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連載詳細

高耐久性を追求するために

NEXCO中日本 凍結防止剤散布に伴う塩害に対する更新床版の耐久性照査の取組み

中日本高速道路株式会社
技術・建設本部
環境・技術企画部 構造技術チーム
サブリーダー
若林 大 氏

1.はじめに

 NEXCO中日本では、特定更新等事業において既設橋の床版取替え工事を順次進めている(写真-1)。取替え対象となる床版の多くは老朽化が著しい鋼橋のRC床版であるが、その主たる劣化要因の1つが凍結防止剤散布に伴う塩害である。このため,取替えにより新規に設置する床版(以下、「更新床版」という)では、既設床版で劣化要因となった環境作用に対する耐久性の確保が重要となる。

 NEXCO設計要領1)では、短期間で施工可能なプレキャストPC床版を更新床版の標準形式としており、水の浸入や塩害に対する耐久性確保のための対策として、次の内容を規定している。

・プレキャスト部材の接合部や打継ぎ部に配置する鉄筋は、エポキシ樹脂塗装鉄筋を標準とする。

・接合部の場所打ちコンクリートには、膨張材を使用する。

・高性能床版防水の施工を標準とする。

 これらの対策を実施することで一定の耐久性を確保できるものと考えられるが、環境条件に応じた耐久性の定量的な評価方法については、検討途上である。

 現地条件により異なる環境作用の差を適切に評価し、構造物の設計供用期間100年を確保するための方策として、防せい鉄筋の使用範囲拡大、ステンレス鉄筋や防せいPC鋼材など高耐久な材料の採用、高炉スラグ微粉末等の混和材の利用などが挙げられる。このような耐久性の高い材料を適切に活用し、現地条件により異なる環境作用の差を適切に反映しつつ、凍結防止剤散布に伴う塩害を繰り返さないために、耐久性を照査する指標を定めることが必要である。

 こうした課題を解決するための取組みとして、NEXCO中日本では、既設橋の調査結果や先行工事での取組み内容を踏まえて、凍結防止剤散布に伴う塩害に対する耐久性照査方法の案を取りまとめ、現地での運用を開始した。本稿では、その概要について報告する。



2.塩害に対する耐久性照査の基本方針
 凍結防止剤散布に伴う塩害に対する耐久性照査は、次の方針で行うことを基本とした。
 耐久性照査は、照査期間100年において、塩化物イオン濃度が鋼材腐食発生限界濃度に達しないことを確認することにより行う。
 床版上面の表面塩化物イオン濃度の設定にあたっては、更新用プレキャストPC床版技術指針(PC工学会)2)に準拠し、床版防水層による塩化物イオンの遮断効果を考慮しないマルチレイヤープロテクション※1の考え方を採用する。
 凍結防止剤散布に伴う環境作用は、当該橋梁の区間における塩分量調査データに基づくことを基本とする。ただし、雪氷区間※2においては、NEXCO中日本管内での約1200箇所の調査データより別途定めた標準値(表面塩化物イオン濃度C_0=5.0〖kg/m〗^3、後述)を用いることもできる。
 上記条件で耐久性照査を実施し、耐久性100年を満足するように材料選定を行う。照査の流れを図-1に示す。
※1 多層防護により鋼材の防食対策を実施すること。
※2 上下線別で集計した年間あたりの凍結防止剤散布量が、10t/km/年程度以上となる区間