道路構造物ジャーナルNET

③ 橋梁技術移転と草の根外交!≪キルギス共和国≫

高速道路の橋とともに40年

中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京株式会社
チーフエンジニア(橋梁担当)

宮内 秀敏

公開日:2017.11.20

②施工不良
 構造形式上の問題もさることながら、施工不良も多い。写真‐13の例は工場製作のRC-T桁であるが、多分桁長が足りなかったので、現場で継ぎ足したものと思われる。どうせ継ぎ足すのであれば、上部だけでなく桁下側までお願いしたいものだ。写真-14は、コンクリートが回っていない主桁を、補修あるいは製作し直すことなくそのまま架設している。


写真‐13 現場で桁長を修正?/写真‐14 このようなプレキャスト桁を架設

写真‐15 橋台に玉石がごろごろ

③維持管理されていない橋梁
 写真‐16の橋梁は、RCスラブ桁の側面に大きな水平ひび割れ(左の写真)があり、詳細な点検が必要と判断した。灌漑用水の水がなくなる11月まで待って桁の下に回ってみたのが右の写真である。コンクリートは鉄筋の裏側相当深くまで細かく割れており、一部は土砂化している状態で、手で取ると、「越冬」のため住み着いていた大量の蠅がコンクリートの隙間から飛び出してきたのには驚いた。写真のようなダンプトラックが通ると、スパンが高々10mにも満たない桁が、10cmほどたわんだ。すぐに交通規制をしたうえで、架け替えが必要と、幹部に進言したところ、しばらくして、プレキャスト・カルバートボックスを2基設置して新しい橋梁としていた。

 写真‐17は、単純RC-T桁の橋脚上のつなぎ目付近に入った貫通ひび割れである。工場製作の桁を橋脚上でつないでいるが、多分、無筋状態の部分が大きく、支点反力によりひび割れが発生したものと思われる。橋脚の天端の端部から、ひび割れまで4cmほどしかない。緊急補修を進言したのは言うまでもない。なお、この橋梁にも支承はない。


写真‐16 落橋寸前の橋

写真‐17 天端端から4cmのひび割れ

④劣化速度がゆっくり
 後で紹介するが、橋梁の維持管理に関するマニュアルを、運輸通信省の人たちと協働作業で作成した。それらは、点検マニュアル、健全度評価マニュアルと補修補強マニュアルである。これらのマニュアルは末永く使われるためにはキルギスという国の実情に合ったものでなければならない。そこで、まず橋梁の劣化状況を調査したが、設計や施工の良し悪しは別として、思ったほど劣化していない。寒さの厳しいこの国でコンクリートの塩害らしきのものがない。あるいは、鉄がほとんど錆びていないということが分かってきた。どうしてなのか? 早速聴いてみたら、キルギスではほとんど凍結防止剤として塩を撒かないそうである。冬季の交通確保のために、凍結防止剤の代わりに、すべり止めの砂を撒くのだそうだ。実際、帰国のため空港に向かう幹線道路で、ダンプに積んだ砂を、シャベルで撒いていたのを目撃した。なぜか?塩は高価だから!
 図‐2を見てもらいたい。ビシュケクと東京の気温と湿度をプロットしてクライモグラフを作ってみた。一般に、月の相対湿度が65%以上、平均気温が20℃以上(着色部分)で鉄の腐食速度は急に大きくなる。赤い点がビシュケク、青が東京である。東京は6月~9月がこのエリアに入っているが、ビシュケクは一年を通じてエリア外である。これが、鉄が錆びない原因である。


図‐2 クライモグラフ

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