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④~技術系公務員として設計業務を理解する力~

若手・中堅インハウスエンジニアの本音 ~技術系公務員におけるスペシャリストの必要性~

愛知県
西三河建設事務所
西尾支所建設課
渡邉 英 氏

■FLIPによる解析結果

本設計業務の解析結果のうち5地震重ね合わせ波形を入力した場合の解析結果を図-14、図―15に示す。二重締切り鋼矢板による対策により堤防の損傷は最小限に抑えられ、残留堤防高(パラペット天端高)が照査外水位(L1津波水位)以上となることが確認できた。



(8)解析の前提条件について知っておくべきこと。
 解析結果に影響を与える不確実性としては減衰なども挙げられるが、私がこの解析結果を理解する上で重要と思った点について4点あげる。
■幾何学的非線形は考慮されていない
 多重せん断ばねモデルの項でも記載したが、本設計では対策後の照査を目的としたため微小変位理論に基づき解析している。本来、対策前の図―14の様な地盤の変形が大きい場合では、高い精度で推定するため各構成モデルを大変形理論の枠組みに拡張し幾何学的非線形を考慮する(一般的には、ひずみベクトルε=微小変位の項ε+大変位項ε)必要がある。例えば、京都大学の研究テーマ・開発紹介では有限変位理論を適用した場合の一例として下図が公開されている。

■消散沈下量の考慮方法
 過剰間隙水圧モデルの項で記載したが、使用したFLIPでは、非排水条件で解析しており、圧密による液状化後の消散沈下量は算出できない(カクテルグラスモデルとよばれる粒状態の構成モデルを組み込むことで算出も可能)。そこで、消散沈下量の算出は地質調査結果における排水量試験結果から液状化層厚に単純に係数を乗じることで算出している。

■鉛直地震動の影響
 鉛直方向の地震動の影響については、各マニュアルにおいても具体的に考慮されることとはなっていない。しかし、単純に鉛直方向の加速度波形を水平方向の加速度波形と同時に入力した場合の計算結果では、水平方向の加速度波形のみを入力した場合に比べ約15%程度沈下量が増えた計算例もあり今後の課題と考える。

■腹起し材の照査
 FLIPでは3次元解析も可能であるが、今回は解析費用やモデルの作成時間等の問題もあり行っていない。このことから腹起し材の照査は行えていない。

(9)堤防の液状化対策の新工法
 ここまで紹介した矢板の長さが12mの二重締切り鋼矢板工法(図-1)では、工事費が約150万円/mで1km整備するのに15億円程度かかる。
 経済性について比較した場合は、国土交通省四国地方整備局等で開発された地盤に空気を注入し液状化を抑制するAir-des工法(図―17)などの新工法が有利となる。ただし本工法が二重締切り鋼矢板工法と同等機能を有するかを判断する必要がある。判断には、例えば今回と同様な照査を行うためには、FLIPの中で不飽和の液状強度をモデル化して照査10し、その効果の継続性についても検討する必要がある。