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③ 橋梁技術移転と草の根外交!≪キルギス共和国≫

高速道路の橋とともに40年

中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京株式会社
チーフエンジニア(橋梁担当)
宮内 秀敏 氏

【橋梁維持管理の現状】

 キルギスには、国際道路と国道合せて、約9,700kmあり、橋梁が約860橋、5本のトンネルが存在する。これらの道路は、運輸通信省(MOTC)の傘下の道路管理局(RMD)と9か所の地方局(PLAUD/UAD)と57か所の管理事務所(DEP)で管理されている。橋梁の規模は非常に小さく、1橋あたりの平均橋長は、わずか20mほどであり、道路延長に占める割合も、わずか0.2%しかない。これは、多くの道路が地形なりに走っており、あえて谷を渡るルートを極力避けていることによる。なお、この国で一番長い橋梁は、橋長150m程度の鋼板桁である。また、橋梁の90%以上を占めているRC橋にはほとんど支承らしきものがなく、桁を橋台、橋脚に直置きにしている。支承があっても、写真-4のように設置方向を間違えているといった状態である。


写真-4 支承の設置ミス

 1991年の独立までは、ソ連の技術者により橋梁やトンネルなど構造物の維持管理が行われていたとのことであるが、ソ連の技術者も引き上げてしまい、現在ではほとんど技術者がいない状況で、独立から現在までの25年余り、ほとんど手つかずに近い状況である。(道路管理者総勢、約940人で地方道も含めた18,600kmを担当している。)また、橋梁台帳もあまり整備されておらず、事実、橋梁数も1,097橋とされていたが我々のチームで現地確認したところ、860橋ほどであった。橋梁台帳があったとしても、橋長や幅員が実際と大幅に違っているなどは決して珍しくはない。

 写真-5は、地方部の国際道路であるが、両側に未舗装部分を残しており、アスファルト舗装は全幅の半分程度である。その理由を聞くと、予算がないからとのこと。本当か? 付け加えると、センターラインもなく(消えている?)、どうしても舗装部分を走行しようとするので、90km/hくらいの高速で走ってくる対向車とぎりぎりですれ違うことになり、結構スリルがある。


写真-5 路肩は舗装されていない(国際道路)

 また、ある時700㎞離れたキルギス第二の都市オシュの地方局から、本省道路管理局を通して橋梁の交通規制の要否判断のリクエストがあった。すぐに国内線で現地に飛びその橋を見た瞬間に通行止めを進言したこともあった。この橋(写真-6)は幹線道路にあり、交通量は多くないものの採石を積んだトラック(推定20t超)も通っている。橋梁形式は、RC-T桁(6主桁)で、ウェブに大きな穴の開いているのは1本の外桁のみであったが、下へ回って見てみると、そのほかの桁も主鉄筋が一部繋がっていなかったり、横桁にあるひび割れは大型車が通るたびに口をあけるといった状態であった。我々調査に来た者は、これを見て危険を感じ、すぐに桁下から退避した。このとき地方局の責任者も立ち会ってくれていたが、管理者責任という概念がなく、「もし橋が崩落して死傷者が出たら、あなたが責任をとることになるのでは?」と言っても理解していないようであった。ただ、JICAの専門家に対する信頼は厚く、我々の提案通りすぐに通行止めにするということであったが、う回路がないのでどうしたものか。仮橋を作るには時間がかかりすぎる。そこで河川の砂利を使って仮設道路を作ってはどうか。春からの出水には、ヒュウム管を入れておけば何とかなるのではないかと提案した。どれほどの期間でできるかと聞くと、2~3日でできるという。その後しばらくして、完成したう回路の写真が送られてきたので、ほっと胸をなでおろした。


写真-6 ウェブに大きな穴が開いた橋


下:この橋梁の桁下面と橋脚の状況