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㊹失敗を繰り返さないために

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市
建設技術統括監
植野 芳彦 氏

1.はじめに 

 7月です。夏です。私のようなデブには辛い季節です!

「大島橋」の問題に関して、誤解や「詳しく知りたい」という要望が多いので、記述する。管理者側の「失敗学」にしていただきたい。

 そもそも、これを「設計ミス」と言っているが、設計時の1工程を実施していなかったというルール違反なのである。私は、5年前に赴任し、役所内の仕事の仕方や、地元コンサルの状況などを観察し「いつか起きる事態」と予測していた。そして今回の双方の対処などを見ても、また繰り返すであろうことを予言しておく。意識の高い皆さんは、起こさないであろうし、繰り返さないと思う。技術者の劣化もひどい問題である。

 土木の世界で重要なこと、それは「経験」である。また、仕事に関しては「誠実さ」と「覚悟」であろう。これは官も民も一緒のはずである。


2.大島橋

(1)経緯と状況

 富山市の都市計画道路に架け替えられる、3径間連続プレビーム合成桁橋である。橋長は約78m、幅員24.8m。平成25年度「詳細設計委託」、26年度~28年度「下部工工事」、平成30年度「上部工発注」という経緯であり、上部工製作前の照査で設計の不備が発覚した。

 具体的には、支承設計時の数値の根拠を求められ、動的解析が行われていないことが発覚したのである。元々、この橋の設計は私の赴任前に終わっており、発覚2ヵ月後に職員が相談に来た。本人達にすれば悩んでいたのだろうが、悪いことはすぐにあげないと、ダメージが大きくなる可能性がある。

 実は、この橋は、市としては大型工事なので、何度も何度も担当には「設計、大丈夫か?」と言っていた。特に気になったのが、伸縮継ぎ手である。広幅員であるし、都市計画道路である。最近の伸縮装置のフェイスプレートの亀裂の事象から、キチンと検討してあるかが気になり再検討を指示していた。

 当初は、担当部署では25年度の設計ということで、29道示との整合などを考えていたようであるが、そもそもの動的解析を実行していないのは正直驚いた。しかし、静的解析で保有耐力が保たれていれば、さほど大きな変更は生じないと考えていたが甘かった。下部工、基礎工はすでに構築済みで、なるべくここに影響がないように検討しなければならない状況となった。




大島橋の現況


 先にも書いたように、静的解析を行い、保有耐力を十分保っていれば、さほど大きな変更はないと思っていた。さらに、工期の問題もあり、大規模な改修は工期遅れにつながるために、なるべく限られた部材での修正を目指したわけである。設計そのものに関しては、私自身、非常に疑問であるし、多くの方々も疑問に思うであろうが、設計という行為の性質上、細かい話はおいて置く。つまり、限られた条件の中での是正策(よい物ではない)を行ったわけである。そして今回の件は、まず、明らかなのは「設計ミス」と言っているが、ひとつの工程をスルーしてしまった結果である。

 これに対して、余計なお世話のことを言われてくる方がいる。設計という行為が良く分かっていないのではないか? しかも今回は、修正設計である。修正設計でも、実は元々ある部分をやっていないというきわめて問題のある修正設計であり、私の判断において対応しているので、聞きかじった程度の情報で、「こうなるはずだ」とか「こうしたほうがよい」と言うのは、余計なお世話である。ここが、中途半端に自分は技術者だと思っている方々の悪いところで、知識をひけらかそうとする。その人物の能力評価は、自分がするものではないと私は考えている。やはり、チャントした方々は、余計な口は挟まない。

 個人の技術力の評価も「世間、世の中がするもの」であるので、求められなければ安易に言うべきではない。特に今回のようにデリケートな問題に関しては。それを聞いた素人たちは、迷ってしまい、混乱が起きるからである。


(2)対処

 契約上の決まりから、実行した業者に修正はやらせなくてはならない、ということがあるらしく(これ無理ではないか?)、修正作業をやらせている。しかし、時間も掛かり中身が良くわからない。私は無理であると最初から思っていたので、第三者機関を入れることにした。後々を考え、半官半民ともいえる、国交省所管の一般財団法人にお願いした。つまり、責任として修正をコンサルにやらせつつ、第三者機関にチェックを行ってもらっている。さらには、施工業者と4者協議を行いつつ進めている。