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-分かっていますか?何が問題なのか- ㉟鋼道路橋の耐久性向上(その2)

これでよいのか専門技術者

(一般財団法人)首都高速道路技術センター
上席研究員
髙木 千太郎 氏

2)腐食原因の改善が容易でない場合

腐食原因の改善が容易でないと判断した第一は、②の桁端部の狭隘な空間を原因とする腐食である。新たに橋梁を計画、設計する場合には、「狭隘な空間とならないように、特に維持管理が容易となる空間が必要」としている。しかし、これは諺の『言うは易く行うは難し』なのだ。その理由は、私は桁端部に狭隘な空間を作らないような処理を行うことは容易と思うが、その結果、経済的にも管理上でも良い結果とならないと考える。経済的な面では、遊間(下部工パラペットとの開きなど)を大きくとると伸縮装置遊間を大型にしなければならず、不経済となる。管理上の問題としては、鳥や人が容易に入り込む空間となるなどマイナス要因が発生する。鳥の被害が如何に大変なことかが分かる事例が写真‐12である。



写真‐12 鳥害防止装置を設置した事例


鳥が鋼桁上に糞を落とすことは、塗膜劣化および鋼桁の腐食促進剤を塗布しているのと同様な結果となる。写真‐12の事例も鳥害がひどいので鳥が止まれないように装置を付けたが、鳥も頭がよいのか他の箇所に止まり糞が堆積する状況となった。先の箱桁端部も同様で、少しの空間でも鳥は入り込み、巣を作る。また、箱桁内は、冬季になると周辺の外気温よりかなり暖かいので、人が桁内に入り込み生活している場合が多々ある。写真‐13は、維持管理作業を考えて桁端部に切欠きを入れたが、人が箱桁内に張り込み死亡事件を起こしたので止むを得ず侵入防止柵を取り付けた事例である。



写真‐13 箱桁内に人が入り込まないように設した柵


道路橋への落書きと同様に桁内への侵入・生活は、マナーを考えれば、行ってはならないことは当然誰でもが分かっているはずなのだが。維持管理空間を十分に確保する案は分かるがその反対に、余計な空間は無くしてもらいたいと判断する逆の考え方もあることを理解されたい。

主構造端部の腐食環境改善策としては他にもある。それは、伸縮遊間から雨水や土砂・塵埃などが流下したとしても溜まりにくいような構造とすることである。しかし、橋脚上なら勾配の効果はかなりあるが、橋台部分、支承周りは通気性がどうしても悪くなる。その結果、橋台の主構造端部周辺は、湿気が多く、水滴がつきやすい環境になり易いといえる。さらに、いずれ塗装の塗り替えが必要な状況を想定すると、劣悪な環境下での塗り替え作業とならざるを得ず、十分な防食性能を発揮する材料に頼らざるを得ない。④と同様ではとお思いの方も数多くいるとは思うが、②は橋長、径間長が長い橋梁でも当該環境に当てはまり、対象道路橋の重要度から考えると重大損傷に繋がり易い。次に腐食原因の⑤維持管理作業が困難な環境について考えてみよう。



写真‐14 跨ぐ機能を失ってもそのままの状態で橋梁する道路橋


写真‐14は、建設時には河川を跨いでいたが、時代の移り変わりで桁下の河川を埋め立てられ、本来の機能を失った状態の良くある事例である。河川を埋め立てた時に当該橋梁も撤去すれば良かったが、撤去費用等から先送りとなる事例は数多くある。それよりも問題となるのは写真‐15となった場合である。



写真‐15 道路橋が跨いでいるのは店舗と映画館


写真‐15は、公共用地の上に建設されていたが、桁下を埋めた時に、桁下有効活用の考え方か?店舗等に占用を許可した事例である。桁下が河川や運河ではなく、店舗等であれば腐食環境としては穏やかではとお思いの方が多いと思う。しかし、現実は大きく異なっている。店舗、映画館は、人が活動するので湿気と温度が高くなる。室内からの空気が上昇、滞留し、橋上からの雨水等も合わさって高温多湿の環境となる。化学反応速度に関するファントホッフの規則を考えてもらえば分かり易いが、桁下空間温度が10℃上昇すると反応速度は2倍となる。その結果、写真‐16で示すように著しく断面欠損し、耐荷力も心配されるような状態となった。



写真‐16 高温多湿で断面欠損した、桁下を企業が占用する道路橋

腐食環境の改善が困難な②と⑤を原因とする場合の改善策としては、決定打はこれだと言える対策は思いつかない。②の場合は、厳しい腐食環境でも十分に機能する防食材料、それも腐食し、錆が発生した状態であっても不良錆を取り込んで塗布でき、腐食反応が進展しないような材料を開発することである。発生した錆を取り込んで塗布できる塗料としては、完ぺきとは言えないが、商品名で言うと『サビシャット』(私が推奨しているわけではないことを断っておくが)などがある。⑤の場合は、腐食原因の除去、改善策はまずは桁下を占用している民間会社の処理が第一である。そもそも民有地の上に公共の道路橋が架かっている事例は少なく、戦後の混乱期等に桁下占用を許可した事例が殆どである。しかし、そうは言っても公共道路としての道路橋が存在している事実は変わりがない。そこで、どの程度腐食が進展し、鋼部材断面が欠損すると耐荷力に影響が出るのかを腐食した鋼部材の板厚等を計測、工学的に検討した結果を次回説明することとしよう。ここまで硬い話が続いたので、今回の最後に多少柔らかい話、桁下が店舗等に貸し出された道路橋の話をしよう。

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