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シリーズ「コンクリート構造物の品質確保物語」㉖

群馬県編② インハウスエンジニアがチャレンジすることの大切さ

横浜国立大学
大学院 都市イノベーション研究院
教授
細田 暁 氏

イメージに合った床版打設工法を自分で探す

 JS工法の活用を元請に打診

 ――(編集部)この現場では床版を非常に工夫されていますね

 下山 打設現場を見に行って、もう少し丁寧にやったほうが良いのかな? と考えて、工夫をしてみませんかという話を私の方から持ちかけました。

 NETISで検索してみると、様々な工法もあり、その中でJS工法が適しているのではないか、と考えて相談しました。

コンクリート床版の品質向上に向けた取り組み①

 細田 工法を自分で探したのですか。

 下山 ちょうど自分の抱いた床版打設のイメージに合っていましたので。

 細田 床版施工の工夫に際しては、下山さんと施工者だけでなく、学に声をかけるなど輪を広げていましたね。例えばうちの小松怜史助教も床版上面の施工方法や養生手法などについて参画していたと聞いています。

 下山 JS工法の活用を川田建設に打診したところ、供試体で試験施工する計画を出して来てくれました。それを建設企画課に情報提供したところ、小松先生が興味を示されて、場所を提供しました。当時、私の担当している橋とは別の橋(高田機工が施工)で床版を打っており、そこでも小松先生に確認や試験をしてもらったり、アドバイスをもらったりした流れの一環に乗った形でした。

 細田 床版の施工はどのような工夫や技術を使って行ったのですか。


床版表面の品質確保は重要
 小型版のサーファーも自作

 下山 きっかけは床版打設時の手戻り施工です。凹凸を無くすため、すでに打ち終わった場所から足らない箇所にコンクリートをほじくって投げて均すという行為や、綺麗に均した所に移動のため足跡を付けてしまい再度均すという作業などが気になりました。特に床版表面の品質確保は重要という認識がありましたので、もう少し丁寧に仕上げる方法があるのではないか、と思いました。そこで、仕上げの方法をいろいろ調べたら、JS工法(サーファー)がたまたま見つかって、川田さんにお願いをしてみました。

 元々JS工法はやや広い、突起物がないような工場の床面施工に使用されており、本当は橋のような地覆鉄筋や張出部など突起物があるような所には向かなかったのですが、広いところはサーファーと呼称する均し機械、狭いところは小型版のサーファーを自作するなどの工夫を専門工事業者(上成工業)の方でしてくれました。川田さんも非常に協力的でJS工法施工時、自作のサーファー施工時、従来施工時の3つの供試体を作成して効果を確認するところまでを提案してくれました。

3つの供試体を作成した/透気試験調査結果一覧

 細田 効果は何を、どうやって確認したのでしょうか。

 下山 表層透気試験(トレント法)、シュミットハンマーによる強度確認、吸水試験(SWAT法)、透水量試験(JSCE-K 571-2010)などです。

 細田 床版上面の施工時に気にされていた、ほじくることは無くなったのですか。

 下山 ほじくること自体よりも、最後に緻密に仕上げられるのではないか、ということで始めました。

 細田 ほじくることが問題じゃなくて、ほじくってもいいのだけれど、その後、本当に緻密になっているかどうかが大事ですね。

 下山 そうです。せっかくならした後にほじくって、なんとなく均しているのでは表層品質の悪化を招いているのではないか? という懸念です。施工の効率化も模索していますが、一義的には表層品質の確保を考えました。

県内新設構造物の透気試験結果との比較/透水量試験結果(供試体)

 細田 そういう品質確保は手間がかかりますよね。実際こうした工夫は、やらなくても検査は通ります。しかしここでは施工を工夫し、3種類の方法で効果の確認も行った。こうした品質確保の意義をどう思われますか。


維持管理費の低減を図るためにも建設時の品質確保が重要
 現場は一期一会

 下山 他県の例に漏れず、群馬県も今後、人口も減って税収も下がっていく傾向は否めません。当県も橋梁の長寿命化計画を作っていますが維持管理費の捻出もなかなか厳しくなってくると思います。こうした状況を緩和するためにも建設時の品質確保の追及は一番重要であると考えます。多少手間がかかっても大きな意義を有します。

 細田 品質が確保された意義ももちろんですが、品質確保に挑戦する過程で人が育つことも有意義であると思います。ご自身の経験や関わった施工者さんを見て、その観点から思われることはありますか。

 下山 今回、皆で施工状況把握チェックシートや表層品質の目視評価をやることで品質の向上につながることを強く体験しました。何も考えずに普段通りにやるのではなく、皆で手をかけ、目をかけることは、絶対に良い結果に繋がります。現場は一期一会です。

 細田 最初はやらされ思考だったと思いますが、途中からは、大きな現場であり、周りも盛り上がっていることもあり、何とか意義のある試行にしようと苦労や配慮されたと思います。

 下山 自分は現場や業者に恵まれましたのであまり困りませんでした。特に上部工の2社は積極的でした。こちらの提案も言えば伝わりました。