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最優秀論文は「橋梁計画におけるコンセプト設計の導入~世界に誇れる橋梁を目指して~」

阪神高速道路 第50回技術研究発表会を開催

公開日:2018.06.01

 阪神高速グループ(阪神高速道路、阪神高速技術、阪神高速技研、阪神高速道路技術センター)は5月30、31日の2日間、大阪朝日生命館で技術研究発表会を開催し、2日間で約400人が来場した。50回記念となる今回は、大阪湾岸道路西伸部や淀川左岸線延伸部などビッグプロジェクトが走り出したこともあって、建設・更新29編、計画・交通・サービス・環境25編、維持管理45編と建設・更新の論文発表が増加した。最優秀論文賞は阪神高速道路建設更新事業本部 神戸建設所 設計課 杉山 裕樹氏による「橋梁計画におけるコンセプト設計の導入~世界に誇れる橋梁を目指して~」が選ばれた。(文、写真とも井手迫瑞樹)

 幸和範社長(右肩写真)は冒頭の挨拶で「今年度の阪神高速グループの最重要課題は①ネットワーク整備の推進、②リニューアルプロジェクトの推進、③お客様満足施策の着実な実施と充実――の3点だ。これらの課題に対して非常に限られた組織・人員で取り組んでいき、社会の期待にしっかりと応えていく、従来からの働き方を見直し、生産性を向上させ、業務品質を向上させることが非常に重要となっている。阪神高速グループ各社がそれぞれの専門性を生かして、既存技術の改良、新技術の開発、技術力の向上に継続的に取り組むことによって推進し、今年のグループスローガンである『働き方を変えて、新たな挑戦へ』の実践に繋がっていくと確信している。ぜひ、この研究発表会を活用していただいて、取組を進めていただきたい」と語った。

 特別セッションでは、記念座談会も開催された。森本励計画部長、上松英司経営企画部長、加賀山泰一技術部長、川北司郎保全交通部長、田代千治経理部長が、自らの若かりし頃や、大和川線の計画、阪神淡路大震災などの経験、専門分野で感じたことを振り返りながら「若手技術者に伝えたいこと・大事にして欲しいこと」について座談した。

5人の部長が自分の経験を振り返った
 上松部長は大和川線を振り返り、「上流局面の技術検討や判断こそが、プロジェクト全体の生産性を支配する」と論じ、「技術を創造する力、それを為すための行動力こそが大事である」と語った。
 森本部長は国土交通省の有料道路課の専門官時代に経験した能登半島地震(平成19年3月25日)において、錯綜する情報をどのようにさばき、能登有料道路(当時、現在は無料化して『のと里山海道』)の復旧に道筋をつけたかについて当時の内情を語った。
 川北部長は現場において基準類を金科玉条のごとく考えず、絶えず実験などを行って判断することの大切さを述べた。その例としてHDL(阪神高速道路公団設計荷重)委員会での出来事を例に挙げて「基準とは絶えず最新の知見を反映して見直すものだ」と話した。また、川北氏が若手のころ直属の上司(係長)であった北澤(正彦、元阪神高速管理技術センター理事長)氏の仕事ぶりを回想し、「当時、阪神高速道路の耐震設計の基準を作るために書いては紙を捨て、を繰り返しながら尽力されていたことを今でも覚えている」と語り、「基準というのは自分で作るものである」と結んだ。
 加賀山部長は、入社7年目に遭遇した環状線の落下事故について言及した。同事故は東船場JCT付近において、渡り線から、20tのカウンターウェイトが落下し、床版を陥没させ、桁を変形させた事故である。「すぐに現場に急行したが、当時はデジカメなどは勿論なく、現場状況を伝える手段はポラロイドカメラと無線だけ、そんな中でどのように復旧させるかということにした。穴はあいていたが、損傷は局所的であり、供用している車線の交通には影響がなかった」ことから、早期復旧ができるのではないかと直感した。その上で、実務者や責任者が現場を肉眼で調査しながら復旧方法を検討し、結果的に1週間程度で復旧は完了したことを例にあげ、「現場(を見て判断すること)の大切さ」を強調した。
 田代部長は、経理上の技術や決めごとを丁寧に説明しつつ、事業を円滑に進めるためにも事務方の言葉をよく聞き、事務方をうまく使うことの大切さについて語った。

土佐堀ランプ付近にある、阪神高速道路初供用区間を示す石碑

(2018年6月1日掲載)

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