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㉑「標準設計」

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市
建設技術統括監
植野 芳彦 氏

1. はじめに

 前回の内容から「標準設計」について書いてくれというので書こうと思ったが、いろいろ問題もあるので、結局、簡単な話になってしまうがお許し願いたい。

 重要なのは「標準化」の考え方の重要性と、ツールを如何に利用するか?という事である。どうも、頭の固い方々は、そのまま使おうとするらしい。これは実は私にとっては信じ難いことなのだ。私は長年、土木構造物の「標準設計」や「設計標準化」というテーマに取り組んできた。それは、非常に面白みの無い仕事であったが、目的は設計作業の合理化、コスト縮減と剛性アップ、施工性・維持管理性の向上だった。この「標準設計」は、阪神大震災後に事実上一部の工種を残し廃止になったが、非情に残念な結果であり、維持管理の時代になった今こそ、本来必要なものである。かつてはインハウスエンジニアが業務を遂行する上でのよりどころでもあったのだ。現在、自治体の職員のみならず、民間の技術者もレベルの低下が見られる。公共施設の老朽化の維持管理という、かつて無い難題に立ち向かわなければならない、今こそ考え方を改めなければならない。


標準設計図書


 世の中には、さまざまな考えかたがある。其れはその人の経験してきたことに裏付けられた物であると思う。だからさまざまな考え方があってもよいのである。「標準設計不要論」と言う話も良く聞いた。私が現在言っているのは「日本のコンサルタント不要論」である。ここで注意していただきたいのは「日本の」と付いているところである。

 話を戻すと、「標準設計」はツールなのでこれを使いこなす技術力も必要だと言うことである。

 標準設計に関しては

標準設計を、いろいろ構想して造った人間

標準設計をそれなりに理解して活用できる人間

文句を言いながらとりあえず使う人間

中身も理解しないで、文句を言って使わない人間

 とさまざまなタイプに分かれる。①はほんのわずかな人間、②も少数派③が圧倒的多数④は真のレベルの高い技術者か?まったくの似非技術者か?である。標準設計そのものはさほど重要ではなく、その標準化の思考やそれを今後どう取り入れるか? 活用できるか? の部分が重要なのだが、それを理解できる人間も少数であろう。標準設計の問題点としては、もっと時代の流れに敏感に改定や思想転換を実施すべきであったが、それがうまく実施できなかったところにある。

 いずれにしても、与えられた物をどう使いこなすか?という、大事なことを忘れている。使いこなしているつもりになっている。装備も重要だし、与えられた装備でどう戦うか? という事を忘れてしまっている。もともと、特にコンサルは机上論の世界なので、何処まで考えられているかという事を、発注者は見極めなければならない。


2.インハウスエンジニアの役割の変化

 少し話がそれるが、まずここが重要なので書く。かつては、設計から施工の監督までを、インハウスエンジニアが行っていた。つまり、官庁直営でやっていたのだが、高度成長期になると膨大な数のインフラを建造しなければならず、インハウスでの対応が難しくなり、官庁の代行設計からコンサルタントの活躍が始まった。これは、アウトソーシングであり、効率的な業務執行の方策であるが、実際には、さまざまな課題を含んでいる。それらの根本は、日本と欧米のコンサルタントのあり方にあると私は考えている。日本のコンサルタントは現場を知らなすぎる。本来、重要で有る現場の経験が抜けている。これでは、そもそも土木技術者ではない。「設計等代行業社」とか別の言い方もあるだろうし、ちゃんとコンサルティングが出来る業者と分けるべきである。コンサルの皆さんはその生い立ちをキチント見直して、自分達がやっていることをきちんと見つめ直していただきたい。


直営時代

 明治時代から、昭和の高度成長期までは、役所が直営で設計施工を実施してきた。技術力は国や県で確保されており、民間企業は役所から技術指導を受ける立場であった。このときの、上下関係の流れが、現在でも少々残っており、其れが官庁批判になっているが、歴史的な状況を考慮すれば、公共事業の歴史の一幕である。実際、当時の役所では、かなり技術的な勉強も先進的な技術の導入も現在とは比較にならないほど積極的にやっていたのではないだろうか。

高度成長期 ⇒数を作る時代

 高度成長期には、数多くの事業をこなさなければ成らず、インハウスノエンジニアだけでは処理しきれないことから、業務委託という形でコンサルタントに設計などの業務を委託し、工事は施工業者に発注し、現場の管理までを見てもらう時代となった。何よりも、数が多いので、出来るだけ効率的に安価に公共事業を執行することが求められ、基準類の整備や、「標準設計」の整備もなされてきた。

現代 ⇒メンテナンスの時代

 社会が成熟化に向い、人口減少などが話題になり、公共事業の不要論まで出るようになると、新たに公共物を構築することが、悪とまで言われるようになった。今後、ますます人口は減少し、税収は少なくなるため、これまで構築した物の管理と言う課題がクローズアップされている。さらには1980年代に「荒廃するアメリカ」という事が騒がれ、いずれ日本もそういう時代が来ると言われた。まさに現代がそうなっている。