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㉗インフラ・メンテナンスの地方の状況

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市
建設技術統括監
植野 芳彦 氏

3.逐次投入

「失敗の本質」の中でよく言われるのが「戦力の逐次投入」である。これは現在でも良く行われてしまう事柄である。逐次投入のなにがわるいかというと、対処療法的で、効果が薄くなる場合が多いからである。戦力とは、物量や人員だけではない。「ひと・もの・かね」と言われる。

「橋梁長寿命計画」というものをかつて、平成24年ごろに本省の指示で各自治体は策定した。これ自体は、先行きをある程度のスパンで策定したという意味ではマネジメントとして非常に重要なことであると思う。それまで、行き当たりばったり的な、橋梁の保全を中長期的に考えたという意味合いからはすばらしい。マネジメントを的確に行い、維持管理の戦略を立てていくと言う意味合いからすれば、大きな成果である。

 橋梁の維持管理において、逐次投入と言うのは「(何も考えない)事後保全」である。痛んだから、段差が出来たから、ひび割れがあるからと予算内では、対処できるので、これが一番楽な方法ではある。しかし、逐次投入以外の何者でもない。

「橋梁長寿命化」で何が問題かというと、

① 重要橋梁しか見ていない場合が多い

② 検討年が橋梁の寿命に対し短すぎる

③ 急いで策定しているために十分なシミュレーションがなされていない

④ 橋梁構造の素人が策定している

⑤ 点検も不十分で、損傷劣化の具合が把握されていない

 ――だと考える。①に関しては、自治体では、重要橋梁よりも中小橋梁のほうが数が多く存在し、その潜在的欠陥が今後大きな課題となると考えている。本市の場合、全橋梁数2,234橋のうち重要橋梁は224橋にとどまる。さらに②は橋梁の寿命は、今後100年ということで長寿命化を検討しているわけであるが、本市の場合「長寿命化計画」での計画年次が20年程度なのである。おかしくないですか? というところである。さらに、ここにこれを作成した担当者やコンサルの能力の問題がある。能力というと失礼だが、知見度、技術力、先進性など総合的に判断できたかどうか? という問題であり、これは、まあ宿命的であるので、仕方が無い。

 ということで、現在、再見直しのシミュレーションを100年スパンで行っている。その結果、見えてきたのは、とんでもない現実である。100年の間には、また世の中も変わり、違った状況にはなるだろう。それはそのつど定期的にシミュレーションをやり直せばよいことである。希望的な良い方向に変わっていく分には全然問題は無いはずである。

「逐次投入」はなぜ起きるかというと、状況の見極め不足と、「もったいない」という惜しむ心である。先見性と決断力が戦略には必要なのだ。決断力がないとどうしても「先送り」になっていく。そして、取り返しの付かない状況までそれは気付かない。インフラのメンテナンスは、「終わりなき戦い」である。そして「先の見えない恐怖」がある。作ってしまえば維持管理には終わりは無く、先が見えない。この恐怖は大きいと思うのだが、意外と皆さんノンビリしている。そこに人口減、財政不足というものすごい破壊力を秘めた事項が襲ってくる。


4.まとめ

 富山市の除雪費用をご存知だろうか? ほぼ年間10億円である。(今年は、今のところ約15億円に達した。3月末までに20億円に達するのではないか?)この10億円、多いか少ないか? は別として、橋梁関連予算も現在年間10億円である。これらを、どう判断するかである。なにか、工夫しないと、将来とんでもないことが起きる気がする。雪は春には溶けてなくなる。橋梁などインフラは、何もしなくても形は残っているが機能と安全性は落ちる。正直いっそ溶けてなくなって欲しい橋もある。



除雪作業


 前述したが、「橋梁トリアージ」に関しては、いわゆる法定点検も来年度で終了するので、もう、遅いと思う。最近、橋梁を良く理解されている方々から、言われ始めたのが、「橋梁の点検・診断、補修設計などを、コンサルに任せていると、非常に割高なことをしなければならなくなり、財政不足になっていく」ということが、やっと言われだした。これは、私は最初から感じていたことである。正確に言うと、「任せっきり」だからまずいのである。分かったものが判断をしてやっていくしかない。現行の点検要領に従うと皆さん、“ひび割れ”を一生懸命に拾っている。鉄筋露出があると、大騒ぎしている。構造系により全然たいしたことの無い物まで。



(左)ASRによる鉄筋破断(右)箱桁内の調査


(左)ひび割れ (右)鉄筋露出


 さらに補修材料・補修工法に関する評価がまったく良くわからない。本当によいのか悪いのか? 補修材料の多くは、元々は外国製のものが多く、日本では代理店的な企業が多い。私もこれまでに、尊敬できる元上司の依頼で、補修材メーカーの技術審査に関わったり、そのためのマニュアルの整備などを手がけたが、なかなか論理的な説明が難しい。そういった場合にはやはり実証し評価しなければならないだろう。来年度は、補修方法に関して検証して行きたいと考えている。現在その協力者を募集中(非公式)である。

(2018年2月15日掲載、次号は3月中旬の掲載予定です)