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シリーズ「コンクリート構造物の品質確保物語」㉑

東北地方整備局編最終回 より早くより良い復興道路を造る

横浜国立大学
大学院 都市イノベーション研究院
准教授 
細田 暁 氏

300人規模の勉強会を3回開催

 コストも意識しつつ標準レベルを少し上げる

 遠藤 勉強会はこれまで300人規模のものを3回行っています。私が行った最初のものは26年12月でした。

 細田 遠藤さんが行う前に26年2月に1回目がありました。

 遠藤 1回目に引き続き、試行工事から本施工に適用された26年12月1日に工事例などを紹介しました。250人の予定でしたが、約310人が集まり、会場に入りきらないくらい出席者となりました。その次の勉強会は産学官協働で行った28年4月20日のものです。「コンクリート構造物の品質確保の手引き(案)」を出してから間もなく、手引きの説明と、その事例の紹介でしたが、200人予定のところ約250人が参加してくれました。そして、29年3月1日の勉強会では250人に、ひび割れ抑制と凍害の参考資料の説明を行いました。

 勉強会の参加者を集める苦労はありません。建設業や橋梁関係の業者やコンサルタントなどに声をかけましたが、みなさん品質確保などに興味があり、会場の都合で出席希望を断るのに大変でした。

 細田 この取組みで構造物がどの程度よくなるかは後世に判明すると思いますが、数百名規模の勉強会は、関係者のレベルアップには効率的でよかったと思います。学会でも同じような会を開催しますが、我々の勉強会の聴講者は現場の最前線の方々です。監理技術者の方をはじめ“生”の現場の人たちに真剣に聞いてもらえるのは、レクチャーする人間も気合が入りますね。

 遠藤 発注側については現場監督員や現場を担当している係長を基本に呼びかけをしています。それだけでも60人~90人集まるし、施工者の現場代理人や監理技術者も参加しています。総合評価方式で技術提案にも関わってくることもあるので、業界の方もぜひ聞いておきたいと考えているのでしょう。

 細田 佐藤さんは「私たちがやろうとしていることは、考え方としては単純」と言っていました。私もそのとおりだと思っていて、「品質確保をきちんと行う、耐久性確保にはフライアッシュや高炉スラグを使う、条件が厳しいところはエポキシ樹脂塗装鉄筋を使う」など、考え方だけならば、紙1枚ですむようなことです。しかし、現実にコンクリート構造物を施工するとなると、さまざまな課題が出てきます。例えば、フライアッシュをすべて使用しようとしても、PCのもともと粘りのあるコンクリートに入れたら簡単には施工できません。

 川田建設の阿久津豊さんという方が、釜石山田道路の八雲跨道橋でPC箱桁の高耐久化に取り組んでいます。箱桁を橋脚から張り出していくと張り出すブロックには拘束ひび割れの発生が懸念されます。そこで、構造物の耐久性のためには桁端と橋台の耐久性を上げておけば最低限の防護にはなるだろう、という考え方で、桁端の張り出しの最後のブロックだけ高炉セメントで先に打つというやり方です。端部のブロックのうちの横桁のあるボリュームの大きいところだけ別に足場を作って先に打って、最後に張り出し部との剛結をします。そうすると、端部はマスブロックであるにも関わらず、外部拘束がないからひび割れのリスクも少なくなるとのことです。やはりフライアッシュを現場打ちのPCで用いるのはハードルが高く、高炉セメントならば可能だと判断して採用したみたいです。

 阿久津さんは現場所長ですが、打込みのときには必ず現場に来てバイブレータの捌き方など、最前線で指導しています。品質確保や高耐久化を実践しようとするなかで、さまざまな物語が生まれ、人が育ってきています。

 遠藤 それは大事なことだと思います。私たちも税金を使って仕事をする以上はコスト感覚が必要です。例えば、エポキシ樹脂塗装鉄筋をすべて使用するのではなく、損傷が発生しやすい箇所に重点的に使用するといったようなことを考えて行っていくべきだと思います。28年3月に東北地方整備局版の「設計施工マニュアル(案)[道路橋編]」を改訂しました。手引きを見ながら、致命傷となる箇所を最低限保護するために改訂したマニュアルです。例えば、PCならば桁端の水かかりの部分だけは塗装をする、シースに関してはPEシースを標準として使用するといった内容になっています。橋梁点検結果や手引きなどの取りまとめの経験を踏まえて、対外的に説明できる範囲のなかでつくっています。


プレテンT桁に対する防錆仕様


ポステンコンポ桁に対する防錆仕様


RC床版の仕様/床版用フライアッシュコンクリートの受け入れ結果


 細田 コストのことも意識しつつ、標準のレベルを少し上げたわけですね。

 遠藤 これまで東北技術事務所などで行った橋梁点検の結果から損傷事例をみて、悪くなる箇所を保護しておけば、長期的な耐久性は相当程度確保できると考えました。


凍害対策に関する参考資料(案)も中心になって作成

 細田 昨年度末には佐藤さんと遠藤さんが中心になって、東北地方の先生方の指導を受けながら「東北地方における凍害対策に関する参考資料(案)」も短期間で作成されましたね。

 遠藤 佐藤さんの3月末の退官が決まっていましたので、ある程度の形をつくっておかないと、今後どうなるか分からないという心配があったと思います。具体的な内容は阿波稔先生、岩城一郎先生、小山田哲也先生、佐藤さんが作成して、私は資料を役所で使うという観点でのチェックだけ行っています。

 資料のポイントとしては、凍害の危険度を設定して、凍害区分と凍結抑制剤散布量で3×3のマトリックスをつくったことです。


凍害対策の内容


凍害区分と対策の種別


凍害による劣化の実態

 マトリックスに対して対策の種別をS、A、Bの3段階としましたが、ほとんどAですむというのが、参考資料のいいところです。Bの対策でよい地域も南部に一部ありますが、凍結抑制剤を散布しないところは東北地整にはありません。種別Aの対策ではコンクリートの空気量を5%程度にするとなっています。東北地整管内にはSの対策を必要とする路線がそれなりにあり、各国道事務所が対策で迷う可能性がありましたので、限定するために対象路線をあげてもらいました。また、コンクリートの空気量がJISで規定されているなかで、空気量を高めで設定することには戸惑いがあると思ったので、現地の状況により問題がないところはSのところでもAで問題ないとの項目をいれました。 まだ、形をつくったばかりですので、どのように運用していくかはこれからになります。

 運用という点では、現在、きちんと行われているのは、品質確保の手引きでの「施工状況把握チェックシート」と「表層目視評価」だと思っています。

 細田 手引きが形としてきちんとあり、それに基づいて専門家が情報を補足しながらレクチャーをするとレベルが高くなりますね。

 あるゼネコンのトンネルに詳しい人と話をしていたら、施工中のトンネルの坑口で空気量7%のコンクリートを使う東北地整の取組みについての話題になりました。空気量が強度に及ぼす問題は置いておいて、フレッシュ性状では7%のほうが扱いやすいらしいです。フワフワした感じになり、狭い閉塞空間での施工となるトンネルでは、むしろ使いやすいと言ってました。国土交通省の標準的な配合ではトンネルの覆工工事がやりにくくて、坑口だけでなく、坑内も7%で施工したいくらいだとその技術者は言っていました。7%を標準とすることは現実的には難しいのかもしれないけど、施工者さんにとっては逆に不具合を防ぐ観点では使いやすいとのことでした。コンクリートにおける空気の問題についても勉強することは多々ありそうです。