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長大特殊橋の耐震補強対象は25橋で対策完了は5橋

2021年新春インタビュー② NEXCO中日本名古屋支社 ネットワーク活用と新工法採用で大規模更新を展開

中日本高速道路株式会社
名古屋支社
保全・サービス事業部長

合田 聡

公開日:2021.01.01

大規模更新 14橋の床版取替が完了
 契約中工事は弥富高架橋、長良川橋など8件

 ――大規模更新・大規模修繕事業のこれまでの実績と今後の予定を教えてください
 合田 損傷の著しい橋梁、交通量が比較的少ない橋梁から順次床版取替工事を実施してきました。具体的には、2017年度施工の北陸道・小一条高架橋(上り線)を皮切りに、中央道の飯田HSC管内の橋梁6橋(松ヶ平橋(下り線)、山中橋(下り線)、沓掛橋(下り線)、上田川橋(下り線)、落合川橋(下り線)、新茶屋橋(下り線)の施工をしています。
 2019年度からは東名の床版取替工事に着手し、名古屋IC~春日井IC間の庄内川橋(下り線)、神領川橋(下り線)の施工を行い、2020年度は同・庄内川橋(上り線)、神領川橋(上り線)、中央道の上田川橋(上り線)、落合川橋(上り線)、沓掛橋(上り線)の施工を実施しました。これまでに14橋の床版取替が施工済みとなっています。


大規模更新事業<床版取替工事>施工実績

小一条高架橋(上り線)/松ヶ平橋(下り線)
上田川橋(下り線)の床版取替工事(弊サイト掲載済み)


落合川橋(下り線)/新茶屋橋(下り線)の床版取替工事(弊サイト掲載済み)

庄内川橋と神領川橋(弊サイト掲載済み)

 契約中の工事は8件あり、2021年度からは東名阪道・蟹江IC~弥富間の弥富高架橋(下り線)、名神・安八SIC~大垣IC間の長良川橋などの施工をしていきます。


床版取替工事 契約中工事

 ――都市近郊の交通量が多く、人家連坦地である橋梁の施工が増えてくると思いますが、どのような施工上の工夫・対策を考えていますか
 合田 従来は終日対面通行規制で施工を実施してきましたが、この方法では車線数が減少するため、交通量が1日3万台程度を超える路線や、高速道路ネットワークを使っての迂回が難しい場合は大規模な渋滞が発生してしまいます。幸いなことに管内の一部ではネットワークが形成され、経路選択が可能であり、迂回を推奨すれば施工できる橋梁もありますが、次の施工方法を検討して、さまざまな社会的影響の最小化を目指しています。
 ①橋梁を縦方向に半分ずつ分割して床版を取替える方式(半断面施工)
 ②上下線の間に桁を入れて走行帯として車線数を確保する方式
 ③拡幅して迂回車線を設置する方式
 ④夜間に1車線規制で半断面施工し、昼間は交通開放する方式
 弥富高架橋(下り線)は①の方式、長良川橋は②の方式で施工する予定です。
 今後は、都市近郊での施工が増え、さらに社会的影響が大きくなるため、安全面などの観点からの高速道路リニューアルプロジェクトの必要性や工事規制・迂回に関するご理解など、計画段階から工事完了後のフォローアップまで、段階に応じて幅広いお客様や周辺の皆様にご納得いただけるように広報内容や情報提供内容の工夫もしていきます。

弥富高架橋 ネットワーク活用と半断面施工で床版取替

 ――弥富高架橋(下り線)の施工について。まず、橋長と上部工形式、交通量を教えてください
 合田 橋長1,566mの3径間連続非合成鈑桁橋+4径間連続非合成鈑桁橋です。交通量は、上下線合計で約62,000台/日となります。
 ――半断面施工を採用した理由は
 合田 本施工においては、名二環の名古屋西JCT~飛島JCT間が2020年度末に開通予定で、ネットワークが完成することで広域迂回を促すことが可能となります。また、幅員構成上の課題もあります。同橋の標準幅員は10.25m(左路肩2.5m+車線幅員3.5m×2+左路肩0.75m)と狭いので、上り線側に対面通行の2車線を確保することができません。対面通行規制を実施しようとした場合、1種3級であれば道路構造令から5.75m必要とされているためです。
 下り線の半断面施工時に少し拡幅することで対面2車線を確保できるようになるので、上り線は全断面で施工します。


弥富高架橋概要図

弥富高架橋

 ――施工工程は
 合田 先に話したとおり広域迂回が可能となりますので、通年で施工します。まず走行車線側を施工し、その後、追越車線側を施工します。本区間は弥富高架橋だけでなく、連続高架橋となっていますので、下り線の施工完了後、上り線を施工するのではなく、前後の橋も同様に施工した後に上り線に着手することになります。施工延長は全体で約2kmにおよびます。
 ――床版の撤去・架設は
 合田 床版架設機を採用する予定です。
 ――施工者は
 合田 大林組・本間組・加藤建設JVです。
 ――工事着手はいつになりますか。また工期末は
 合田 着手は2021年秋以降になります。工期末は2024年7月7日です。


規制形態と下り線施工ステップ

長良川橋 上下線間に増設増桁を架設して4車線確保

 ――長良川橋について。橋長と上部工形式、交通量は
 合田 橋長630mの鋼3径間連続合成鈑桁橋×6連です。交通量は上下線合計で約54,000台/日です。
 ――上下線の間に桁を入れて車線数を確保するとのことですが
 合田 河川部の橋脚が上下線一体型となっていますので、上下線の桁の間に増設箱桁を架設することで中央分離帯部を拡幅して、施工中も4車線を確保します。


長良川橋。(左)橋脚耐震補強工事に着手(右)上下線の桁間に増設桁を架設

 ――施工はどのように行うのでしょうか
 合田 中央分離帯側を規制(上下線各2車線は確保)し、増設箱桁を架設後に中央分離帯の床版を取り替えます。その後、下り線の中央分離帯部への車線切替えを行い、下り線の床版取替え。次いで、下り線を施工済みの下り線に戻すとともに、上り線を中央分離帯部へ切替えて、上り線の床版取替えを行い、上り線を元に戻して中央分離帯防護柵を施工します。
 ――増設箱桁の架設方法は
 合田 河川部は送出し工法で行います。河川敷のヤードで地組してブロックごとに送り出していきます。
 ――現在の状況は
 合田 工事に着手しています。増設桁架設で上部工が重くなりますので、橋脚の耐震補強を今渇水期中に完了させる予定です。
 ――設計・施工者は
 合田 三井住友建設・瀧上工業・日本ピーエスJVが設計・施工を行っています。
 ――工期末は
 合田 2023年3月3日です。


施工ステップ

 ――③の「拡幅して迂回車線を設置する方式」はどのような箇所で採用を考えていますか
 合田 橋梁の前後区間が盛土などで高速道路区域が幅広くある場合、迂回車線を設置するスペースがありますので、そのような箇所で採用することを検討しています。
 ――具体的な施工予定箇所はありますか
 合田 名神の彦根IC~八日市IC間に位置する多賀橋で施工します。近江鉄道彦根・多賀大社線と交差している橋梁となります。2020年9月15日にう回路土工工事については入札公告済みで、2021年度に着手予定で進めています。
 ――④の「夜間に1車線規制で半断面施工し、昼間は交通開放する方式」については
 合田 まだ検討段階で具体的な施工予定箇所はありません。
 ――大規模更新・大規模修繕事業での新技術・新工法の採用がありましたら教えてください
 合田 2019年度に施工した中央道の上田川橋(下り線)の床版取替工事では、車両通行規制期間を大幅に短縮する工法として、日本で初めてキャップスラブ工法(大林組とNEXCO中日本の共同開発)を採用しました。本工法は、これまで現場打ちが標準であったPC合成桁の床版取替にプレキャスト床版を用いる工法です。PC桁のあと施工アンカーとプレキャスト床版をモルタルで接合することで、時間のかかる既設鉄筋のはつり出し作業や天候という不確定要素を排除できます。


キャップスラブ工法概要

上田川橋(下り線)での施工(弊サイト掲載済み)

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