道路構造物ジャーナルNET

-分かっていますか?何が問題なのか- ㊷コンクリート橋の健全度分析と耐久性向上(その4) ‐本当にコンクリート橋は壊れにくいのか‐

これでよいのか専門技術者

(一般財団法人)首都高速道路技術センター
上席研究員

髙木 千太郎

公開日:2018.09.30

はじめに アメリカの横断歩道橋崩落事故調査の経過について

 今回の話題提供は、今回で4回目となるシリーズ『コンクリート橋の健全度分析と耐久性』(リンク:1回目2回目3回目)柱に、前半部分がアメリカで起こった架設中の横断歩道橋崩落事故、中央部分をシリーズ連載、今回は特に変状発生原因別に分析した結果を説明し、そして最後は、私が起こってほしくない、書きたくないと常に願っている橋梁事故について書くとしよう。最後の締めの話しは、痛感の思いであるが、またまた起こってしまった道路橋崩落事故についてだ。それでは、今回の話題提供が、読者の方々が期待する内容となっているかは私にお任せいただくとして、話を始めよう。まずスタートは、アメリカ編だ。
 アメリカの州DOTに在籍する橋梁技術者から8月中旬、私宛に連絡があり、フロリダで起こった横断歩道橋崩落事故に関するNTSB (National Transportation Safety Board:国家運輸安全委員会)事故調査報告書の第2回目が2018年8月9日に公表されたことを知った。前回にその話をとも思ったが、イタリア・ジェノバの道路橋崩落事故もあり、私の勝手な判断で、今回に先送りすることとした。最新の情報提供を望まれている読者の方々に対し、情報提供が遅くなってしまったことをお詫びする。
 今回まずは、公開された事故調査報告書の概要を紹介すると同時に、私感を述べさせていただく。しかし、世界何処の国であっても、私にとって友人とは貴重で、ありがたい存在である。今回も、これから話す情報の提供者は、私の知りたいと思っていたことを察して、情報が公開された直後に連絡を入れてくれた。私としては、ネットなどを使って自ら調べればよいが、歳のせいか非常に草臥れる。であるから、知り合いの多くの人々が私に対し、数多く情報提供をしてくれることに感謝の念で一杯である。私が友人の彼らに対し、彼らが望んでいる多くの関係技術情報を十分に提供できているかは全く分からないが。 
 今回話をするフロリダの横断報道橋崩落事故は、読者の多くの方々の記憶の中には薄らとはあると思うが、ここで再度整理してみよう。2018年03月15日13時30分ごろ、アメリカ合衆国・フロリダ州マイアミで建設中の横断歩道橋が崩落し、走行中の乗用車や通行人が下敷きとなった。その結果、6人の貴重な命が失われることになった事故である。皮肉なことに、同日、国内では、『NEXCO西日本が施行している新名神高速道路建設工事現場(大阪府枚方市楠葉の淀川河川敷)で、鉄骨が崩れ作業員が川に転落、亡くなった』の報道があった。事故にレベル差をつけること自体可笑しいが、安全対策、転落防止などの人的エラーによる低レベルの事故が多すぎる。国内の橋梁技術者は何をやっているのでしょうか?私は、レベルが低くて恥ずかしい。

 フロリダの事故は、全長84mのトラス構造のうち南側に架かる延長53m、重量950tのコンクリート上部構造が格点部付近で折れる様に崩落した。完成状態で斜張橋となるプレストレストコンクリート構造の主構造を道路脇のヤードで製作し、3月10日に多軸移動台車で一括架設した後に突然崩落した事故だ。写真‐1は、インターネットから引用したようではあるが、国道41号線を跨いで架設された直後の状況を示している。事故発生直後から、事故原因について数多くの推測が飛び交い、設計会社、施工会社、監理会社及び占用工事を許可した道路管理者などは、報道機関や被害者等の対応で連日大変であったろうと推測する。飛び交う情報の中には、まるで井戸端会議のように、第三者的、部外者的な無責任な発言が多くを占め、ステークホルダーとして事故発生の技術的反省や再発防止、特に国内における同様な問題の解決策を議論する場が無かったのは非常に残念であった。それでは、アメリカの技術者から情報提供を受けた『Investigative Update: Collapse of Pedestrian Bridge Under Construction Miami, Florida (HWY18MH009)』について、示された概要と私の注目したポイントを話そう。
次ページ「報告書の詳細は……」

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