道路構造物ジャーナルNET

2020年わが社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ⑧駒井ハルテック

総合鋼構造エンジニアリング企業を目指す 健全な企業の成長を

株式会社駒井ハルテック
代表取締役社長

田中 進

公開日:2020.10.19

 当NETの姉妹メディアである「週刊 鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を尋ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。今回は、駒井ハルテックの田中進社長と高田機工の髙橋裕社長の記事を掲載する。

 ――前年度の業績は
 田中 2019年度の業績は連結ベースで売上高354億5,300万円、営業利益5,500万円。年度当初から新設橋梁の発注減や鉄骨の端境期入りなど厳しい需要環境が予測されていたが、受注減や工場の進捗の遅れなどもあって想像以上に芳しくない業績となった。もともと19年度は、中期経営計画2017の最終年度であったが、事業環境の急激な悪化を受け、本来であれば2020年度に立ち上げる予定だった新中期経営計画を半年前倒しでスタートさせた。
 ――今年度の業績目標は
 田中 前年度の厳しい事業環境が続くことを前提にスタートを切ったが、受注面では橋梁、鉄骨ともにスタートダッシュに成功したとはいえず、第1四半期の決算も厳しい結果となった。今後、『持続可能な社会の実現を目指し、健全な企業の成長を図る』を柱とする中期経営計画2019の課題を着実に実行し、成果を発揮できるよう努力していく。ただ、年度通期の業績見通しについては、新型コロナ感染の動向など先行き不透明な要素が多く、合理的な算出が困難であるため、現段階では未定としている。
 ――今期の設備投資計画は
 田中 近年は老朽化した設備の更新を進めるなかで、最適な高性能、大容量などデータ処理能力を向上させたICT関連設備への転換を進め、自動溶接機、溶接ロボット、NC機械などを積極的に導入してきた。すでに当初計画の7~8割の更新を終えており、それら設備の本格稼働などで生産性も大きく向上した。今年度は、昨秋に台風被害を受けた富津工場の修復を最優先に取り組んでおり、間もなく完了する。同工場では、これから迎える大型案件等の輻輳に備え、一部レイアウト変更も行っている。
 ――新分野の取り組みは
 田中 当社はコア事業である橋梁と鉄骨に続く第三の事業として風力発電機等を扱う環境事業を展開している。これまでの受注・納入実績は極東・東南アジアを中心とした海外が多く、その実績を現地の橋梁や鉄骨の受注にもつなげるべく、引き続き営業を積極展開していく方針だ。また、企業の安定的な成長のためには収益基盤のさらなる多様化が必要であり、既存事業で培った技術力等を第4次事業の創出につなげていきたい。


館山自動車道 湊川橋(鋼上部工)工事

 ――部門ごとの課題は
 田中 当業界の競争力の根源は技術力だと考えており、競争に打ち勝つための戦略的な技術開発を進め、常に優位に立てる揺るぎない基盤を構築していきたい。橋梁は新設をしっかりと受注し、工場の稼働状態を保って収益を確保していく。同時に保全分野の経験を積み、技術の充実、新工法の開発などによって対応をさらに強化していく。
 鉄骨は首都圏を中心とした大型プロジェクトがやや遅れているが、今後、確実に出てくる。現状においても様々な引き合いが来ているが、総じて期ズレによる工程の偏りがみられるため、今後の需要に対応できるよう対策を講じていく。これら需要を国内ファブで処理しきれず、海外に流出することは業界としても大きな課題である。できるものについては前倒しで製作するなど、山積み平準化に向けた対応を客先に求める活動を続けていく。
 また、これからの都市開発では土木・建築複合型の鋼構造物が数多く計画されている。両分野を手掛ける弊社の強みを生かして、それら高付加価値物件に携わり、収益力の向上、業績の改善につなげていく。
 ――今後の抱負を
 田中 社会インフラの整備に携わる企業として、工場所在地など関係地域との連携・交流をさらに強め、街づくりや自然災害発生時の支援などで貢献していきたい。また、社内においては若手が5年、10年先の当社の未来づくりに携わり、夢を持って活躍できる環境づくりを推進していく。さらには、鉄骨と橋梁、各工場間を含めたグループ内の交流をさらに加速させ、相互補完を通じて業務効率の向上や技術力の充実などを図り、付加価値の高いサービスを提供する「総合鋼構造エンジニアリング企業」を目指していく。
(聞き手=田中貴士、文中敬称略 2020年10月19日掲載)

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