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⑰維持管理分野は新たにつくるもの

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市
建設技術統括監
植野 芳彦 氏

1. はじめに

 いよいよ、新年度です。3月中は役所では恒例の人事異動で皆落ち着きませんでした。私は、役職が微妙に変わり「建設技術統括監」となり、これまで以上に権限が増します。この辺の役職名の違いの意味が良くわからないが、まあ決められた物なのでありがたく拝命する。私の任期切れを待ち望んでいた方々には、誠にご愁傷様です。今後は、これまでの3年間を活かし、より厳しく、まい進いたしたく思います。幸いなことに、私の人事の発表が、一般職員とは別に出されました。地元紙等マスコミさんがたは、見落としたのか? 載せるまでも無いと思ったのか? 新聞発表されませんでしたので、いまだ、期待されている方は多いのではないかと思います。改めて、マスコミの取材力の低下、一方向性が懸念されます。事実、新年度の挨拶に来られた方も、私の部屋は飛ばしていかれます。(人気がないのか、必要ないと判断されているのかもしれません)。


 さて、橋梁のメンテナンスを対応する「橋りょう保全対策室」は、1名増員の10名体制となり、より充実することが出来た。この、3月議会では、橋梁のメンテナンスに関する質問や、私への御指名の質問もあり、議会本会議で答弁させていただいた。質問の意図は、議員さん方からの応援だと感謝している。

 ということで、今回はこれまでに感じていることをまとめる。

 これまでも今回も、あまり技術的なことは書いていない。私はこの場では論文や報告文ではないので、技術論は書きたくない。技術的なものをこういう場で書くと。勘違いする人間が出てくるので、そういうことはしたくない。特に維持管理は、技術論だけで論ずべき物ではなく、地域の状況(住民・首長・議会 等)、さらに財政能力、地域産業、安全安心、災害への備え、地域の技術能力などの総合力で求めるものであり、最終的には所管官庁の担当者の人間力で決まると考えている。


2. この3年間で学んだこと

 仕事人生の多くを東京で過ごした。さらに、いわゆる通常の1件設計の案件数は少ないが、基準類の策定、新規事業の策定、積算体系の改定等の濃厚なものをやってきた。地方に来てみて感じるのは、中央と地方の違いである。「地方創生」とか政府は言っているが、何が問題かというと情報量が全然違う。よほど気をつけていないと、情報が入ってこない。たとえば、土木学会の委員会の参加も自粛していたし、その他の活動も自粛していた。地方の自治体の実情は、満足な交通費も無いのである。「止まっていると死んでしまう」と言うのは、実はそこなのである。自分の席で、ノンビリしていると、取り残されてしまうと言う危機感が常にある。今後は、肌で感じた地方の実体を伝えることで、社会の役に立ちたいと考えている。

 まず、「(官庁では)維持管理の技術者の高齢化や定年退職による数の不足。技術の伝承不足により技術力の低下が問題である。」とよく言われる。しかし、良く考えてもらいたい。

 「元々、維持管理の技術者は居なかったのだから、そんな心配は要らない。必要なことをやればよい。」次に「技術力の低下の問題は、元々無かったし、それは役所だけの問題ではない。民間側もひどいものだ。」ということである。みなさん、経験が不足しているのだがそれに気づいていない。橋の点検をして入るが、橋を見る量が足りない。

 さらに、なかなか地方のことは見え難い。最近、依頼が多いのは国土交通本省以外の複数の霞ヶ関の中央官庁から「地方の実態が聞きたい」「(植野さんは)中央も地方も精通しているので話が聞きたい」という依頼が増えてきた。事実、中央の方が考えているのと地方の実体は違う。そのなかでも、自治体によって特色や県民性によってかなり違うと思う。ここで、「県民性」とは言わないほうが良いという方も居る。しかし、事実違うので、地方の状況を把握・理解するうえでは分析をしたほうがよいし、価値がある。

 皆さん、「技術力」とか、技術のことを盛んに気にされるが、もともと、橋梁や構造物、ハードに詳しい技術者は、官も民も少ないのが現実である。特に自治体は、「街づくり」が主体に行われているので、その中に構造物や橋は有るが、其れを本格的にやった人間は居ないといってよいだろう。それをやれと言っているのだから無理がある。コンサルさんのほうが知っていて当たり前なのだ。だから、前述のような、懸念はもともと要らない。逆に、新たに作らなければならないのだ。ここを間違うと大変なことになる。