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⑲インフラ・メンテナンスの地方の状況~点検は誰がやるべきか~

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市
建設技術統括監
植野 芳彦 氏

1.はじめに

 6月議会が始まった。これが出るころには終盤戦だが、職員にとっては議会に向かうことも多く厄介である。年4回の議会、それとその前後に費やす時間は膨大な物だ。富山市議会は、昨年全国的に皆さんをお騒がせしたとおり、半数ほどが入れ替わった。その結果、福祉や教育、子育てという、市民目線の質問が増加してきており、担当部署は大変であろうと思う。建設部関係では、旬の防災関連の質問が増加している。しかし、それぞれ、議員さんも職員もある意味一生懸命やっていると感心する。

 実はもう時効なので明かすが、干されていたときに、「遺恨十年一剣を磨く」の心境で、3年間ほど永田町の政経塾(中央政治大学院)に通った。もちろん立候補も考えていたが、公募に落ちた。(これにも後から調べると、いろいろ裏の話がある)それよりも、「日本の政治の実態」「政治家の生態」「政治家の思考」がどういうものなのか、わが国の政治の根本が実際に知りたかったのだが、著名な政治家の先生や、一流企業の社長の講義が聴けて、いろんな意味で勉強になった。あえて現在の立場から、本件の意見は述べない。興味のある方は、個人的に何かの機会に。

 それにしても、インフラのメンテナンスに関する話題は、何か事故でもないと皆さん興味が無いところである。事故や危機感が迫らなければ、なかなか話題にはならない。北朝鮮の弾道ミサイルよりも、インフラの事故は明日、身近で起きるかもしれないが、その危機感が無い。もっとも、北朝鮮のミサイルも結局、打つ手は無いという意味では同じであるかもしれない。韓国にいた時に、地下鉄の駅が少し変な構造で、質問すると核シェルターになっていたので、危機感の高さと賢さに感心した。


2.点検は誰がやるべきか?

 以前から、確認しておきたかった事項の一つが、橋梁メーカー等、実際に橋を作っている方に点検してもらうほうが有効なのではないか? と言う疑問である。そこで、先日、某PC橋メーカーのご協力をいただき、数橋を一緒に再点検した。一緒に参加した職員いわく「目から鱗でした。判断が(コンサルとは)違った判定をしている。」ということだった。何が違うかと言うと、メーカーの方々は、造るところを視ている、経験しているので、PC鋼材の配置や配筋はもちろん、製作過程や工事での課題なども理解しているところである。現場を見る、実際に造っているところを経験するというのは、物造りの基本であり、必須の項目である。教科書的机上論ではなかなか判断できないものもある。今後、鋼橋メーカーでも実施してみたい。

 今後さらに詰めて行きたいが、将来点検の精度と有効性、コスト縮減を図るためには、造ったことがある者に点検させたほうが有効だと個人的には昔から考えている。点検は橋をきちんと分かっている人間が見れば、最も安価で確実な点検が可能だと思っている。ひび割れや鉄筋露出、さびなどは誰でも分かる。そうではなくて本来はそれが、橋梁全体に及ぼす影響や原因の特定、疑い、何がおかしいか?などを感じられる。土木の世界は本来、絶対、現場主義なのである。

 補修設計を行い、補修を実施するに当たっても、もうそろそろ、その効果の評価が重要だと思っている。ある程度の、再劣化は仕方が無いが、あまりにも早いと、無駄な補修をしたことになる。経年劣化を評価し、その材料や施工が正しかったのかを評価し将来に生かす。これがPDCAなのだが、そういう話が出てこない。本来これも、実際にやっているものが考えたほうが良い。

 日本では、デザインビルドもあまり進まないが、維持管理関係は橋梁専門業者がやるということが無駄を省く意味でも重要であると考えている。(編注:具体例)現在、点検の実施率ばかりが議論されている。しかし、点検の精度のほうが重要である。実施率は何か期限を付けないとなかなか実施できないという日本人の悪いところである。ある意味、政治家的判断であり、実が無い。点検するかしないかは、管理者の責任で考えればよいのである。見なくてもよいと判断すれば、しなくてよいし、必要だと思えばすればよい。いくら点検を実施しても、精度が悪ければ、間違った判断をしていくことになり、そちらのほうが問題である。ただ、最低限、一度は点検すべきではある。それを持ってその後を判断すればよい。

 コンサルさんの仕事が無いとよく言われるが、それはしかたがないことである。そんな状況は30年前から分かっていたことである。何の手も打てて居ないのは経営の怠慢だと思う。必死に打開策を練って対応している企業もある。こういう時代が来たことを、もっと国民に知らせるべきなのだ。


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