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阪神高速道路の維持管理報文連載

⑤ 大規模更新・修繕事業 技術開発(その2)-床版取替えに対応したUFC床版の開発-

阪神高速道路株式会社
建設・更新事業本部 湾岸線建設推進室 課長代理

小坂 崇

公開日:2017.06.16

4 解析・実験による平板型UFC床版の性能確認

4.1 断面破壊に対する安全性
 平板型UFC床版の断面破壊に対する安全性を確認するために、床版厚さ150mm(床版支間長4.0m)に対し、非線形3次元FEM解析を実施した6)。載荷荷重は死荷重およびプレストレス力を考慮し、床版中央に輪荷重を想定した分布荷重(200×500mm)を漸増載荷した。解析結果として荷重-変位曲線を図-10に示す。漸増解析結果によると、UFCひび割れ時の荷重は設計T荷重140kN(衝撃係数0.4)の1.75倍、PC鋼材降伏時荷重は4.14倍、UFC圧縮破壊時荷重は6.07倍であり、断面破壊に対する十分な安全性を有しているといえる。

4.2 疲労耐久性
 平板型UFC床版の疲労耐久性は、輪荷重走行試験によって確認した。輪荷重走行試験については、鉄輪による動的な輪荷重載荷とした。載荷荷重は100kNから30kNずつ加算し最大400kNまでの階段状載荷とし、各載荷段階で4万回ずつ合計40万回載荷した。なお、100kN~160kNの12万回については、床版上に水のある状態で載荷した。この載荷ステップは、既往のRC床版などの輪荷重走行試験を参考に決定したが、阪神高速における実測活荷重に対して100年に相当する等価繰返し回数を大きく上回るものである。輪荷重走行試験の状況を写真-2に示す。

 

 本試験では40万回(最大400kN)の輪荷重走行試験に対して平板型UFC床版は破壊しなかった。載荷ステップにおける要求性能と試験結果を図-12に示す。阪神高速の実測活荷重で換算すると100年に相当する荷重は載荷ステップ160kN(10.8万回)相当であるため、試験により平板型UFC床版は要求性能に対して十分な疲労耐久性があることが確認できた。既往輪荷重試験(PC8-1、PC8-2)は過去に実施されたPC床版の試験結果7)である。

 

4.3 塩化物に対する耐久性
 耐久性の比較としてPC床版、UFC床版の鋼材位置における塩化物イオン濃度の算出結果の比較を図-13に示す。塩化物イオン濃度はコンクリート標準示方書8)に準じて算出した。表面塩化物イオン濃度として13.0kg/m3(飛沫帯)を想定し、かぶりをPC床版は70mm、UFC床版は20mmとした。塩化物イオン拡散係数DdはPC床版を0.251、UFC床版を0.002~0.006(AFt系UFCの実測値は0.002)として計算した。鋼材の腐食発生限界に達する年数はPC床版に比べて約3~10倍長く、高い耐久性を有していることから凍結防止剤等の高頻度地域では特に有効といえる。

 

4.4 施工性確認試験
 工場製作のプレキャスト部と現場施工の場所打ち部の接合構造として、伸縮装置部、壁高欄接合部,排水桝取り付け部の施工性を検討して、写真-3のように、工場製作部分の試験製作を実施し、提案する詳細構造の製作性に問題が無いことを確認し、出来形確認時に地覆等の鉄筋埋め込み部について、鉄筋の拘束によるUFCのひび割れが生じていないことを確認した。また、現場施工部分についても写真-4のように試験施工を実施した。スタッド孔における溶接施工時の施工空間や、モルタル充填に対する流動性の影響等の知見が得られたため、実施工時に反映したいと考えている。

 

5. おわりに

 軽量かつ耐久性の高いUFC床版の既設RC床版の取替え工事への適用性とその効果を示した。また、解析および実験による平板型UFC床版の性能確認によって高い耐荷力、耐久性を有していることを示した。UFC床版は実用化の段階に至っており、既設RC床版をUFC床版に取り替えることで、既設橋梁の耐震性を損なうことなく構造物を長寿命化することができ、安全・安心に寄与できるものと考えている。

謝辞:本研究を行うにあたり大阪大学 松井繁之名誉教授、長岡技術科学大学 長井正嗣名誉教授、東京工業大学 二羽淳一郎教授、岐阜大学 内田裕市教授および神戸大学 三木朋広准教授にご指導を頂いている。ここに感謝の意を表します。また、鹿島建設㈱と公募型共同研究を遂行しており、貴重なご意見を頂いている。ここに深く感謝の意を表します。

〔参考文献〕
1) 土木学会:超高強度繊維補強コンクリートの設計・施工指針(案)、2004年9月
2) 土木学会:超高強度繊維補強コンクリート「サクセム」の技術評価報告書、技術推進ライブラリーNo.3、2006年11月
3) 土木学会:超高強度繊維補強コンクリート(UFC)道路橋床版に関する技術評価報告書、技術推進ライブラリーNo.17、2015年7月
4) 樽谷早智子、一宮利通、齋藤公生、小坂 崇、金治英貞:UFC道路橋床版の接合構造に関する実験的検討、第69回年次学術講演会、土木学会、2014年9月
5) 藤代 勝、一宮利通、金治英貞、小坂 崇:ワッフル型UFC床版の振動およびたわみに関する検討、第71回年次学術講演会、土木学会、2016年9月
6) 小坂 崇,佐藤彰紀,一宮利通,藤代 勝:UFC道路橋床版の開発と大規模更新への適用性検討,コンクリート工学,Vol.54,No.1,2016年1月
7) 国土技術政策総合研究所:道路橋床版の疲労耐久性に関する試験、国土技術政策総合研究所資料第28号、2002年3月
8) 土木学会:2012年制定コンクリート標準示方書[設計編],2013年3月

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