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工程短縮とコンクリートの品質確保に取り組む

国土交通省三陸国道事務所 復興道路・復興支援道路事業が大詰めに

国土交通省
東北地方整備局
三陸国道事務所長

髙松 昭浩

公開日:2020.09.30

 三陸国道事務所では、三陸沿岸道路の宮古市以北の約59kmと宮古盛岡横断道路の宮古箱石道路約14kmの整備事業を進めており、2021年内に全線開通する予定だ。終盤を迎えた復興事業での特徴的な取り組みや保全事業について、同事務所の髙松昭浩所長に聞いた。 ※整備中道路の橋梁名、トンネル名、IC名は仮称です。

国道45号現道など約375kmを管理
 災害時のリダンダンシー確保の観点からも事業の重要性が増す

 ――三陸国道事務所が管理する路線について教えてください
 髙松所長 三陸地域の都市間を結ぶ国道45号現道の岩手県内区間約237kmと、三陸沿岸道路(三沿道)のうち、南三陸国道事務所が管理する吉浜IC~山田南IC間約37kmを除く約115km、および国道283号自動車専用道路(東北横断道釜石秋田線)のうち遠野住田IC~釜石JCT間の約23kmを管理しています。管理総延長では、374.7kmとなります。現在、宮古市以北の三沿道の整備を進めていますので、今後、管理延長がさらに増えていくことになります。


管理路線と管内概要図(三陸国道事務所提供。以下、注釈なき場合は同)

 ――管内の地理的特徴は
 髙松 三陸地域の沿岸部は宮古市を境に地形が異なり、南部は谷が沈降してできたリアス式海岸、北部は地盤が隆起した海岸段丘となっています。いずれも谷が発達していますので、峠が多く、国道45号現道も橋梁やトンネルが多くなっています。
 ――現在の整備事業について
 髙松 全体で言えば、南北軸の復興道路である三沿道と、東西軸の復興支援道路の宮古盛岡横断道路があります。三沿道は宮古市から仙台市のうち、気仙沼市内の一部区間が未開通ですが、それ以外は開通しています。現在、当事務所では宮古市以北の約59kmの事業を進めています。また、宮古盛岡横断道路は宮古市内の宮古箱石道路の2区間14kmの事業を行っています。
 東日本大震災後の復興のための事業ですが、2016年の台風10号や昨年の台風19号の影響により、並行する現道では甚大な被害が発生しています。台風10号では国道106号宮古市蟇目地区で約10日間の通行止めが発生しましたし、台風19号では国道45号宮古市崎山の宮古第3トンネル坑口部で土砂崩れにより約1週間通行止めとなりました。


宮古第3トンネル 被災時(左側)と復旧後(右側)

 当該箇所はダブルネットワークが構築されていないことにより、東西軸、南北軸が寸断されてしまったのです。地域の復興や今後の津波災害の防止に加えて、台風などの災害時にリダンダンシーの確保という観点からも事業の重要性は非常に増していると考えています。なお、津波災害の防止という点では、国道45号現道が浸水区域を横断していることから、三沿道は津波の浸水高よりも高い位置で道路整備をしています。

宮古箱石道路 急峻な地形のため構造物比率は80%
 未開通区間の橋梁9橋の大半で床版工施工、トンネル8本は掘削完了

 ――事業中の路線を個別にお願いします
 髙松 三沿道は宮古市側から「田野畑道路」「尾肝要普代道路」「野田久慈道路」「洋野階上道路」があり、宮古盛岡横断道路は先に挙げた「宮古箱石道路」です。
 宮古箱石道路(延長約33km)では宮古西道路以外に、西側の川井~箱石地区(延長7km)と中間部の蟇目~腹帯地区(延長7km)の事業を進めており、今年度末の開通を目指しています。
 同道路は国道106号とJR山田線、閉伊川に並行し、現道を活用しながらJR山田線の橋梁やトンネルを避けながら施工しています。また、急峻な地形となっているため、構造物比率が当事務所の施工区間では80%となっています。
 川井~箱石地区と蟇目~腹帯地区には橋梁が9橋あり、その大半で現在、床版工を行っています。トンネル8本の掘削はすべて完了して覆工を施工中です。


宮古箱石道路 事業概要図

 ――田野畑道路は
 髙松 岩泉道路(中野バイパス)と尾肝要道路を結ぶ田野畑南IC~尾肝要(下閉伊郡田野畑)間約6kmの道路で、今年度末の開通を予定しています。標高の高い地域を通っていますので、ほかの整備区間と比べて構造物比率は若干低く12%で、橋梁が4橋でトンネルはありません。しかし、深い谷地形に架橋するため橋脚高が高く、現在、上部工を施工中の新思惟大橋(橋長394m、PC4径間連続ラーメン箱桁橋)のP3橋脚高は93mになります。また、橋長221mの平井賀大橋(鋼5径間連続桁橋)はクレーンベント工法での架設が完了し、床版工を行っています。


田野畑道路 事業概要図

平井賀大橋

 ――尾肝要普代道路は
 髙松 三沿道の整備は東日本大震災以前から、国道45号現道の線形が厳しい峠部を優先的に行ってきました。同道路は尾肝要道路と普代道路(普代バイパス)を結ぶ田野畑北IC~普代(下閉伊郡普代村第11地割)間の約8kmとなります。年内の開通を目標に事業を展開しており、橋梁5橋のうち4橋が完成し、普代川大橋(橋長255m、鋼4径間連続箱桁橋)の床版工を施工中です。トンネル3本は完了しています。構造物比率は38%となっています。


尾肝要普代道路 事業概要図

野田久慈道路 堀内トンネルは地山が脆く、慎重に掘削を進める
 洋野階上道路 橋梁8橋のうち3橋を除き架設完了

 ――野田久慈道路は
 髙松 普代道路(普代バイパス)と久慈道路を結ぶ普代(下閉伊郡普代村第16地割)~久慈IC間約25kmの道路です。橋梁14橋、トンネル8本があり、構造物比率は42%になります。トンネルの掘削、橋梁上・下部工を施工中で今年度末および来年内の開通を目指しています。事業進捗率は72%で他事業区間と比べても低くなっています。


野田久慈道路 事業概要図

 ――掘削中のトンネルは
 髙松 堀内トンネル(延長1,587m)と久慈長内トンネル(延長1,368m)です。
 堀内トンネルは地山が脆く崩れやすいうえに、一部に低土被りの箇所があります。先行ボーリングで調査を行うとともに、鋼製アーチにより地山を支えながら慎重に掘削を進めており、掘削率は70%(8月末時点)となっています。


堀内トンネルの掘削状況

 ――下部工施工中の橋梁、および架設中の橋梁がありましたら教えてください
 髙松 全ての橋梁について下部工の施工は完了しています。架設中の橋梁は新堀内大橋(PC3径間連続ラーメン箱桁橋)の1橋となっています。
 編集部注:野田久慈道路の普代~野田IC間約13kmについては、堀内トンネルの工程が遅れているため、開通予定時期が2021年内に見直された。野田IC~久慈IC間約12kmは今年度開通予定。
 ――洋野階上道路は
 髙松 久慈北道路・侍浜ICから青森県側の八戸南道路・階上ICまでの延長約23kmの道路で、岩手県内の約20kmを当事務所が担当しています。本区間はなだらかな地形でトンネルはなく、橋梁も8橋で構造物比率は5%(青森県側含む)と低くなっています。県境を挟んだ洋野IC~階上IC間約7km(岩手県内約4km)は年内、侍浜IC~洋野IC間約16kmを今年度末の開通予定です。小山川橋(橋長75m、鋼単純箱桁橋)、和座川橋(PC3径間連結コンポ桁橋)、小柏川橋(PC2径間連続ラーメン箱桁橋)が架設中で、それ以外は完成しています。


洋野階上道路 事業概要図

管内橋梁・トンネル一覧(2020年度事業区間)
※2020年7月12日に開通した「宮古田老道路」「宮古箱石道路 宮古西道路」を含む(拡大してご覧ください)



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