道路構造物ジャーナルNET

2020年わが社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ③IHIインフラシステム

2019年度受注は海外がけん引 「ウィズコロナ」への体制整備

株式会社IHIインフラシステム
代表取締役社長

石原 進

公開日:2020.09.28

 当NETの姉妹メディアである「週刊 鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を尋ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。今回は、IHIインフラシステムの石原進社長と横河ブリッジの髙田和彦社長の記事を掲載する。

 ――2019年度業績と主な案件は
 石原 受注高全体はここ数年で最も高い2017年度と同水準になった。うち59%は海外事業の受注によるもので、これまでの施工実績を基にした営業活動が実を結んでいる。また、橋梁保全事業が14%となった。一方で橋梁の新設事業は需要規模の大幅な縮小を反映し、昨年の4割にとどまった。
 経常利益は53億円と過去最高益を更新しており、継続的な経営改善の取り組みによる成果とみている。
 19年度に手掛けた国内橋梁の新設案件は須走1号高架橋、中防内5号線橋梁「海の森大橋」など。東京港内中央防波堤の内側と外側を結ぶ「海の森大橋」工事では、総重量7,168tの上部工を大型台船に搭載し、幅の狭い水路内で回転させながら移動・架設するという、技術的難易度が高い工事を無事故で施工した。また、水門では昨年、台風19号発生時に試験湛水中でありながら首都圏の洪水被害の軽減に寄与した「八ッ場ダム」の水門工事にも携わった。


完成した「八ッ場ダム」

 ――今年度の見通しは
 石原 国内の新設橋梁の市場は19年度よりは回復するものの、多くはないため、受注競争は引き続き厳しいものになるだろう。
 対して、既存橋梁の保全関連事業の需要は比較的堅調であり、今後も受注割合は高まるだろう。ただ、設計や現場の技術力向上の観点から、新設受注の強化は重点課題と認識しており、全社を挙げて巻き返しを図っているところだ。
 また、海外事業では19年度に施工実績のある南アジアや東南アジアで新たな工事を受注した。現地サプライヤーとの協業だけでなく、各地でのエンジニアの継続的な雇用と育成など、生産・施工体制の「地場化」を進めてきた地域での受注であり、海外事業における採算性向上も見込んでいる。
 今後は現地エンジニアの育成とともに現場施工の技術力向上に一層取り組み、さらなる受注につなげていきたい。
 ――新型コロナ禍への対応について
 石原 国内では緊急事態宣言を受け、緊急事態措置を実施すべき区域に所在する事業所の勤務者について原則、在宅勤務ないし自宅待機に切り替えた。その後、堺工場で請負会社の従業員1人に陽性反応が出たが、追跡調査や消毒などを徹底し、4日目に操業を再開することができた。
 工場ではこのほか、勤務者の自動車通勤や食堂利用時間の分散化など「3密」の回避に取り組み、外部との打ち合わせや検査などもリモート化を進めている。
 ――「ウィズコロナ」に向けた体制整備について
 石原 これまでの効率化、品質向上のための工場設備導入とレイアウト変更に加え、在宅勤務増加に伴うICT環境の整備など、リモートワークの長期化を視野に入れた体制構築を進める。海外事業では、将来的に現地エンジニアから現場の施工監理ができるマネージャーを育成することも必要になるだろう。このほか、BIM/CIMを活用した生産システムの統合的な管理なども研究開発を進めていく。
 ――今後の技術開発について
 石原 今年6月、鋼橋架設工事における遠隔検査の試行について、現場施工の例とともにまとめた当社の技術論文が、第24回土木施工管理技術論文の最優秀賞に選ばれた。検査のリモート化への需要の高さがうかがえる。
 ウィズコロナ時代の技術開発のキーワードは「非接触」だ。こうした需要に対応できる技術開発を進めたい。そのためにも、業務のリモート化と高品位なモノづくりや短納期への対応を両立できるよう、設計から製作・施工までの総合的な技術力を一層高めていく必要がある。
(聞き手=八木香織、文中敬称略 2020年9月28日掲載)

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