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⑱インフラ・メンテナンスの地方の状況~モニタリング~

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市
建設技術統括監
植野 芳彦 氏

1.はじめに

 新年度が開始し、はや1ヶ月です。いかがお過ごしでしょうか?


 連休前の4月28日には、国土交通省総合政策局主催のインフラメンテナンス国民会議の一部のメンバーの方々に、富山市での取り組みに関しての話をする機会を得た。これまで、内閣府、経済産業省で自治体のインフラの実態に関して話をしてまいり、やっと、本丸に斬り込む機会を得たことは、うれしい限りだ。

 しかし、自治体の実態に関しては皆様、認識が薄い。わが国のインフラの多くは、自治体に存在する。その実態が分からないでの議論は意味が無いと感じた。現在、多くの方々が、インフラメンテナンスに興味を持って、取り組まれているが、「なにか商売になれば」という感覚では、問題解決は出来ない。実態を知ってこそ、はじめて解決できると考えるのだ。

 世の中には、いろいろ課題が有って、多くの研究会や勉強会ができ、多くの方々が参加しているのを見る。そんな中、うまく行くものといかないものが出てくる。会は存在するが、何をやっているのかわからないものも多い。そんな時よく私が言うのは、「客車ばかりがつながっていても、動きはしない。動かすには、機関車が必要ですよ。」と。


2.モニタリング考

 そんな中、また最近モニタリングシステムに関する相談を受けたり、意見を聞かれたりする機会が多い。これに関する考えを述べる。


モニタリングシステム構成例


 「モニタリングシステム」において重要なのは、「目的」である。何のために、何を計測して、どう活用するのか? これが明確でない場合が多々ある。一体、何をしたいのか? ということである。私は、目的によっては、付けるべき、やってみるべきであり、「付ける」だけならば意味は無いと考えている。仮に研究テーマであるならば、其れを理解した上での設置は有効であると考えている。

 よくあるのが、「付けて見たい」というものだ。これは、全く目的も何も無くなのか? 今後のために、発展的に着けたいのかどうか? で違ってくる。さらに、何を測定・検知するのかであるが、よく、言われるのが「ひずみ」である。「ひずみ」はひずみでそんなに検証したければそれでも良いが、何のためにひずみを測定し、その結果から何を導き出すのか?と言うところが考えられていなければ、無意味なものと成ってしまう。

 さらに、自治体の事情としては、設置費用が大きな問題となる。現在、腹黒い私は、モニタリングシステムを付けたいという企業が来ると、とりあえず、実証試験という事にして、無料で付けてもらっている。橋梁を貸して実際に設置して検証してもらうのである。ただし、その結果や成果に関しては、発表してもらって結構だといっている。学会でも雑誌でも新聞でも発表してもらい、企業の実績として使ってもらって結構なのだ。富山市ということも公表してもらって結構である。


関東で実装した例

 現在、RAIMSを除き、企業単体で3社、大学が1校、実証した。問い合わせや付けたいという希望はあるが、「無料で」と言うと、それで去っていく企業もある。これは新技術の実証と同様で、山のものとも海のものとも分からないものを、発注してまでは、取り付けて実証することは、難しい。それによって成果を得て、実績としてその後スムーズに社会に導入されれば、この上もない。


四国で実装した鋼床版トラフリブ溶接部の疲労クラック幅計測


 「フィールドは積極的に貸します。」と言うのはそういうことである。ここで重要なのは、大学等の研究機関と民間企業では目的も望む成果も違うだろうと考えるが、そうでは無い場合が多い。民間企業が研究的な目的のまま取り付けているケースが多々ある。富山市のような弱小自治体では、高価なモニタリングシステムを設置するのはまず無理であり、なるべく単純な安価なシステムを望む。おそらく、多くの自治体がそうであろう。それを理解しないで取り付けようとするのは無意味である。おそらく目的が見えなくなっていて、他人に頼りそういう結果になってしまう。もし、センサーの企業や電気システム、計測器関連の企業で、モニタリングシステムの開発を研究しているのであれば、大学やコンサルに相談するのではなく、管理者に相談したほうが現実的である。管理者が何に困っていて、何をどうしたいのか、きちんと考えている方々に相談していけば、導入も早いのではないだろうか?


RAIMSのモニタリング(富山市の五福4号橋 1927年供用、橋長12.7m、RCT桁)


 いずれにしても、モニタリングシステムの検討時期は終息に向いつつあると考えている。今後、富山市においては、「橋梁トリアージ」の結果を元に、目的を定めて要求に合うシステムがあれば、設置していくことも検討したいと考えている。おそらく、実装に当たっては、自治体の管理する橋において「ひずみ」は判断しにくい要素であるので、できれば分かりやすい要素から判断したほうが良いのではないかと私は考えている。