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-分かっていますか?何が問題なのか- ㉚『メンテナンスの扉』が開きましたか?

これでよいのか専門技術者

(一般財団法人)首都高速道路技術センター 上席研究員
髙木 千太郎 氏

重要なトラス格点部の水処理

2.維持管理を人任せにしていませんか?

 ここまでくどいように橋梁管理の方法について種類と特徴を説明したが、次に皆さんご期待の最近大きな疑問を抱いた維持管理の現状について、具体的に私の感じた問題点を指摘しよう。

 第一の事例は、1964年12月に建設された河川を跨ぐ鋼トラス橋である。供用開始後53年経過しているが、各鋼部材は多少断面欠損してはいるものの概ね健全な状態といえる。今から8年前に写真-5に示すよう種々な面で配慮し再塗装を行った。


 採用された塗装仕様は、腐食が特に厳しい箇所に超厚型エポキシ樹脂塗料、下塗り2層に弱溶剤型変性エポキシ樹脂塗料、中・上塗りに弱溶剤型ふっ素樹脂塗料となっている。再塗装の仕様としては、私の考える重防食仕様であること、特に、腐食環境の厳しい部分に超厚膜エポキシ樹脂塗料、それも海水飛沫帯にも耐久性のある固有名称は控えるが私も以前何度か使ったことがある耐久性の高い塗料を使っていることは評価したいと思った。しかし、ここで重大な問題を二つ話題として提供したい。一つは、トラス橋特有の格点部分の水処理である。トラスの格点部分は、主構造が集まること、ガセットプレートで覆われていることから雨水や塵埃が溜まりやすい。写真-6でも明らかなように水が常時滞水している状態が見て取れる。先の、腐食環境に厳しい箇所に関する特別の配慮が、格点部にもほしかった。


 解決策としては、私が問題とする格点部分に、水抜き穴を設けるなどの追加対策が必要ではないだろうか。水勾配等を考え、部材に水抜き穴を適切な箇所に開けることは軽微なことで大事ではないのだが。さらに驚いたことには、当の管理者から黒色の塗料について、既に使用が禁止されているタールエポキシ塗料との説明があった。私的な橋梁ならいざ知らず、公共施設に使用が禁止されている塗料を、それも10年前に、それは無いでしょうとなる。私が無知で、技術に疎い机上の空論を展開する似非技術者であるならばこの説明に疑問も抱かない。私は違う、少なくとも技術者の帽子を被っている。私は、当該橋梁の周囲を見回し、橋梁の側面に表示されている塗歴表示(再塗装年月、塗装仕様、商品名、塗装会社等)を確認した。施工業者には誤りはなく、禁止塗料による施工ではなかった。そこで、塗装されている仕様と特徴を担当者に説明したが、これまで一度も塗歴表示を見たことがなかったことは歴然であった。私は、非常に残念でならない。予防保全型管理を進めるのは望ましい。しかし、一度くらい現場に行って、見てみましょうよ、自分が管理する構造物がどんな状態で、何が施工記録として書いてあるのかを。


泥臭い『プロフェッショナルエンジニアリング』こそ必要

 次に、床版打ち換えを行った時の処理についても一言言いたい。写真-7でお分かりのようにトラス主構に接触するように地覆を立ち上げている。当初の幅員が不足していることから、苦肉の策?で主構造に抱かせるように構造変更したのは理解できる。もしそうであるならば、主構造とコンクリート地覆の接触面に何らかの工夫(防食処理)をするのが本来ではないのか。例えば対策として、腐食環境(飛来塩分や凍結防止剤散布等)が厳しい箇所には、FRPシートを入れた超厚膜型エポキシ樹脂塗料やペトロラタム系防食テープなどが優れた防食機能を発揮する。そのような配慮がなされていれば、写真-8のような鋼材の著しい腐食が再塗装後数年で確認されることは無いと思う。行政技術者として重要なことは、種々な技術や経験を積むことは当然必要と考える。しかし、自分の管理する施設、橋梁を本当に診に行っているのであろうか? 予防保全型管理、長寿命化等メンテナンス時代の言葉は踊る、しかし、実態が付いていかなければ何の意味もない。恰好の良い、技術論にたけた『スマートエンジニア』ではなく、泥臭いが構造物の実態を良く分かっている『プロフェッショナルエンジニア』になりましょうよ。


 ここに事例をあげた道路橋を見た時に感じた私からの『お小言』を一言。トラス構造で下路橋とする場合、一般的に2主構の横倒れを防ぐ目的で橋門構(Portal Bracing)を設置する。橋門構は、下路トラス橋の顔である。

 写真-9を見てほしい、私は悲しかった。ここに示した大型車両の接触で変形座屈した橋門構を床版打ち換え工事の際に直すことはしないのであろうか? 床版の打ち換えを行うことは、足場も架けたし交通規制もしたであろう。少しの手間と費用で見違えますよ、トラス橋が。

 写真-10に示すアメリカで建築限界を犯した大型車両の接触で部材が破損、落橋した事例を知らなかったのか、見たとしても何とも感じなかったのかここの管理者はとも思った。少なくとも私は、自分の管理していた道路橋で橋門構が通過車両の当て傷や変形を確認した場合、その多くは可能な限り補修していたし、必要であれば、通行車両を制限するゲート等をも設置した。それよりも、多くの利用者が見る、愛する橋梁の顔に傷があることを可哀そうと思い、いざという時に役立つようにしっかり治しておこうと処置することが、管理者の橋への愛情だと思う。もう一度、写真-9を見て傷だらけでも頑張っている現役道路橋を直したくなりませんか? 貴方は。

 さて今回の締めとして、橋梁の維持管理の本質を示して終わりとしよう。