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㉟コンサルへの能力別発注

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市
建設技術統括監
植野 芳彦 氏

3.まずは資格で、そして評価

 まずは、資格要件で管理技術者および照査技術者に「技術士」もしくはRCCMの要件を付けた。当たり前のことであるのだが地元企業はこれが気に食わないようだ。ある方が言っていたが、「プロが素人に金を払って仕事を出すはずがないだろう」ということである。わざわざ危険を冒していることがわからない。まず判断する材料が資格である。会計検査に挙げられたり、設計ミスを犯すのは、無免許運転のタクシーに乗り事故にあうようなものである。職員の中には、わざとそうしている者もいるとしか私は思えない(?)。課長クラスでもそうである。「地元に出さなければ」という一言である。

 それはそれで確かによく言われることだ。私にしてみれば少し何かを疑いたくなる。優しすぎるのか? 自分の保身を気にしているのか? 一番簡単に判断できるのが資格である。かつてはRCCMという資格はなく事業量の拡大によって生まれた民間資格である。しかし事業量が減った現在、見直してもよいのではないか?

 私は、自分でも試験が嫌いなので、資格に関し言いたくないのだが、客観的に判断するのはそれしかないのである。先日、ある先生と話していたら、その資格の話になった。「市民から見たときに、建築には建築士という皆聞いたことがある資格があり、設計や施工の要件としてきちんとしているが、土木の場合は明確でなく、技術士という資格も知られていない。これでは学生も資格を取る励みにならない」というのであるが、まさにそうである。これは我が国の「仕様設計」の制度によるものであるが、「技術士会」の怠慢であると、以前から思っている。先進国では、「医師と弁護士とPE(プロフェショナルエンジニア)」は、待遇もよく尊敬される職業となっている。日本の場合はそうではない。

 第三者が見たときにまずは資格なのである。これは、必ずしも正しい手法ではないが、最低限の要件なのである。先日、ある委託業務の打ち合わせをコンサルと行った。富山市側は私を含め3名、相手方3名。まあこれは普通である。そして、富山市側は、3名とも技術士、相手方は2名がRCCMで1名は無資格。プロがセミプロと打ち合わせてどうするのか? しかもお金を払って。

 資格の問題はまあ、良いとして、私が、日本のコンサルで物足りないのは、机上論をみんなで語るだけだからである。現場の経験がない、現場に出ようとしない……。土木の世界では落伍者である。国の制度に関しても、自分たちで作ったわけでもないのに、したり顔で説明している。詐欺師である。時々、昔私が関わっていた基準の説明を、したり顔でしているのを聞き、滑稽だなと思う。解説が正しければ問題ないのだが、間違った解釈をしている場合には注意する。

 そして、成果も含め、「委託業務の評価」を担当者にしてもらっている。その結果が回ってきて面白いのは、100点満点で30点とか40点があること。「これ、支払いどうしたの?」と聞くと、「払いました」とほとんどの職員が言う。「それって駄目だろう! 不合格のものに金払うの?」と聞くが、時すでに遅し。不合格ならやり直しをさせればよいのである。それで、相手も気づくと思うのだが、それをやらないから、身に沁みない。それが続くようならば「指名停止」であるはず。「市民のために」と言いつつ、不遜な態度であると私は思う。この評価を、橋梁保全対策課では次年度の点検業務などの指名件数に反映するようにしている。つまり、前年度にいい加減な仕事をする業者と判断すれば次年度は、仕事を受注できるチャンスが減るようにしているのだ。

 現在は、この資格要件による、業務の難易度による発注ランクと、業務評価による指名機会の評価となるわけだが、業務の内容が高度化している現在、こちら側も進化していかなければならない。今後、部下に伝えたいのは、「各コンサルの得意業務と程度を見抜く手法」である。


4.まとめ

 昔、橋梁メーカーに居たときに、現在はどうか知らないが「裏設計」は当たり前だった。やらされて馬鹿らしくなった。その後、水門メーカーでもそうだった。水門と言っても樋門樋管まで入れると、1日に数十本の設計をコンサルから当たり前のように受けていて、情けなかった。仕事の手間が情けないのではない、自分オリジナルな設計思想が設計に反映できない、「他人の考えで動いてしまうことが情けなかった。」だから、コンサルにも行ってみたのだ。しかし、結果は……。

 役所がやるべきことの一つには、技術力は衰退しているとはいえ、(地元)企業の指導・育成というものが現在でもあるはずである。それを双方が、勘違いしている。大手企業であれば、国の意向も情報も、正確に入ってくる、伝手があるので問題は少ないが、地方はそうではない。そこのところの理解ができていない。「仕事を取れば金になる」ではだめなのである。公共事業にかかわるからには「責任」があることを認識しなければならない。


 富山に赴任し、4年半であるが、未だに私の悪口を言っている業者たちがいる。そういう情報が職員や議員さん、飲食店からも入ってくる。私は、自分の信念をかけてやっているだけである。仕事が減っているのは、自分たちのこれまでの結果である。先日、日経コンストラクションのインタビューで「恐怖の再劣化」という話題提供をしたが、これは、本当のことを言ったまでである。皆さん、一度補修すればそれで終わりだと思っているだろうがそうではない。

 きちんとやらないと再劣化が起きる、やったつもりでも起きる。だからしっかり追跡調査をしなければならない。そして、まずければ、反省し別の方法を考えることが重要なのである。それが「失敗学」である。しかし、漏れ伝わってきたのは地元業者が、「あの写真は補修する前のものだろう」ということを言っているそうだ。私が、あそこで嘘の写真を使っても何の意味もない。地元業者なら現場を見てくればよいのにと思うのだが。

伸縮装置を例に挙げると……

 インフラのメンテナンスの状況を見ていると、悠長なことをやっている。点検率にこだわり精度は議論されない。補修に関しては、長寿命化では重要なはずであるのに、補修材料、補修方法に関して十分な検討がなされないし、安易に使用しているとしか思えない。さらに、追跡調査をしようともしない。再劣化の問題は何処でも起きている問題である。この辺のことを真剣に議論できるコンサルさん建設業者さん、来てください。
(2018年10月16日掲載、次回は11月中旬に掲載予定です)