも、廃止することもできず、技術職員も少ない(いない場合もあり)ため、もっと顕著であります。
 設計を担当するコンサルタントや、施工を担当する業者も経験が少なく、「よくわからないが誰に聞いて良いのかもわからない」と困っている方もいます。私もそうでした。
 一方で愛知県には、かつて多くの橋梁を設計・施工してきた職員の存在があります。かれらは愛知県の資産とも言え、有効に活用ができないかと常々考えてきました。
 そこで、かつての橋梁を経験した有志職員に、自ら経験した橋梁や、年代、工種、得意分野などを書き添え「あいち橋の会」に登録していただき、橋の経験が少なく困っている職員から、気軽に相談を受ける存在になってもらうことから始めようと考えました。


「あいち橋の会」設立主旨

 「あいち橋の会」メンバーは通常業務に支障のない範囲で余力のある時に相談に乗り、経験したことについてのみを答えていただくだけで、経験していないことについては、(当然ながら)答えられなくてよい。過度な負担を与えないことで、より多くの橋梁経験者に気軽に会員となってもらうようにすることとしました。もちろん、一緒に考え、問題解決にあたってもらっても構いません。 
 「あいち橋の会」メンバー個人では、経験したことは限られ、対応には限界があるかもしれませんが、結集することで少しでも対応することができるのではと考えています。また、限定的ではあっても、過去の一時期に真剣になって問題解決に対応したその経験は、相談者が解決の糸口をみつける助けになると考えております。わからなくて困っている人は、ただ知らないだけで先に進めない場合も案外ありますし、相談できる人の存在自体が、とても心強く感じることでだけでも価値のあることと考えています。相談者からは「気軽に橋のことを聞ける、橋に詳しい先輩職員」といったイメージです。(第一回の投稿にも述べた、「適切なおせっかい」を少しだけ発展させた形です。)
 まずは愛知県の地方機関である各建設事務所ごとに数名ほどの「あいち橋の会」メンバーを募り、事務所ごとに橋のことで困っている職員から、気軽に相談できる体制を整えようとしています。


「あいち橋の会」イメージ図

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