道路構造物ジャーナルNET

阪神高速道路の維持管理を一気通貫する総合調査コンサルタント

内外構造 JR西日本やNEXCO西日本の業務も一部担う

内外構造株式会社
代表取締役社長

安田 扶律

公開日:2020.10.19

 内外構造は阪神高速道路の構造物維持管理の最前線を担う「総合調査コンサルタント」である。元から阪神高速道路の保全業務を担ってきたが2014年に阪神高速道路のグループ会社となった。現在はJR西日本やNEXCO西日本の一部構造物の維持管理業務も担う。業績は順調な反面、社員の世代バランスはトップヘビーとなっており、そのバランスの改善のため、新卒・中途共に積極的な採用を図っている。同社の強み、方針、そして採用したい人材、働き方について、安田扶律社長に聞いた。(井手迫瑞樹)

2019年度の売上は約22億円 経常利益は13%超を確保
「三つの満足」を掲げ、業務を進める

 ――内外構造という会社はどのような会社ですか
 安田社長 1972年10月の設立以降、阪神高速道路構造物の点検業務を中心として事業を実施してきておりました。元々は構造建設と内外工営という2社が、阪神高速道路の管理の仕事を中心に積算なども行いながら発展してきたのですが、2006年にその2社が合併し、現在の形になりました。
 その後、インフラ構造物点検の重要性から2014年に阪神高速グループの一員となり、「総合調査コンサルタント」として、現在では阪神高速道路(延長258.1㎞)の構造物点検、路下日常点検のみならず、各種計測機器、非破壊検査機器を使用した詳細調査、点検時応急措置、補修設計など幅広い業務を実施しております。また、取引先も阪神高速グループをはじめ、JRグループのレールテック様、NEXCOグループのエンジニアリング関西様、近畿建設協会様、橋梁調査会様など多岐にわたっています。おかげさまで、売り上げも2019年度実績で22億を超え、経常利益も13%超える連続黒字となっております。以前は阪神高速道路の仕事が売上の95%を占めていました。しかし現在は他社業務も増えており、売上に占める阪神高速道路の割合は8割程度まで下がっています。あとの2割はJRとNEXCO、国交省、一般コンサルタントの点検業務などです。
 弊社の中期経営計画は「三つの満足」をもとに策定して取り組んでおります。すなわち、業務品質向上、安全管理、コンプライアンス確保による「お客様満足」、働き方改革促進、やりがい向上につながる人材育成などによる「社員満足」、エリアや構造物種別のシームレス化による業務拡大を図る「会社満足」です。

橋梁点検者による点検

 ――業務対象は
 安田 阪神高速道路をメインとしながら、大阪、和歌山、神戸のJR鉄道構造物、跨線橋、京都方面のNEXCO西日本所管の高速道路、さらには国、地方自治体管理の橋梁、道路などです。
 対象となる構造物は、地方の農業用ボックスカルバートから阪神高速湾岸線の長大橋梁まで幅広く点検、調査、解析に従事しています。
 構造物の点検は、点検員の直接の目視による点検、たたき点検、触診点検などにより正確・着実に実施することはもちろんですが、特に注力しているのは点検情報のシステム化です。たとえば、阪神高速道路の点検においては、現場にiPhone、iPadなどのモバイル端末を携行し、写真・文字情報の情報入力を直接行うことにより、社内で作業する内業班、技術班とのリアルタイムの情報の共有、データ処理が標準となっています。さらには情報をデータベース化することにより、補修計画や詳細点検個所のスクリーニングにむけて有効活用が期待できます。

長大橋の移動式吊足場上でのカメラを使った点検/モバイル端末を携行

点検結果の照査確認ミーティング

社員主導でCIを変更
 データだけでなく肌感覚で構造物の状態を伝えたい

 ――社員総数および技術者総数は
 安田 当社で働く人は約80人。技術職は60人です。
 ――数年前にCIを変更しましたね
 安田 社内にてCI活動を行い、2018年に会社ロゴ、HPなどをリニューアルし、名実ともに、インフラ構造物の点検、調査、診断、評価、設計までを担う「総合調査コンサルタント」を目指しております。
 マーク(右図)の変更は社員提案です。CI活動の本来の趣旨は社員の意識改革です。総合調査コンサルタントを目指すには社員一人ひとりがその気持ちになってもらわないと、経営者の掛け声だけが上滑りしては困ります。会社の大方針から始まって、個々人が何をやりたいのか、現在の状況から会社が何をやるべきなのか、ということをマークの表現一つにしても突き詰めました。この青の部分は橋梁のアーチ構造でもあり、トンネルの上半アーチにも見えます。オレンジの部分は当社を示します。トンネルや橋梁の内も外も我々が、カバーしていくという気概を表しました。
 ――今、どのような人材を欲しておられますか
 安田 弊社の強みは現地の調査から始まって、情報を整理し、結果を解析して補修補強の計画立案、手法検討まで行う維持管理の一気通貫を担っているということと、構造物の現地現物を掌握しているということです。阪神高速グループ内の維持管理業務において、現場状況把握を直に担うのは弊社の社員であり、他のグループ各社は、弊社を通して現場を知ることになります。直接ものに触れ、調査するのは弊社の社員ですから、それを強みにしたい。それを分かってもらえるような教育をしたいし、構造物の維持管理業務や技術開発に興味を持つ人材を新卒・中途問わず渇望しています。現地現物を扱う情報の価値を教えたい。間接情報だけで判断されると困るので、お客様にとっても現場はどうなっているのか、感覚的なものも含めて伝えられるような社員になって欲しいと考えています。

 ――業務内容は多岐にわたりますね
 安田 入社を希望している人が、最初から一気通貫できるとは考えていません。入社後も丁寧に指導していければと考えています。
 ――例えば
 安田 点検作業については、実際の構造物点検業務を通じて、OJTを進め、情報処理以降の行程も座学や先輩技術者の指導により教えていきます。
 もっとも業務の効率化が進んでいるため、現場負担は昔より軽減されています。例えば点検は目視や打音の結果を野帳に書き込んでいくのが従来の姿でしたが、現在はiPadやiPhoneなどモバイルで情報を書き込み、同時に送信するため、リアルタイムで情報を共有できます。事後に野帳データを報告書に落とし込む作業が必要ないわけです。現場で見た情報は事務所に帰えると既にデータ化されており、直ぐにスクリーニングできます
 点検後の情報解析や補修補強計画の立案を担う能力は座学や業務を通して学んでいただきます。さらに大学や土木研究所などとの共同研究を通して、解析や補修補強を含む構造物のメンテナンス技術力を高めてもらいます。

ポストコロナ リモートワークは拡大の方向
 育児や介護などでの退職という人材流失を防ぐ

 ――ポストコロナの働き方をどう考えますか。特に介護や病気などを利用とした離職をリモートワークは大きく防げ、会社にも勤労者にも利益をもたらすと考えますが
 安田 実際に当社にも老親の介護で勤務時間や通勤時間に制約を受けている人がおり、そうした人には自宅で仕事していただいています。しかし、当社は現場作業も多くございますので、その仕事をリモートワーク化することはできません。しかし現場作業で得られた結果を処理する、あるいは図面を書く、設計をするという作業を行う人はリモートワークが可能であると考えています。なおかつ取り組みとして、現場作業に従事する人も時間帯をフレキシブルにすることによって働きやすくするという取り組みも行っています。
 CADを扱う設計部門の人員がリモートワークする場合は、ある程度の設備が必要になります。作業できないことはありませんが、会社としてスムーズにしてもらうためにはクラウドを使ったデータのやり取りを行えるようにしていきたいと考えています。

 ――リモートワークは育児中の人員にも適用しますか
 安田 そうしたいと考えています。年齢を重ねて現場に入れなくなった人でも、その知識や経験を生かして、机上におけるバックアッパーとして活躍してほしいと考えています。社員は大切にしたいと考えています。
 先ほどモバイルで情報を送るといいましたが、さらに加えてコロナのおかげでオンライン会議ツールなども発達したため、経験のない人が点検にいっても、知見のある技術者がデータや写真を見ながら指示することは可能ですので、そういうことも取り組んでいきたいと思いますし、そういうことが大事だと考えています。これは技術伝承として有益だと考えます。

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