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㊲点検は維持管理の入口

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市
建設技術統括監
植野 芳彦 氏

1.はじめに 

 前回と前々回とが同様な内容なのではないか? との指摘があった。私としては違った視点で書いたつもりだったが、伝わらなかったのだろう。実は最近、非常にさまざまなところで講演依頼されて、飛び回っているために、なかなか時間もない。どなたか、そろそろバトンタッチしていただけないだろうか?

 私が一番言いたかったのは、「役所の能力=地元コンサルの能力」となるということ。仕事をいかにやるかということで一番重要なのは信頼関係である。これをいかに築くか? 甘えではない。

 11月の頭に、毎年依頼されているJICAの沖縄研修センターで、南方系の官僚の方々に「橋梁マネジメント」の講義をしてきた。さすがに、各国の代表であるので真剣に聞いていたが、今年のメンバーは少し変わっていて落ち着きがなかった。しかし、「アメリカでは20年前に荒廃するアメリカと言われ、現在の日本の状況がそうである。いずれ、皆さんの国々もそうなるだろう」と言うと、目の色が変わった。インフラのメンテナンスは世界共通の課題である。



JICA沖縄研修センターで植野氏の講義を聞く参加者


2.再劣化への道は、点検から続く

 なぜ、地元コンサルの状況を書くかというと、地元コンサルの技術力、能力がその自治体の能力であるからだ。これはコンサルだけではなく地元建設会社に関しても同様であるが、これまで自治体がきちんと指導し育成してきたかが問われているのである。長年、甘やかしてきた結果が現在であるのは、既存の構造物を見れば一目瞭然である。これらを今からでも遅くないのできちんとしないと、維持管理のコストは増大する方向に行き、財政は破綻する。

 昔から「地元の育成」というまやかしの言葉で、甘やかしてきたのが現在の結果であり、自業自得なのであるが、官庁職員も民間企業も育たない結果となってしまった。これは、地元優先というまやかしが甘やかしの元凶であるが、まあ、この議論はしても仕方がない。


 私が20代のころは、本四、道路公団、阪神高速、首都高速などの公団関係に、名物監督官や課長がいて、厳しい要求を突きつけられた。その時点では、「何でこんなこと」と思ったが、結局彼らは、技術に対して真剣であり、自分達の管理するものを少しでも精度良く仕上げることに精魂を傾けていたのだ。さらに、30代では、霞ヶ関の方々に結構厳しくやられた。しかしこれが今にして思えば、今日の私を作り上げた。少し前に、当時凄く厳しかった方から「俺は、厳しいと言われているのはわかっている。しかし、厳しく言っても、這い上がってくる奴しか認めない。あんたはその一人だよ」と言われ、なんとなくうれしかった。


 インフラの維持管理において最大の難関が、今後補修をどのようにしていくか? ということである。点検は、維持管理、マネジメントの入口に過ぎない。しかし、その根本の議論もない。これまで実際にかかわってこなかった人たちが机上で議論しても良い結果は出ない。点検率ばかり求め、その精度の議論もない。点検精度が悪ければ、後工程である診断や補修は適正ではない結果になる。長寿命化、予防保全と言っている割には、この辺の仕組みができていない。

 点検は事実を伝えてもらい、後の診断をしっかりやればなんとかなる。この時に、疑問というか?情けないのは、

 ① 構造物全体を見ていない

 ② 周辺の状況が確認できていない(地形、土質、山、水の流れ、木の繁茂状況 など)

 ③ 点検で疑いを持たない

 ④ 持っても詳細点検をし、深く追求しようとしない

 ⑤ 詳細点検の必要性は言うが具体的な方法が示されない

 ⑥ または、意味のない詳細点検を提案する

 というのが現状である。

 点検の精度を上げないと、劣化やさまざまな不備が現れ、コストは増大していく。わからない者たちに点検をやらせ、わからない者が判断していくというのは最悪。再劣化は、人的な問題と材料・工法の問題が絡んでいる。


3.第2ステージへ

 全数近接目視の1巡目が終わり、2巡目、第2ステージと言われている。ほとんどの意見で、点検の省力化、ドローンやロボットなどの活用、小規模橋梁の点検簡素化ということが言われている。しかし、今の状況で本当に大丈夫なのだろうか? 小さい橋は何かあっても重大事故は起きないだろう。しかし、もともとの出来が悪いのも事実。50年の耐用年数であるはずが30年しか耐用できないかもしれない。

 ここで、仮に点検はまあまあ良いものだったとしよう(ふつうはこういうはずなのだが)。その次に、結果を診断しなければならないが、実際には診断もコンサルに任せてしまっているのではないだろうか? 当市ではそれで問題が発生しているので、「セカンドオピニオン」ということで、結果を見直すことにしている。診断は点検以上に配慮しなければならないし、橋梁や対象構造物に対する知見の十分なものがやるべきである。


 次に補修設計となるわけであるが、後工程に大きく影響する。ここで、どういう材料を選定するのか? どういう工法とするのか? ――これが重要なのであるが、安易に決めていないであろうか?

 2巡目をより確実なものにするには

 ① 点検精度を確保する

 ② 周囲の条件も確認しておく

 ③ 構造系の正しい判断(ディテールもきちんと把握)

 ④ 正しい診断

 ⑤ 正しい補修材料・工法の選択

 ⑥ 的確な施工、施工精度の確保

 である。

 そもそもが、みなさん構造物への考え方が安易なのである。構造物を造るにも守るにも責任があるということも認識しなければならない。わかったふりをしたい方々は退場していただきたい。


 インフラは構造物である。材料や部分的に見ていてもナンセンス。しっかり全体を見極め、よくよく判断しないと何をやっても無意味。はやりの、デザインや形ではなく構造系を解明していかなければならないが、そういう意識が最近希薄である。

 本音を言うと、なんでもそうだが、わからないものがどれだけ点検しようが診断しようが無意味である。議論しているつもりでも知見がなければ無意味なものとなる。また、よく聞くのが、「PDCAを回す」ということ。本当にわかって言っているのか? Pは何で、Dは……。これもマネジメントの本質を分かっていなければ無意味。