道路構造物ジャーナルNET

㉕非破壊検査を如何に活用するか

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市
建設技術統括監

植野 芳彦

公開日:2017.12.15

1.はじめに

 今年は雪が早い。寒気と天気予報の雪マークが気になりだした。富山はこれから、暗い季節に突入。職員も除雪が大変だ。例年、約10億円が除雪費に消える。これは橋梁の点検・維持補修費とほぼ同額である。
 前回は、土構造物と非破壊検査について述べてみたが、非破壊検査は期待が大きい割には理解されていなく、使われていないのが実態である。利用する工夫も今後必要である。良く、「見え無いものを見る」と言われるが果たしてそうなのか? 前から言っているように、武器は出来るだけ多くのものを持っていたほうが有利であると思う。武器としての非破壊検査技術は、我々にとって必要不可欠である。しかし、非破壊検査技術はなかなか情報として伝わってこない。これに取り組んでいる方々は、狭い視野に入り込んでしまっている。いかに活用するか? という事を忘れているような気がする。開発者とすれば自分の技術が優れていると言うことを信じているのは、当たり前だが、同様の中に認めさせ、活用してもらうか? を考えなければならない。それには、「実証」というプロセスが大事である。研究室レベルで、自分達だけ満足していても使われない。
 ここに書くことも、内容も実は私の戦略である。というと、疑われるかもしれないが、思っていることを書いてみて、皆さんどういうか?誰が見ているかを視ている。発信するだけでなく、周囲の様子を見ている。反応が無い方が多いと思うが、若いかたがたの反面教師でよいので、参考になればと思っている。

2.非破壊検査を如何に活用するか

 前回、非破壊検査の活用案に関して少し記述した。以下であった。
①メーカーや施行業者が品質管理の一助として検証技術、確認技術として使用する。
②管理者が明確な目的を持ってこれを調査するために行う(点検などの1方策として)
③管理者の品質検査の厳格な検査方法として活用
④コンサルの下請け的に詳細調査等で活用。
⑤非破壊検査会社が橋梁点検などの業務を積極的に受注するための売りとして実施。
 これは、あくまで、既存技術をどう活用していくか? という、一例でありどのように活用するのか?は各企業によって異なると考える。それを考えるのが、皆さんの好きな「技術力」である。私は、非破壊検査会社に居た経験もあるので、ある程度、中身も理解している。勉強させてもらった。インフラ・メンテナンスには必要不可欠な技術であり、それまで、工場や現場、研究室では見てはきたが深く関わってきていなかったので、一時期席をおいて、個々の技術はもちろん、業界の姿勢や体制、やろうとしていること、将来性などを肌で感じてみたと思い、某社に厄介になった。
 そして、今後の技術として、モニタリングシステムなどの開発も、一緒にやらせていただきも実際に数橋に設置させてもらった。(しかも、国交省の案件である)そして今、官側から見ていると、この辺の話題として大きな疑問がまず3つある。

点検しても明確な詳細調査の評価、いわゆるS評価の診断がまったく出てこない。
近接目視だけで、果たして何処まで分かるのか?というよりも分かっているのか?
非破壊検査技術、モニタリング技術を、官庁職員やコンサルが何処まで理解できているのか?

という事だ。
 非破壊検査技術は日進月歩と言われているが、実際はそうでもない。実際には、欧米の技術に頼り、其の改良を行っている物が多い。機器の限界もある。この限界も意外と分かっていないで使用している。低いレベルであり、「できる。できる」と言っても、要求水準までは未だに達しては居ないのが現実である。だから、過度の期待は禁物である。たとえば、鉄筋探査であるが、時々、意地悪で「表面から何cm下まで可能なの?」と聞いてみると、正解値をいえるものは少ない。地中レーダーも同様である。ましてや、探査する事項に対して、どういう方法を採用したか良いか? それがどの程度の精度で確認できるのか? ということを、十分理解できていない。私は検証の意味もかねて複数の探査法を用いて実施すればより確度が増すと思っている。完璧でない限りは本来そうすべきだろう。同様に、モニタリングシステムであるが、目的は何なのか?どういうセンサーをつけるのか? と言うところから明確でなく、つけること自体がが目的になってしまっている。

 私は、非破壊検査技術は、今後活用の範囲が広がっていく可能性が大きいが、複数の手法を用いて検証するなどの結果の担保の確保が重要だと考えている。そして、モニタリングシステムは、目的を明確にし、そのデータをいかに活用するのかまで十分に考えて設置する必要が有る。
 一番勘違いしてはいけないのは、現存の技術では、ほんの表面を見ているだけであり、深層までは見れていないと言うことを理解しなければならない。懸けるコストと結果からも有効なのかどうかの判断が必要である。このへんも、管理者ごと各企業の方針は異なって良いと考えている。いずれにしても、どうしたら精度が上がるかと言う判断を考えるべきである。

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