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㉔管理ができやすい構造とは

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市
建設技術統括監
植野 芳彦 氏

1.はじめに 

 だいぶ涼しくなってきましたがいかがお過ごしでしょうか? 早いもので、また1カ月たってしまいました。先月は、台風が何度か来て、小規模な災害が起きた。全国的には、大きな災害となってしまった地方もあり、お見舞い申し上げます。

 近年、災害の規模が増加している。雨の降り方も異常である。「50年に1度の……」という言葉を何度も聞く。気象状況も時代の流れとともに変化している。やはりこのような状況からも、構造物の維持管理は重要であり、被害を極力少なくすることを考えると、少なくとも建設時は、しっかり造っておくことが重要であり、そのための設計においては、良く考えて設計する必要がある。新設時の設計・施工の精度を上げることも重要である。


良質で耐久性のある社会資本ストックを形成しなければならない

「メンテナンスフリー」にだまされるな

2.災害に対する備え

 地震や風水害等の自然災害による被害は依然として発生している。わが国の社会資本は、安全な暮らしを安心して営むためには十分とは言えず、国際的にみても整備水準が低い分野が散見される。橋梁の被害は、人工構造物であるため意外と推定でき、復旧も迅速に行われる。しかし、土砂災害や水害はなかなか対処が難しい。

 従来、社会資本整備は初期投資の議論が主であったが、新規投資が減少する状況では、寿命の長い社会資本の形成など、それによって生ずる便益を現在価値で判断し、ライフサイクルコストを最小化することを目標としなければならないと考えられている。建設投資を増大させるためにも耐用年数が長く、メンテナンスイージー化を図り、機能を十分に長期にわたり維持し、時代に左右されない質の高い社会資本を構築していくことが重要である。

 わが国の社会資本ストックは、社会構造が変化し財政状況の厳しい現在の社会で、国民が豊かな活力を維持しゆとりを持って暮らすためには、中長期的な視点にたち、確実に「必要な量の良質で耐久性のある社会資本ストック」を形成することが求められている。これまで以上に戦略として確実に社会資本を整備し管理していかなければならない。今、ここ数年で必要で良質かつ量的にも満足できる社会資本ストックを形成しないと、わが国の経済成長潜在力はいっそうスパイラル的に低下することとなる。特に、地方財政はついていけなくなる。

 そして、「メンテナンスフリー」などというのは、現実的には無理である。メンテナンスは必ず必要である。「メンテナンスフリー」とだまされて造ってしまった物が、ボロボロになっていて維持管理に苦慮している場合も多々ある。さらには、計画・設計・施工の不都合により、初期の段階ですでに、ハンディを持っている構造物がどれだけあるか? 常時に問題があれば、災害時にリスクをしょって対応しなければならないのは、誰でもわかるであろう。


土中に隠れている構造物の点検は難しい

 管理できない構造物は作ってはいけない

3.土砂災害の難しさ

 橋梁などの構造物は、比較的単純に壊れる物である。しかし、のり面などはそうは行かない。土構造物は難しい。



こういった大規模のり面はどう管理していくのか?


 昨年、ある橋梁の橋台に接する、擁壁が崩落した。原因は、雨によるものとされたが、実はこの擁壁は「テールアルメ」で、鋼製のストリップが腐食により破断し崩落したものであることが、分かってきた。現在、その原因の特定分析を、国総研や土木研究所、テールアルメ委員会などで行っているが、正直言って時間が掛かりすぎている。



崩落したテールアルメ


ストリップの破断面


 わたしが、国土センターに居た時に、テールアルメの委員会を隣のグループがやっていたのを記憶している。テールアルメは、用地の制限や垂直に切り立った場所などに有効に使えるので、重宝されている。道路高架やJRなどのアプローチ部の壁面や住宅地でも使用されている。つまり、危険は身近にあるということだと思うので、最初に土木研究所に相談した次第である。原因が富山のあの現場特有の問題であれば、問題は無い。しかし、そうでない場合は大変な問題である。さらに、土砂災害は、地形や地盤の問題が大きく影響するので、かなり難しい問題である。何よりも、土中にもぐってしまっているので見えないことが大きい。

 しかし、鋼板(メッキ鋼板)の腐食は、当然土中に長年入っていれば、起きて当然である。私は最初に勤務した会社が東電など送電用の鉄塔も作っており、自社でメッキ槽も持っていた。研修で亜鉛メッキの勉強もした。空気中に存在する、送電線の鉄塔(亜鉛メッキ部材)でさえ、メッキの寿命は40年程度と言われている。表に出ていれば点検も容易であるが、土工構造物はなかなか、点検すら出来ない。管理という観点からすれば、厄介な代物である。

 新設のときは、いろいろ考えていると思われるが、管理という観点が抜けてしまっているのだ。橋梁は表に出ているが、下部工や基礎は土中に隠れている物が多い。こういったものをどう管理していくのか? そろそろ考えていくべきであろう。

 そもそも、管理できない構造物は作ってはいけないのである。たとえば、吊り橋や斜張橋をある時期作った自治体がある。「ああいう橋が欲しい」という発想で架けられたようだが、厄介な物を作ってしまったなと感じる。「管理が出来るのか?」という疑問である。こういうとまた、景観の方々から批判を受けるが、デザイン性を否定しているのではない。そのたとえば斜張橋をキチンと管理していけるだけの能力と財政力が備わっているか? という事である。幸いにも、私のところには斜張橋は1橋のみである。