道路構造物ジャーナルNET

2020年わが社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ⑩日本鉄塔工業

電力会社各社の動向に注視 積極的に「技術開発」を推進

日本鉄塔工業株式会社
代表取締役社長

有田 陽一

公開日:2020.10.26

 当NETの姉妹メディアである「週刊 鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を尋ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。今回は、日本鉄塔工業の有田陽一社長の記事を掲載する。

 ――業界を取り巻く環境と現状について
 有田 初めに、令和2年7月豪雨により亡くなられた方々に謹んで哀悼の意を表しますとともに、被害に遭われました方々に心よりお見舞い申し上げます。一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。
 業界を取り巻く環境・現状は、橋梁事業は2019年度の国内の鋼道路橋発注量が、13万tと大幅に減少した。今年度は発注量の増加に期待している。
 鉄塔事業は、電力システムのレジリエンス強化策の一環による電力間供給力の増強、また、電力システム改革として法的分離による発送電分離という動きがみられる。今後の業界への影響を含めて、電力会社各社の動向を注視している。
 ――昨年度の業績は
 有田 19年度の受注高は、総発注量の減少や大型案件の一服感がみられたが、地道な努力により前年度並みの水準を確保できた。売上高は受注済の大型案件等が寄与し、前年度比で大幅に増加した。利益面でも減価償却費が嵩んだものの、前年度並みの水準を確保することができた。
 主な受注案件としては、東北地整の「天間林地区橋梁上部工工事」があり、また、完成工事として平成28年熊本地震の災害復旧事業「阿蘇大橋取付部上部工」等がある。震災からの早期の復興に微力ながら貢献できたことは、生活に必須なインフラ設備であるライフラインの整備に従事する身として、非常に光栄に思っている。


早津江川橋

 ――今年度の見通しと業績目標は
 有田 橋梁市場は19年度に比べれば増加するものの、近年並みの水準には届かないだろう。新設橋梁市場の改善に期待しつつ、補修保全分野の拡大に引き続き取り組むことで、前年度を上回る売上高を目指したい。また、鉄塔市場の総発注量は前年度と同様に約4万tとなるのではないか。引き続き事業のさらなる拡大に取り組みたい。
 新型コロナウイルス問題が需要環境に及ぼす影響は、現時点では軽微であると想定しているものの、万が一、今後さらなる感染拡大が生じた場合には、需要が下振れる懸念はある。
 ――今年度の重点活動は
 有田 設備投資計画では、工場の生産性向上、省エネ化の推進、品質向上に向けた取り組み等を継続中である。特に今年度は省エネ化投資に注力し、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に微力ながら貢献したい。また、引き続き工場の予防保全、情報機器の更新を実施していく。
 新技術開発では、建築物の補修保全分野を重視しているため、同分野での研究開発投資を拡大する。足元、安全性と品質が向上する新工法を特許出願した。また、北九州に工場を有する鋼橋メーカーとして、地元九州特有の自然災害等に迅速に貢献ができるよう積極的に技術開発に投資する。
 ――在宅勤務、テレワークなどの取り組みは
 有田 新型コロナウイルス感染症が一日も早く終息することを願っている。当社は、人々の生活に必須なインフラ設備であるライフラインの整備に貢献するという強い使命を持っている。緊急事態宣言等で社会全体の緊張感が高まっていた際にも、ライフラインを止めてはならないという社員のひたむきな姿勢や使命感を目の当たりにし、改めて感激した。このような社員とともに働けることを心から誇りに思っている。
 もっとも、当社は従来から、情報システム部門が中心となってオンラインで業務が遂行できる環境を構築していた。これに加えて、社員の健康を第一に考え、時差出勤や在宅勤務の制度を拡充した。安心安全に最大限配慮した就労環境の構築に努めている。
 新型コロナウイルス感染症の終息時期は全く見通すことができない。むしろ感染症が身近にあることを前提として、既存の取り組みに縛られない、全く新しい職場環境や業務遂行体制が必要となると考えている。どのようなやり方であれば社員が安心安全に、かつ、効率的に働くことができるかを、常に考え抜き、様々な施策を講じていきたい。そして、これをきっかけに大胆な生産性向上を果たし、「災い転じて福となす」としたい。
(聞き手=大熊稔、文中敬称略 2020年10月26日掲載)

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