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-分かっていますか?何が問題なのか- ㊷コンクリート橋の健全度分析と耐久性向上(その4) ‐本当にコンクリート橋は壊れにくいのか‐

これでよいのか専門技術者

(一般財団法人)首都高速道路技術センター
上席研究員
髙木 千太郎 氏

2.インドで発生した道路橋崩落事故

 インド、西ベンガル州南カルカッタ・アリポア地区、TaratalaとMominpurを結ぶ幹線道路、ダイヤモンドハーバーロード(国道117号線)に架かるMajherhat Bridge (マジャーハット橋)が2018年09月04日(火曜日)午後4時30分頃に崩落した。図-9、図-10を参照。私はインドに行ったことが無いので、知り合いに聞いたところ、ミャンマーに近いこのエリアは、治安が悪く日本の技術者も少ない様である。今回の事故で、3人の貴重な命が失われ、25人以上が負傷したとの記事がある。
 私は、今回の事故報道を見て、事故原因を推定する過程で悲しくなった。今回の崩落事故を含め、今年になって橋梁の崩落事故が何度起こったのかと。我々技術者の使命は、『安全・安心』の確保であったはずだ。図-9に何時もの”google”から引用した航空写真にマジャーハット橋の位置図と崩壊エリアを示した。写真-11は、マジャーハット橋の側面の遠望を示している。崩落した道路橋は、カルカッタ・アリポア地区の重要な公共交通機関である鉄道、Sealdah-Budge Budge線を跨いでいるが、唯一の救いは跨線橋部ではなく、赤線で囲った水路(河川)部を跨ぐ区間が崩落したことである。もし、跨線橋部が崩落していれば、このエリアの公共交通機関が一つ絶たれることになった。写真-12に崩落後の状況を遠望で捉えた状況、写真-13に崩落したエリアの車両等を除去し、残骸が明らかとなった状況を示した。インドの現状を知っている技術者から聞いた話で、確たる証拠があるわけでは無いが、インドのコンクリートの質や状態は悪く、政府もコンクリート構造を全く信頼していないとのことである。機会があれば、インドに行って真実であるのか確認したいところであるが、幸か不幸かその機会、予定は全くない。



 崩落したマジャーハット橋は、今回の事故が起こる前、何度も適切なメンテナンスが必要、架け替えが必要等の議論や指摘がなされていたが、実現しなかったとのことである。だからこのような、技術を疑われるような事故が起こったのだ。マジャーハット橋は、西ベンガル州公共事業部によって維持管理されているのに、インド西部でも大崩落事故が起こっていて再発防止を行政は指示していたのに、・・・何故だろう。

 現地の報道では、「マジャーハット橋は、供用後50年(正しくは54年)を超え、2010年には、当該橋が沈下したために修繕し、 2016年に行った監査では、橋が安全でないとフラッグを建てた。」である。これまた、崩落事故が起こると何時も聞く話だ。写真-14は、マジャーハット橋の崩落したエリアと主桁及び橋脚の状態を示している。橋脚の天端は、主桁支承部付近から発生したと思われるひび割れが確認できる。崩落したエリアは、桁構造、手前は床版構造のようである。写真-15に鉄筋コンクリート床板橋部分の著しい変状が発生している状態を示した。


 側面、桁下の状態は、繊維質の物が僅かに確認でき、遊離石灰析出、脆弱部の存在、何れを見ても健全度は最悪と考える。写真-16は、マジャーハット橋の鉄筋コンクリート橋脚の変状を示している。先の上部構造と同様に、下部構造の変状も著しく、よくこれまで崩落せずに供用できたと、呆れると同時に感心する。今回は、紙面の都合で他の状況写真をカットさせてもらったが、いずれもお世辞にも良いとは言えない状態を示していた。インド政府の事故調査結果がどのように公開されるか分からないが、崩落前のマジャーハット橋の健全度、修繕計画、マネジメントがどのようになっていたのか知りたいものである。

 最後に、今回の事故原因は、マジャーハット橋の直近で施工していた地下鉄建設の影響であるとの説もある。また、供用開始時の舗装等の死荷重と現状、何度か積層したオーバーレイの荷重増が問題としている情報もある(図-11参照)。確かに、供用開始後、縦断勾配調整や活荷重分散等(国内でも施工する上面増厚工法)の目的で、10.748インチ(約27.3㎝)を増したことは大きい。試算すると、アスファルト舗装であれば、6.15kN/㎡、無筋コンクリートであれば、6.28kN/㎡の荷重増となる。しかし、真実は、今回の初めに紹介したアメリカ・フロリダの横断歩道橋崩落事故と同様で、公共機関から公表する資料を確認しなければ真実は闇の中なのだ。

 私が、本連載の本シリーズ『コンクリート橋の健全度分析と耐久性向上』を開始してからコンクリート橋は、建設中、供用開始後で3橋が崩落事故を起こす結果となった。私が、本旨として執筆している鉄筋コンクリート道路橋の健全度評価に関する部分を再度熟読され、コンクリートとは、コンクリート構造とは、安全性・耐久性とは、などを再確認して貰いたい。次回の時には、本文が公開された後に発生した、橋梁事故に関して説明はしたくは無いし、読者の方々も読みたくもないであろう。ここで、読者の皆さん、社会から信頼される技術者、行政とは、を自問自答してもらいたい。その理由は、私も日々その連続であるからなのだ。(次回は2018年11月1日に掲載予定です)