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両橋ともクレーン2台を用いて中央から両橋台へ床版を撤去・架設

NEXCO中日本 東名高速道路下長窪橋(上り線)、愛鷹橋の床版取替工事を公開

公開日:2019.02.09

 中日本高速道路は1月31日、東名高速道路下長窪橋(上り線)、愛鷹橋の床版取替工事を公開した。両橋とも新東名開通前は7~10万台の交通量を擁し、大型車混入率(大混率)も3割弱に達していた。その反面、当初の床版厚は180mmと薄く、床版支間も最大で4mほどありたわみやすい状態で、後に縦桁や鋼板接着、上面増厚などを施したものの、疲労起因による損傷が目立っていた。そのため今回床版を全面的に取り換えるもの。両橋とも非合成桁であり、今回合成桁化することで応分の補強も必要となる。また、同時に塗装塗り替えも行う予定だ。(井手迫瑞樹)

下長窪橋 新東名開通後も大型車通過台数は1日1万台超  床版支間は4mに達する

 下長窪橋は、東名高速道路の裾野IC~沼津IC間の1級河川谷津川を渡河する位置に架かる1969年3月に供用された橋長110.8mの鋼4径間連続3主鈑桁橋だ。新東名開通前直近の交通台数は約71,000台・大型車混入率約38%、現在は約34,000台・大型車混入率約32%(共に車両検知器による計測データ)、床版支間も4mに達するためたわみが生じやすく疲労に対して厳しい条件が重なっていた。そうした条件を緩和するため、74年には縦桁を増設、93年には損傷の目立つ箇所で鋼板接着補強を施した。さらに00年には床版増厚を行うとともに防水工も設置するなど手をかけたが、主に床版下面の損傷から19年後の現在、床版を取り替えることとなった。

下長窪橋一般図 床版取替以外に塗装、支承取替、疲労亀裂補修なども行うようだ (井手迫瑞樹撮影、以下注釈無きは同)

 床版取替施工中は、下り線を対面通行規制して施工する。図のように対面通行規制設置作業時、床版取替時、対面通行撤去作業時によって車線規制位置は変わる。安全を考慮してコンクリート製防護柵を用いているが、クレーンによる設置・撤去では長い時間を要する。そのため、既に大規模更新現場で実績のあるロードジッパーシステムを採用し、3kmにおよぶ防護柵の設置、移動、撤去の作業に要する時間を大幅に縮めている。


下り線を対面通行規制して施工している

 床版取替面積は約1,100㎡。これを51枚の版厚240mmのプレキャストPC床版パネル(PCaPC床版パネル)を用いて交換する。施工はA1、A2側にそれぞれ1台ずつ220tオールテーレンクレーンを配置し、P2から両橋台へ向けてそれぞれ作業した。1日当たりの設置パネル数は最大で片側6パネル。6日間でパネルの設置を完了させる予定だ。

床版の撤去(左、中)、トレーラーに積まれたプレキャストPC床版パネル(右)

 高欄は三井住友建設が開発したプレキャスト壁高欄「EQ-WALL」を採用した。通常、東名高速道路の壁高欄内には通信管路が6条必要であり、路肩側においては従来のプレキャスト壁高欄では配筋が困難であったが、今回通信管が挿入できるような形状にしたプレキャスト壁高欄を新たに開発した。EQ-WALLの標準延長は4mでPCaPC床版パネル2枚につき1ブロック施工する。  2月末までに壁高欄の施工を終え、3月9日の対面通行解除までに高性能床版防水および舗装工を完了させる予定だ。元請は床版取替が三井住友建設・横河ブリッジJV。橋面工(床版防水・舗装など)が鹿島道路。

 

愛鷹橋 新東名開通後も大型車通過台数は1日1万台弱  増厚や床版防水は未施工

 愛鷹橋(上り線)は東名高速道路の沼津IC~富士IC間の沼津市岡宮に架かる1969年3月に供用された橋長126.2mの鋼3径間連続4主鈑桁橋だ。新東名開通前直近の交通台数は約73,000台・大型車混入率約36%、現在は約35,000台・大型車混入率約28%(共に車両検知器による計測データ)、床版支間は4主桁のため下長窪橋ほど疲労条件は厳しくない。81年には縦桁を増設、同年代には損傷の目立つ箇所で鋼板接着補強を施した。ただし下長窪橋のような増厚は行っていない。防水工も未施工であった。近年、疲労による損傷が目立つため、床版を取り替えることにした。

愛鷹橋の施工 一部電光掲示板をかわして施工しなければいけない局面もある/合理化継手を採用した
 

 床版取替施工中は、下り線を対面通行規制して施工する。ここでも規制用ブロックの配置はロードジッパーシステムを採用している。  床版取替面積は約1,500㎡。これを54枚の版厚230mmのPCaPC床版パネルを用いて交換する。現場ではA1側に250t、A2側に200tのオールテーレンクレーンを1台ずつ配置し、中間部から両橋台へ向けてそれぞれ施工した。1日当たりの設置パネル数は最大で片側6パネル。5日間でパネルの設置を完了させる予定だ。

ここでも2台のクレーンを使用/床版の設置状況/上フランジ上面の研掃

 2月末までに壁高欄の施工を終え、3月9日の対面通行解除までに高性能床版防水および舗装工を完了させる予定だ。元請は床版取替がピーエス三菱・川田建設・駒井ハルテックJV。橋面工(床版防水・舗装など)が前田道路。

(2019年2月9日掲載、3月下旬に『現場を巡る』ページで両現場とも完全版をお届けする予定です)

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